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■カールの砲弾■

  1. Geraet 040用600mm砲弾

    ■重ベトン弾(schwere Betongranate)

    • 炸薬量:280 kg (*1)
    • 全長:2,511 mm
    • 全重量:2.17 ton
    • 初速:220 m/sec (charge 4)
    • 射程:最大4320 m

    *1 炸薬量は, 資料[27]Nr.22によれば348kg。 資料[26]資料[32]によれば240kg。

    重ベトン弾は尾部に空洞部分(左図,及び図1上 A)があって, 予めここに装薬(B)を収めて蓋(C)をしておく。 この状態で砲弾を砲身に込め,続けてカートリッジ(D)を入れて尾栓を閉めれば装填が完了する。

    ■軽ベトン弾(leichte Betongranate)

    • 炸薬量:220 kg (*2)
    • 全長:1,991 mm
    • 全重量:1.70 ton
    • 初速:283 m/sec (charge 9)
    • 射程:最大6640 m

    *2 資料[27]Nr.22によれば, 炸薬量は280kg。

    軽べトン弾尾部には重ベトン弾のような空洞はなく, 多くの大口径砲と同じく図1下のように砲弾,薬嚢(B),カートリッジ(D)を装填する。


    Fig.1 砲弾の装填状態(No Scale)

  2. Geraet 041用540mm砲弾

    ■軽榴弾(leichte Sprenggranate)

    • 炸薬量:不明
    • 全長:不明
    • 全重量:不明
    • 初速:不明
    • 射程:不明

    ■軽ベトン弾(leichte Betongranate)

    • 炸薬量:180kg (*3)
    • 全長:不明
    • 全重量:1.25 ton (*4)
    • 初速:378 m/sec (charge 6)
    • 射程:最大10,060 m

    *3 資料[26]資料[32]による。 他の文献には記述が見当たらない。
    *4 資料[37]等による。 資料[26]資料[32]によれば1.58 ton。

    Geraet 041の砲弾の装填については明らかではないが, おそらくGeraet 040の軽ベトン弾と同じように行われていたのではないかと推測される。 資料[37] には540mm砲弾用のカートリッジの写真が掲載されており, カートリッジの長さが600mm砲弾用よりは長いらしいことがわかる。

  3. 現存するカールの砲弾

    600mm重ベトン弾はジンスハイムの 自動車・技術博物館(Auto- und Technikmuseum) とコブレンツの 国防技術博物館(Wehrtechnische Studiensammlung), ポーランドのワルシャワにあるポーランド軍事博物館 (Muzeum Wojska Polskiego) に展示されている。

    ・ジンスハイムの砲弾の写真 ・コブレンツの砲弾の写真
    (二つの展示品ともに戦時中の写真と頭部の形状が少々異なり, 特にジンスハイム展示のものは全長も少し長いようにも思えるので, もしかすると完全にオリジナルなのではなくて, 先端部分などは復元されたものなのかもしれない。)

    ・ポーランド軍事博物館の砲弾の写真
    (1944年のワルシャワ蜂起の際の不発弾。 1944年8月18日にレストラン「アドリア」に落下したもので, その後火薬は蜂起軍によって抜き取られて手製の迫撃砲弾に用いられた。 弾丸自体は瓦礫に埋もれていたが, 戦後の1965年に掘り出されて現在のように博物館に展示されるようになったという 資料[74]。 隣にはリューゲンバルドの試射場で発見されたと言う800mm列車砲ドーラの砲弾も展示されている。)

    ラインメタル社にも600mm重ベトン弾と540mm軽ベトン弾が現存するらしく 資料[32]に写真がある。 ただし一般に公開されているかどうかは不明である。

    また ヒラースレーベン試射場の解説サイトには, 試射場で発見された540mm軽榴弾と軽ベトン弾の写真がある。

  4. 装填手順

    砲弾の装填手順は図2のとおり。

    1. 砲弾を 弾薬運搬車のクレーンを使って装填用トレイに乗せる。
    2. 装填トレイの上部はローラーで前後に動くようになっており, ここと砲弾を砲身内に差し入れる。 この作業のためには特に動力は用意されておらず, 数人がかりで人力で押し込んでいる写真が残されている。 重ベトン弾では2トンを越す重量があるから,相当な重労働だったろうと考えられる。 装弾トレイ前端には,砲尾ブロックと連結するためのラッチ機構がある(図の赤矢印部)。 (図では描いていないが)このラッチはリンク機構を介してハンドルで掛け外しをするようになっている。
    3. クランク・ハンドルを回してラマーで砲弾をさらに奥まで押し込む。
    4. 装弾トレイを砲身から引き出す。 最後に,重ベトン弾ならカートリッジを,軽ベトン弾なら薬嚢とカートリッジをセットして尾栓を閉じる。


    (1)

    (2)

    (3)

    (4)
    Fig.2 砲弾の装填手順(No Scale)


■砲弾のキット■

60cm重ベトン弾
上からナッツ'n'ビッツ,トランペッター(アルミ製及びプラ製), アーモ,ドラゴン,バーリンデン,CMK,ミニアート
60cm軽ベトン弾, 54cm砲弾他
上からトランペッター(アルミ製及びプラ製),ニュー・コネクション, バーリンデン,ドラゴン(54cm砲弾),ナッツ'n'ビッツ(60cm重ベトン弾)

  • ハセガワ1/72

    ミニボックスNo.33「ドイツ「カール」&4号特殊弾薬運搬車」付属の砲弾
    写真のように上部と底の部分の二つの部品から構成されている。 schwere Betongranateのつもりのようだ。 底にはパターンも再現されている。 ただし底部周辺の穴は(型抜きの関係だろうが)省略されている。 (写真ではピンバイスで穴を開けてある。)

    本体中央部はすらりとした円筒形に成型されている。 実物は一部太くなった部分もあるが,1/72というスケールを考えればこれで十分であろう。

  • CMK1/35

    RA002「Panzerkampfwagen IV Munitionstraeger fuir Karlgeraet」付属の砲弾
    CMKのカール本体のキットには砲弾は付属していないが, 弾薬運搬車のほうにはschwere Betongranateが4個含まれている。 写真のように上部と底の部分の二つの部品から構成され, 底部分にはパターンや周辺の穴も再現されている。

    表面はさらっとした表現で,帯などの段差を追加工作するとより良い感じになりそうである。 また全長が3mm程度短いようなので,二つの部品の間でかさ上げしてやればよいだろう。

  • ミニアート1/35

    MASP 3501「WWII German 60 cm Morser "Karl" L/8.44 Gerat 40」付属の砲弾
    写真のように上部と底の部分の二つの部品から構成されており, 底にはパターンが再現されている。 側部に穴も開いている(が,実物が8個のところ6個しか開けられていない)。 全体にずんぐりした印象で,寸法を測ってみると, schwere Betongranateとしては長さが1cmほど短い! 底部の部品を少し切り詰めればleichte Betongranateに, 寸法,形状共に近くなるので, いったいどちらの砲弾を再現しようとしていたのか不思議である。

  • ニュー・コネクション・モデルズ1/35


    3575 60cm grenade for Karl mortar
    メタル・バレルやメタル製砲弾を多数出しているNew Connection Modelsからカール用の 砲弾が販売されている。 2003年3月購入。 アルミ製で同封の説明書(?)によれば,leichte Betongranateである。 真鍮製のカートリッジも付属している。 以前は同じ型番で schwere Betongranateが販売されていたようなので (写真は ここ にある), 製品内容に変更があったということなのだろうか。

    全長が2mm程度短すぎるようである。 その反面カートリッジの寸法は長すぎるように思われる。 砲弾の底には何もディテールの彫刻はないが, leichte Betongranateの底の形状については, このページ冒頭の図面から一段窪みがあることがわかる以上の詳細は不明であるので, いたしかたないだろう。

  • ドラゴン1/35


    6179「60cm Moerser "Karl" Geraet 040」付属の砲弾
    ドラゴンのキット(6179)に初回限定で付属したアルミ製の砲弾である。 schwere Betongranateのつもりと思われる。 ただし底部のパターンや底部周辺の穴は省略されているので, 追加工作が必要である。

    先端が尖りすぎているような気もするが, 削り込んで丸めてしまうと全長が短くなるので, 手をつけるべきかどうか悩むところではある。

    2004年夏発売の「特別版」キット(6179X)には, このアルミ製砲弾1個に加えてインジェクション成型のschwere Betongranate 1個も含まれている。 両者の形状は完全に同じにできている(当然か)。 どうせなら同じ種類の砲弾を2個入れるのではなくて, インジェクション・パーツの方はleichte Betongranateにしてくれても良かったように思うが。

    こちらは540mm砲のキット(6181)に付属の砲弾。 左右2つのインジェクション・パーツで構成されている。 外見上はそれらしくできているように見えるが… 540mm砲弾の厳密な寸法,形状について述べている資料はないようであるし, キット化にあたってドラゴンがどのような資料をもとに どの種類の砲弾のつもりで設計したのかがわからないので断定的なことは書きにくい面もあるが, 寸法,形状に関しては少々疑問が残るのである。

    まずキットの砲弾の直径は約500mm相当しかないので細すぎるように思う。 また長さについては, 軽榴弾だとしても軽ベトン弾だとしても少し長すぎるように思われる。 またキットの砲弾底面はのっぺりと平坦になっている。 これは軽榴弾としては正しいが, 軽ベトン弾の裏には段差などのディテールがあるのでちょっともの足りない。 ( ヒラースレーベン試射場の解説サイトの, 写真参照)。



    6181「54cm Moerser "Loki" Geraet 041」付属の砲弾

  • ナッツ'n'ビッツ1/35
    Missing-lynxAxis WWII AFV Discussion Group にポストされた,Daniel Munoz氏によるスクラッチのアルミ製schwere Betongranate。 外形が正確,ディテールも完璧,と素晴らしい出来である。
    http://www.network54.com/Hide/Forum/message?forumid=47207&messageid=1050946788

    同氏のサイト Nuts'n'Bits内の "Karl-Gereat 60cm Heavy Mortar shell" のページには,製作過程についてのより詳しい情報が掲載されている。



    「Karl-Gerat schwere Betongranate 040 (60cm)」
    左の写真はこの砲弾をレジンで複製したものである。 氏はレジンの複製品を販売してくれるそうである。 詳しくは Nuts'n'Bits内の "Karl shell for sale" を参照のこと。

    3分割されており,各部品の表面にはパーティング・ラインなどはない,美しい仕上がりである。 底部のディテールも他のキットに比べてよく再現されており, 周辺の8個の丸い穴のみでなく,四角い凹みもついている。 ただしレジン製のため,原型に比べて全体が収縮しているようだ。 当方が入手したものは,全長,直径ともに, 上記サイトに掲載されている原型の寸法よりわずか(いずれも0.5mm未満)に小さい。 気にするほどの差異ではないが念のため。

    これだけよくできた砲弾も, 以前は直接Daniel Munoz氏からわけてもらう以外にはほとんど入手方法がなかったのだが, ありがたいことに2009年2月に Tank Workshopが製品化してくれた。

    なお,余談であるが同氏はカールの砲弾に続いて, 28cm K5(E)列車砲(レオポルド列車砲)の砲弾を製作し, そのレジン複製品の頒布を開始した。 これまた素晴らしい出来である。 興味のある方は "K5/Leopold 28cm Gr 35 Shell" を参照のこと。

  • アーモ1/35
    35774 Betongranate Karl
    35775 Betongranate Karl
    60cm砲用の重ベトン弾(schwere Betongranate)である。 2種類とも製品名が全く同じために大変紛らわしいが, 35775の方は先端部分が分離しており2部品で構成されている。 35774の方は全体で一つに加工されている。 カールの実際の砲弾先端は空洞のキャップとなっているので, 35775はそれを再現しようとしたのであろう。 なかなか面白いギミックではあるが, ちょっと砲弾本体側のボスの形状が小さすぎるようにも思える…

    両者とも外形は良好に見えるが,先端が実物よりも少々尖っている印象がある。 底部周囲には穴が加工されているなどドラゴンのキットなどに比べるとディテールが豊富だが, 裏側の特徴的な放射状の模様はあっさり省略されている。 ここは目立つ部分だけに各社のエッチング・パーツを利用してディテール・アップがしたくなる (「アクセサリー&ディテール・アップ・キット」参照)。 大きさと価格を考えると, オマケでこの部分用のエッチング・パーツを付けてくれても良かったのに, と思うのは贅沢だろうか。



    35774 Betongranate Karl


    35775 Betongranate Karl



    35773 Sprengranate Loki
    35773 Sprengranate Loki
    54cm砲弾である。 商品名に「Loki」という名称が入っているのは, ドラゴンの1/35キットの54cm砲バージョン(6181)の表記に合わせたためだろう。 全体の形状は 同キット付属の砲弾とほぼ一致し, このため直径が1mm程度不足しているように思われるし, また全長と輪郭が正確であるかどうかについては, ドラゴンのキット同様に疑問が残る。

  • トランペッター1/35
    トランペッターはカールのキットを3種類 (輸送貨車付き2種カール本体のみ1種)と IV号弾薬運搬車のキットを発売しており, そのいずれにも60cm schwere Betongranateと60cm leichte Betongranateがついてくる。 54cm砲弾はない。 またカール本体のみのキットIV号弾薬運搬車のキットにはボーナスとして, アルミ製の砲弾も入っている。

    製品 60cm schwere Betongranate 60cm leichte Betongranate アルミ製60cm schwere Betongranate アルミ製60cm leichte Betongranate
    00209 Moeser Karl-Geraet 040/041 on railway transport carrier
    00208 Moeser Karl-Geraet 040/041 (Initial Version) on railway transport carrier
    1個 1個 なし なし
    00215 Moeser Karl-Geraet 040/041 1個 1個 1個 1個
    00362 German Panzerkampfwagen IV D/E Fahrgestell 4個 4個 1個 1個

    写真上はカールのキット3種およびIV号弾薬運搬車のキットに入っているschwere Betongranateである。 成型色がクリーム色の物はカールのキット, 右写真のグレーの物はIV号弾薬運搬車のキットのパーツである。 左右張り合わせで形状としては結構いい線を行っている。 特に底の部分を別パーツにして特徴的な模様を再現していることと, 底部内側の薬嚢を入れる窪みがあるところが気が利いている

    あえて苦言を呈するなら,窪み内側の合わせ目消しがちょっと面倒なのと, 底部のリングのモールドが細くて弱々しいので,気にするなら一度削り落として, 薄いプラ板で作り直す。 また当方が入手したキットでは (金型の仕上げが不十分なのか)一部成型が悪い部分がありパテ盛りが必要だった。 底部周囲の丸穴もモールドされているが, 型抜きの関係上,真円になっていない箇所があるので,ピンバイスで穴を開け直した (内側まで貫通しているのが正解)。

    興味深いことに IV号弾薬運搬車のキットに付属の同砲弾では, 微妙にモールドが変わっており, 先端部の丸みが少し強くなって,さらに実物に近くなった印象がある。

    続いてleichte Betongranateである。 同じく成型色がクリーム色の物はカールのキット, グレーの物はIV号弾薬運搬車のキットのパーツである。 砲弾の底には何もディテールの彫刻はないが, このページ冒頭の図面に描かれているように窪みが一段あることだけは表現されている。 なおキットにはschwere Betongranate用にも leichte Betongranate用にもカートリッジのパーツは用意されていない。

    こちらの砲弾も IV号弾薬運搬車のキットでは, 先端形状に改良が加えられている。

    写真右はカール本体のみのキットIV号弾薬運搬車のキットに付属のアルミ製砲弾。 形状的はIV号弾薬運搬車のキット のプラ製砲弾と一致するようだ。

    このアルミ製schwere Betongranateには底面のパターンや周囲の穴などは加工されておらず, 別に用意されたエッチング・パーツを貼るようになっている。 ところが残念なことに底面のエッチングがプラ・パーツとはかけ離れた彫刻になっており, 実感を損ねてしまっている。 プラ・パーツを参考にして薄いプラ板で自作するか, 他社のエッチング・パーツを流用することになろう。 候補となるエッチング・パーツとしては,

    がある。 このうちLion Roar製品は形状が不正確なので,選択肢としてはEduardかPartが適当である。 なお,Eduardの35568は本来はドラゴンのカール用であることに注意。 Eduardは トランペッターのカール用にもエッチング製品(35761)を販売しているのだが, こちらには砲弾底面のパーツが含まれていない。

    leichte Betongranateはこのままで特にエッチング・パーツはない(なしで十分)。




    00362「German Panzerkampfwagen IV D/E Fahrgestell」付属のアルミ製砲弾

  • バーリンデン1/35
    2137 Ammo for 60cm Morser Karl(Dragon/Trumpeter)
    レジン製の60cm重ベトン弾(schwere Betongranate)2個, 軽ベトン弾(leichte Betongranate)2個, カートリッジ2個, 軽ベトン弾用の木箱1個,カートリッジ用木箱2個のセットである。 全体に成型状態は良く,バリは見当たらず,気泡もごくわずかであるから, 湯口の処理だけすればすぐに使える。

    砲弾は2種類とも底面が湯口になっており, このため底面のディテールが一切ない。 重ベトン弾の底面の特徴的な凹凸が省略されてしまっているのは, それなりの価格の製品だけに興醒めである。 また底部周囲の8個の丸穴もない。 寸法的には2種類ともに(レジンの収縮のためか) 直径が少し細めで全長も1mm〜2mm程度短いようである。

    カートリッジは ニュー・コネクションのアルミ製軽ベトン弾 に付属のカートリッジと同様に長さが少し長すぎるようで, 54cm砲弾用のカートリッジに近いように思われる。



    2137 Ammo for 60cm Morser Karl
    (Dragon/Trumpeter)


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Created: April 13, 2003.
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