■トランペッター1/35キット■


00209 Moeser Karl-Geraet 040/041
on railway transport carrier

00208 Moeser Karl-Geraet 040/041 (Initial Version)
on railway transport carrier

発売予告から1年以上待たされたあげく,ようやく2004年秋になって発売になった。 輸送貨車付き,60cmと54cmの砲身選択式, サスペンションと作業デッキは射撃時,自走時,貨車輸送時の3形態を再現可能, と超豪華な内容である。 最初に発売になった00209は足回りが11転輪タイプ(III〜VII号車), 続いて発売になった00208は8転輪タイプ(I〜II号車)である。 両キットは足回りの違い以外は同等である。

2003年春に製品アナウンスがあった当初は, CMKのレジン・キットらしいものの写真がマスター・モデルとして公表されていたために, 出来に関してはあまり期待できないのではないかという不安もあった。 しかし,やはりドラゴンとの直接対決となったレオポルド列車砲が素晴らしい内容で発売になり, その後カールの開発状況が明らかになってくると徐々に期待が盛り上がっていた。 今こうして実際手にしてみると期待に違わぬ出来である。


◆製品内容◆

メーカー発表によるとパーツ総数は1251点。 正確に数えたわけではないが,輸送貨車とカール本体で半分ずつぐらいのパーツ構成である。 A〜Gランナーが輸送貨車と線路パーツ,H〜Sランナーが本体パーツとなっている。 これ以外に車体上下部品,ポリ製キャタピラ,エッチング・パーツ,線路台座のパーツがある。 輸送貨車はいらないのでカール本体だけで価格を抑えたキットを出して欲しい, という要望もあるかと思うが, パーツ構成はカールと輸送貨車で厳密に分かれているので, 全く可能性がないわけではないだろう。

全体に本体,輸送貨車ともによく考証されているようである。 カールの車体左右で非対称の転輪配置,車体上面から一段下がった左右作業デッキ, 車体から突出したグリル基部, などこれまで多くのキットで誤っていた部分はいずれも正しく再現されている。 カールや貨車各部の滑り止めも, これまでのキットのような間違った表現にはなっていない。 クビンカに残るZiuをよく取材したのだろうと推測されるが(注), クビンカの車両で欠落している部分についてはキットのパーツを過信するのは危険。
注)モデルグラフィックス2005年3月号に掲載されたトランペッターへの会社訪問記事の中で, トランペッターは簡単に海外で実車を取材することはできない, という趣旨の記述があるため, カールに関してもトランペッターが直接クビンカの実車を取材したわけではなく, 社外の(中国外の?)人間が取材した資料を基に設計が行われている可能性はある。

キット全体が「見せ場」であるとも言えるのだが, あえて「見せ場」もしくは「凝った」部分をいくつか挙げるとすると,

  • 車体内部のトーション・バーとサスペンションの上下のためのリンク機構。 これまでのキットでは, (ミニ・アートのレジン・キットを除き) あっさり無視するか, ドラゴンのキットのように実車にはない「床」をつけてしまうなど細工され, 見えなくされていた車体内部が再現されている (ただし11転輪シャーシのキット00209のみ)。
  • 砲架。 多数のリベットやリブを再現するために,部品分割にかなり工夫を凝らしている。
  • 砲弾装填トレイ。 一部にスライド金型を使うなど,これまた凝っている。
  • 起動輪内側の遊星歯車と起動輪カバー内側のリブ。 米軍がLokiを捕獲した時の写真を参考にしたのだろう。 ここは完成後見えなくなる部分だが面白い。 ただし歯車の歯の表現が今ひとつで,形状がおかしな部分もあるが…
  • 専用輸送貨車の複雑なアームとその支持部。 機構的にも興味深い構造を多数の部品で再現している。

モールドに関しては部分によっていくらか出来の差がある。 砲架表面のリベットやボルトの大きさや種類の違いのメリハリ, 上部リターン・ローラーなど,感心するモールドが多々あり, また車体左右の折りたたみデッキなど, 要所々々にスライド金型を使って, 部品点数を増やさずにディテールをうまく表現していて好感が持てる。 貨車の転輪や軸受け部のモールドは, 前作レオポルド列車砲と同様に素晴らしい。 ルーペで拡大しないとわからないほど小さな刻印などは見事である。 その一方で, 鋳造部分の表面が滑らかで荒れた表現が一切ないなど拍子抜けさせられたりする部分もある。

何にせよ,基本形がしっかりしており,あるべきもの, 再現されてしかるべきディテールがきちんと含まれている好キットである。 こうした出来よいキットは,素組みにするにせよ, ディテール・アップを試みるにせよ, どこまで手間をかけるのか,どう楽しむのか, 作る側に決定権,主導権があって気持ちが良い。 (素組みで組み立てるのですらそこら中に調整や修正が必要になるようなキットは, 作る者がキットに振り回されているのであって, やはり製品としては不合格なのだと思う。)

不良パーツについて

00209 "Moeser Karl-Geraet 040/041 on railway transport carrier" の初期出荷版には, 間違ったスプリングのパーツが同梱されている不具合があった。 スプリングの内径と駐退器の軸径が合わないために説明書の指示通りには組み立てられない。 トランペッターは部品交換に応じているので, キットを購入したショップか, 日本代理店であるインターアライドのサイトで確認してください。

http://www.interallied.co.jp/

第2弾のキットである 00208 "Moeser Karl-Geraet 040/041 (Initial Version) on railway transport carrier" には最初から正しいパーツが入れられており,この問題は存在しない。

Geraet 040/041

60cm砲身のGeraet 040と54cm砲身のGeraet 041の選択式になっており, 砲身,砲弾装填トレイ,尾栓部のカウンター・ウェイト(?)などの両者の違いが きちんとパーツ化されている。

砲身は,60cm砲,54cm砲共に砲口付近のみライフリングがモールドされている。 抜きの関係でライフリングの方向が斜めではなく, 砲身に並行になってしまっているのは仕方がないところだろうか。 なおライフリング部分は砲身自体とは別部品の一パーツになっている。 これは(ドラゴンの砲身のように) 砲身左右を貼り合わせたあとでライフリング内側の合わせ目を消す手間がいらないのと, 今後サード・パーティーからライフリングのエッチング・パーツが出てきた場合, 組み込むのに砲身内側のモールドを削り落とす必要がない,といった利点(?)がある。 また砲身後端は薬室部分の断面形状を再現している。 完成後に尾栓を開けた状態にしないかぎり見えないとは言え, 大口径砲のキットならでは試みであり,好感が持てる。

砲弾は60cm重ベトン弾と60cm軽ベトン弾がそれぞれ1個ずつ。 54cm砲弾は付属していない。 インジェクション・パーツなので, ドラゴン,ニューコネクション, アーモのアルミ製に比べると商品として付加価値は低いようにも思えるが, 重ベトン弾底面のモールドや軽ベトン弾底面のくぼみ, 重ベトン弾側面の穴をきちんと表現しているので悪くないと思う (アルミ砲弾で底面をきちんと再現しているものはない)。

足回り

二つのキットの違いはこの足回りだけである。 HとPランナーが両キットで入れ替わっている。 また下部シャーシも表面のモールドが異なるためそれぞれ別設計である。

00209 11転輪シャーシ
サスペンション・アームは射撃状態,貨車輸送状態と自走状態に対応するようにシャーシとは別体とされ, シャーシ側にはサスペンションが有効な場合と解除した場合それぞれの位置決め用のキーがある。 ただし取り付けボスが小さめなので自走状態に組む場合にはしっかり固定したい。 サスペンション・アーム,アームのストッパー,輸送時に履帯を固定するための手動ウィンチ, 転輪類のディテールも申し分ない。 特に上部リターン・ローラーは,微妙な断面形状やゴム部のメーカー名のモールドなどに感心させられる。 誘導輪基部も良く出来ている。

多分このキットで一番批判を浴びると思われるのは履帯だろう。 「この値段でポリはないでしょ」と言うわけである。 一応ガイドの肉抜き穴や側面の連結ピン部を再現しようとするなど努力は認められる。 しかし表面のモールドの「彫り」が少し浅めなのと, 材質が硬めでたるみをつけるのに苦労しそうである (タスカのルクスの履帯並みの完成度を求めるのは酷か)。 やはり連結式の方がよかったと思う。 特にカールの場合は射撃姿勢ではサスペンションを上げるために, 履帯が大きくたるむので,これをうまく再現するのが難しそうなのは残念。 モデル・カステン,フリウル,WWII Productionなどから連結式の製品が発売されることを期待しよう。 それまではドラゴンのキットのパーツを手を加えた上で流用するぐらいしか手が無い。

00208 8転輪シャーシ
11転輪シャーシの場合と同様, 射撃状態, 貨車輸送状態と自走状態に対応するようになっている。 このシャーシの外見上の大きな特徴である, ロード・ホイールを2本のアームで挟み込むサスペンションや 前後に長く伸びるガーダー・レールも凝った部品分割で表面のボルト類がよく再現されている。 11転輪シャーシでは再現されていた車体内部のサスペンション上下機構は, 8転輪シャーシでは省かれている。 この部分の詳細が不明であるためと思われるが残念である。

履帯は8転輪用のものの形状を正しく再現しているが,材質は相変わらず硬く, またモールドも浅くてもの足りない。 11転輪用の履帯と違って,流用できそうな他キットもないので頭が痛い。

なお,11転輪シャーシと違い,8転輪シャーシの車両は現存しないので, キットで再現されているサスペンションの構造や形状が100%正しいとは言えないかもしれない。 詳細は今後検証してみたいが,ざっと見た感じでは以下の2点が気になる。

  1. 上部のリターン・ローラーの直径が少し大きすぎるように思える。 8転輪シャーシの場合,11転輪シャーシの物よりも一回り小さい(実物で280mmぐらいか?)ようなのだが, キットでは11転輪シャーシの物(直径約350mm)と同じ直径になっている。
  2. シャーシ表面にある一部のモールドは実車にはないように思われる。

輸送貨車

実車でも複雑で迫力ある外観を持つ輸送貨車のクレーン部分は多数のパーツで細かく再現されている。 表面のリベットが印象的なアーム部は, 箱組みにしてあらゆる面のリベットをモールドしようとしており, メーカーの執念を感じる。 輸送貨車のモデルは 1/35 CMK1/87アーティテック という好レジン・キットが存在したが, トランペッターのキットは明らかにそれらを凌駕していると言える。

アーム支持部は実車の構造を反映して可動箇所が設けられている。 別に可動に設計しなくても模型としては成立するのだが,ギミックとしては楽しい。 ジャッキ部は伸張した状態と縮退した状態の選択式になっている (ここを可動式にはできなかったようだ)。

前作のK5(E)レオポルド列車砲では,執拗な部品分割で台車が細かく再現されていた。 カールの輸送貨車の車輪周りもほぼ同様の構成になっている。 レオポルドの台車裏面にはあったブレーキ作動機構がこのキットでは見当たらないのが違うぐらいである。 カールの輸送貨車は現存していない(と思われる)ので裏面の詳細は不明,ということなのだろう。

これまでの輸送貨車のキットで間違っていることが多かった前後の台車の細部の相違も正しく表現されている。

線路のパーツはレオポルド列車砲と共通である, かと思いきや改修されているらしい。 レオポルドの発売時に, 軌道巾が45mm弱になっていて標準軌の巾(1435mm)の正確な1/35(41mm)になっていない, との指摘があった。 本キットに含まれるの線路パーツでは正しく41mmになっているようだ。

なおドラゴンの列車砲や貨車類, ドライジーネに付属の線路パーツも正しく41mmであるので, ドラゴンとトランペッターのキットの間で線路パーツの使い回しが可能と思われる。

エッチング・パーツ

エッチング・パーツは2枚。 Aが貨車用パーツ,Bがカール本体用パーツとなっている。 一見何のパーツかわからない物が多いが, 主に本体の折りたたみ式の手すり周りの止め具や梯子下部のヒンジ, 小さなノブなどの貨車のディテール,である。 不思議なことに(エッチング・パーツの定番とも言える)OVM類の止め具は含まれていない。 まあこの手の止め具は汎用パーツで簡単に手に入るから, カールに固有のパーツに重点を置いているのはかえって良心的と言えるかもしれない。

複雑な形状に折り曲げる一部のパーツについては, そのための「型」となる治具がプラ・パーツで用意されている。 こうした,ユーザに対する配慮は褒められてしかるべきだろう。

デカール

デカールはカルトグラフ製で,貨車用のものも含まれている。

00209 11転輪キット用

カール本体用はニックネーム,車体番号で,白と黒の2種類がある。 残念ながら1941〜1942年頃の写真で確認できる部隊マークは含まれていない (ただしこの部隊マークは意匠や色が定かではないのではあるが)。 ニックネームはLokiのものは白と黒で実車同様に字体を違えてある! Thorでは同じ字体になってしまっている。 実車では1942年当時の白いマーキングと1944年夏の黒のマーキングでは微妙に字体が違うようなのだが。 キットのデカールはそのどちらとも少し違うように見える。 (なおローマ数字の車体番号は, 時期や車両によって書かれている位置や大きさに変化があるようだし, どこに書かれていたか全て明らかになっているわけでもないので, 今後の研究課題である。)

実車写真を見る限り, 貨車にはキットのデカールに含まれている以外にも各部に様々なマーキングがある。 何が書かれているのかよくわからない物も多いが, 今後サード・パーティーからデカールが発売される可能性もあるかもしれない。

組立説明書には,1944年夏の540mm砲身をつけたLokiの3色迷彩の塗装・マーキング例と, グレー単色の貨車のマーキング指示が載っている。

付属デカールの使用例
デカール車両,時期備考
ローマ数字III?記録写真では確認できず
ローマ数字III?記録写真では確認できず
ローマ数字IV?記録写真では確認できず
ニックネームThorNr.IV, Thor, 1942年セバストポリ戦時, 字体が少し違う
セバストポリ戦時には車体前部に部隊マークもあった
ローマ数字IVNr.IV, Thor, 1944年 
ニックネームThorNr.IV, Thor, 1944年字体が少し違う
ローマ数字VNr.V, Loki, 1943年 
ニックネームLokiNr.V, Loki, 1943年 
ローマ数字VNr.V, Loki, 1944年 
ニックネームLokiNr.V, Loki, 1944年 
ローマ数字 VI?記録写真では確認できず
ニックネームZiu? 
ローマ数字VINr.VI, Ziu, 1944年 
ニックネームZiuNr.VI, Ziu, 1944年ワルシャワ蜂起時, 片側は白との説もあり (資料[57]

00208 8転輪キット用

カール本体用はニックネームと車体番号で,色は白である。 ただし8転輪シャーシのI, II号車の場合, 本体に描かれたマーキングが直接わかる戦時中の写真,資料などはない。

"Adam"のニックネームは,クビンカに残る車両の塗装を剥がした際に, ある時期にこの字体で書かれていたことがあったことが確認されている (資料[38])。 "Eve"に関しては, 専用の輸送貨車ではない 通常の貨車に載せられて全体をシートで覆われている状態の写真が残っており, そのシートにこの字体でニックネームが書かれていることはわかる。

その他

輸送貨車はカールを積載した状態以外にも, 積載していないときに前後の貨車を連結した状態も組める(あまりやる人はいないかもしれないが)。

OVM類は(クビンカの車両で欠落しているためだろうが), 消火器,ノテック・ライトのようにちょっと使えないものがある (ドラゴンのキットでも消火器と,ノテック・ライトは「ダメ」パーツだったのだが, まさかそれを参考にしたというわけでは…)。 スコップ,斧などはましである。 前述の様にキットのエッチング・パーツにはOVMの止め具は含まれていないので, ディテール・アップをしたければ他から持ってくる必要がある。

車体各部のハッチのヒンジやハンドルは場所によっては少し表現が単純になってしまっている。 今後対応エッチング・パーツが出てくるのを期待しよう。 ドラゴンのキット用のエッチング・パーツを流用してもよい (例えばロイヤル・モデルの製品など)。

特に大きなヒケや問題になりそうな押し出しピン跡は今のところ見当たらないが, パーティング・ラインの目立つ部分やわずかにバリがある部分が散見される。 パーツの合いは概ね問題なさそうであるが, 位置決め用のダボ,ホゾは場所によってきつ過ぎたり, 正しい位置に部品を合わせるには切り飛ばす必要がある場所がある。 あまり神経質になる必要はないと思うが,全体に仮組み,擦り合わせ, 調整には少し気を使いたい。

ドラゴンのキットCMKのレジン・キットを参考にした節があるが, このトランペッターのキットはミニ・アートのレジン・キット を参考にしているように思える部分がある。 ただしコピーなどではない。


◆組立説明書の補足◆

▼重要▼

00208 8転輪キットでも00209 11転輪キットでも, 組立説明書では"Firing mode"と"Travelling mode"のどちらかを選ぶようになっている。 説明書にしたがってFiring modeに組むと 「サスペンションが下がって」「車体左右の作業デッキが展開」された形態に, Traveling modeにすると「サスペンションが上げられ」 「作業デッキが折りたたまれた」形態になる。

本サイトでは,カールの運用上の形態を下記のように分類して呼んでいる。

  • (A)自走状態:文字通り自力で走行する状態
  • (B)射撃状態:射撃位置についたのちに,装填,照準,発砲作業を行う状態
  • (C)貨車輸送状態:専用の貨車に積まれている状態
  • (D)運搬状態:砲身,砲架を分解されて, クレマイヤー・トレーラーに積まれて運搬される状態
これら4つの状態とサスペンションなど車体各部の形態の対応関係は 「カールの形態とキット」ページの表1に示してある。

トランペッターの組立説明書のFiring modeは本サイトの分類では(A)自走状態にあたり, Traveling modeは本サイトの呼び方では(C)貨車輸送状態になる。 Firingという表現を使ってはいるが, カールが射撃を行う形態の組み立て方ではないことに注意。 すなわち,弾薬運搬車などと並べて射撃陣地での形態を再現するのにふさわしい (B)射撃状態を組むやりかたは組立説明書には示されていない

キットには(B)射撃状態を再現するのに必要なパーツは全て含まれているので, 説明がないのは残念である。 (B)射撃状態を組むには,基本的には「サスペンションを上げ車体を地面につけ」 「作業デッキを展開」した形にすればよいので, 下記のようにする。

  1. 本体部部分:00209 ステップ2, p.17, 00208 ステップ4, p.18
    サスペンションは,Travelling modeのようにアームを上げた状態にする。

  2. 本体部部分:00209 ステップ7〜8, p.22〜25, 00208 ステップ12〜13, p.26〜29
    車体左右の作業デッキは,Firing mode(実際には自走状態)のように展開した状態に組む。

  3. 本体部部分:00209 ステップ22, p.35, 00208 ステップ27, p.39
    (B)射撃状態では砲架を車体後方(砲口の向いている側)いっぱいまで寄せて乗せる。

組立説明書で不明確な部分,気になる部分について挙げておく。

  1. 貨車部分:ステップ10, p.12
    ジャッキ先端部品としてC6とC8のどちらかを選択するように指示があるが, 選択の基準が示されていない。 C6は「カールを貨車に搭載する作業途中にアームをジャッキで支えている時」に相当し, 搭載作業を終えて機関車で牽引されている時を含めて それ以外の場合にはすべてC8を選ぶべきである。 説明書の後半部(00209ではp.36,00208ではp.40)には カールを貨車に搭載し終わった状態でジャッキ先端がC6になっているイラストが描かれてしまっており, これは間違いである (このイラストは搭載作業終了直後でこれからジャッキを縮める直前の状態を示しているのである, と強引に解釈すれば間違いではないが…)。

  2. 本体部分:00209 ステップ5, p.20,00208 ステップ10,p.24
    これは間違いではないが一応指摘しておく。 11転輪シャーシのキットでは, 排気管のパーツとしてK21, K49が指定されているが, キットにはこれ以外にM23, M24というパーツが含まれている。 K21, K49には排気管の延長部分を接続するフランジがモールドされており, M23, M24にはこのフランジがない。 長い排気管もフランジもついていない状態の実車写真もあるので, 特定の車両の特定の時期を再現したければ注意。 いまのところ11転輪シャーシの車両でそのような写真はないようである。

    8転輪シャーシのキットでは逆にM23, M24が指定されており, 長い排気管のパーツは不要部品となっている。 しかし8転輪シャーシのNr.I, Nr.IIでも長い排気管を装備している写真が残されているので, 特定の時期の車両を再現したい場合には注意。

  3. 本体部分
    車体後面下部には間隔表示灯と尾灯,バール等が装備されており, キットにはちゃんとそのパーツもあるのだが, 00209の11転輪シャーシのキットの組立説明書には取り付け指示がなく, またシャーシや後面パーツ表面にも位置を示すダボやガイドのモールドもない。 間隔表示灯(N17)は後面向かって左下,尾灯(N16)は向かって右下, バールはその間に付く。 「カール各車の相違点」のイラストを参照のこと。

    00208の8転輪シャーシのキットではシャーシ側に, これらのパーツ用の取り付けダボ穴があり, 組立説明書のステップ2,p.16に指示が載っている。

  4. 本体部分:00209 ステップ10, p.26,00208 ステップ15,p.30
    車体前面パーツM20に(梯子をつけるため)穴を開けるように指示があるが, どこに開けるのかイラストが今ひとつ不明確である。 11転輪シャーシでは部品裏面の「L」と刻印されている4箇所に開けるのが正解 (1箇所にはLと彫刻されていないが他の3箇所の位置からすぐに推測できる)。

    「E」とモールドされている穴あけ箇所は, 8転輪シャーシのNr.Iで梯子の位置が他の車両と少し違っているのに対応するためのものである (「カール各車の相違点」のイラストを参照)。 8転輪シャーシでもNr.IIの方は11転輪シャーシと同じ位置に梯子が装備されていたらしいので, 「L」の位置に穴を開ける。

  5. 本体部分:00209 ステップ22, p.35, 00208 ステップ27, p.39
    このステップで砲架を車体に乗せるが,その位置が曖昧である。 射撃状態にするなら車体後方(砲口の向いている側)いっぱいまで寄せる。 自走状態や貨車輸送状態にするなら砲架は後座位置(操縦手席側すなわち車体前方) いっぱいまで下げる。

(以下気が付いたら随時追加する予定)


◆00209 Geraet 040/041 11転輪車両製作記◆

■2004年9月18〜19日

早速手を付けました。 以下の方針で進めることにします。

  • 基本的に素組みでまず完成を目指す。
  • まずカール本体,次に貨車を組む。
  • 問題箇所が見つかれば(大手術にならない限り)適宜修正する。
  • キット付属のエッチングには含まれないOVMのクランプ類などは, ドラゴン用のディテール・アップ・セットなどから流用する。 基本的には一番出来の良い ロイヤル・モデルのディテール・アップ・セット (356 60cm Morser "Karl" Detail Set Part 1, 357 60cm Morser "Karl" Detail Set Part 2)を利用する。
  • 問題の履帯はドラゴンのキットから流用する…かな。

さて何日で完成しますか。

・シャーシ

サスペンション・アームは別体で, 射撃/貨車輸送状態でサスペンションが上げられた状態と, 自走状態でサスペンションが有効な状態の選択式になっています。 これまで多くのキットで再現されていなかった左右非対称の転輪配置も正しく表現されています。 またエンジン・ルーム直下のトーション・バー3本は他よりも位置が下になっており, これらのサスペンション・アームのストッパーの取り付け角度が少し急になっているのも実車どおりです。

車体内部にはトーション・バーやサスペンションの上下機構のリンクが部品化されています。 これらはミニ・アートのレジン・キットとほぼ同等の内容ですが, 恐らく両者ともクビンカの実車の取材の結果でしょう。 ただし完成後に覗き込める部分のみパーツ化されており, 砲架の直下になって見えない中央部は省略されています。 また「生きていた」頃の実車には実際にはこれらの装置以外に, 砲座の復座機構(シリンダーなど)があったと思われますが, このキットでは再現されていません。 詳細が不明な部分ですから仕方ないでしょう。 全く何もないガランドウの車内よりはずっとマシです。

パーツの合いは悪くありませんが, 床部品(P7, P8)とシャーシの嵌め合いがきついので,少し擦り合わせが必要でした。 またトーション・バーのパーツ(H13)は見えるところに押し出しピン跡があり, パテで埋めました。 トーション・バーの上に走っている桁の部品(M12, M15, M17, M18, J15, J16)にも, ピン跡,ヒケが結構あります。 またシャーシへの組み込みも少しきつかったです。

ドライブ・スプロケットは,内部の遊星歯車がモールドされており, 実車同様ここにカバーをかぶせるようになっています。 ただしカバーとスプロケット・ホイール本体の嵌め合いが悪く, 接着時は中央の歯車の軸を切り落とさなければならないかもしれません。 またスプロケット・ホイール部品(H11, H12)はゲートがいやらしい位置にあり, 処理に手間取ります。

誘導輪周りはディテールがあってよい感じです。 ただし誘導輪支持アーム部品(J14)の取り付け角度が少しあいまいです。 もしかすると履帯の「張り」の調整のためかもしれません。 固定するのは履帯取り付け後とするのが無難でしょう。

参考のためにドラゴンのキットの写真を掲載します。 最近発売になった,金型改修やエッチング・パーツの追加が行われた特別版(改訂版?)の方ではなく, 2003年2月発売の最初のキット(6179)の素組みの写真です。 ちょっと不公平な比較かもしれませんが, 特別版でも根本的な問題は改修されていないので,大差はないと考えて構いません。 (初版と特別版の違いについては こちらを参照してください。)

転輪類
Trumpeter 00209




Dragon 6179




■9月20日

今日は砲身と砲架です。 凝った部品分割なんで,擦り合わせや隙間埋めを慎重にする必要があることと, ちょっと手を入れたい箇所の作業手順の関係で まだあっちこっち仮止め状態のままにしておかざるをえないのですが, とにかく形になったところを見たい一心で仮組みしてみました。

・砲身,砲架

54cm砲身です。 ライフリング部分と砲尾の薬室部分が別部品となっています。 あとの写真で示すように尾栓がきちんと別部品になっているため, 尾栓を開いて砲弾を装填している様子をジオラマにする, なんてことを考えるなら(よく見えはしないにしても), こうしたパーツ割りはありがたいギミックだと思います。

パーツの合いは良いのですが,砲身表面に若干ヒケが出ている部分があり (60cm砲身も同様), 一度溶きパテを塗りたくって調子を見たほうがよいと思います。 54cm砲身のGeraet 041を選択した場合, 砲尾ブロック上部に乗っているカウンター・ウィイト(?)のような部分もちゃんとパーツ化されています。

あのすばらしい アーモの金属砲身が流用できるかが気になるところです。 60cm砲身に関しては,寸法的には置き換え可能なようです。 ただし先端のテーパー部分がアーモの製品のほうが約1mm短い感じです。 キットの砲身に致命的な欠点があるというわけではないので, ライフリングのモールドが砲身に平行になっていることを気にするかしないかでしょう。 とりあえず今回はキットのままとすることにしました。

尾栓はちゃんと別部品になっています。 二つのパーツを張り合わせて作りますが,合わせ目に隙間が生じるのでしっかり埋める必要があります。 写真ではよくわかりませんが, スライド金型を使って細かい段差やディテールを再現していて, 設計者の熱意が感じられます。 尾栓に限らずこのキットでは要所々々にスライド金型を使い, 部品点数を抑えつつディテールをつけようという設計がなされており, 感心させられます。

大きな砲尾ブロックは箱組みになっています。 きちんと合うのですが, いやらしいのは尾栓がはまる穴部分が左右の部品(R11, R12)に一体にモールドされているため, 合わせ目が中央に来てしまい, 奥まった部分なので合わせ目を消すのがちょっと面倒です。 尾栓を閉じた状態にしてしまえば見えませんし, 開けた状態でも丸見えになるわけではないのですが, ヘンに段差を残してしまうと尾栓を差し込んだ時に引っかかってしまうので注意が必要です。 なおこの合わせ目を綺麗に処理したとしても尾栓と砲尾ブロックの嵌め合いはかなりきついので, 尾栓全体をわずかに削りこんだほうが良いと思います。 キットのままだと塗装したときに塗膜の厚みで入らなくなるでしょう。

迫力のある砲身部。 仮組みした限りでは砲身外筒と本体部分に少し隙間が生じそうなので, あとでよく擦り合わせをするつもりです。 実車写真をみると,鋳造部分表面がかなり荒れているのが目立ちますが, キットはのっぺりと平坦な表現仕上げになっているので (梨地にすらしていない), パテなどを用いてそれらしい状態にしようと思います。

貨車搭載状態を正しく再現するために上部駐退復座装置は別体になっています。 ただし中はガランドウなので,ひっくり返すと興醒めですが。 駐退復座器のシリンダー・ロッドは中央のみ金属ロッドで左右2本はプラ部品になっています。 またスプリングを組み込んでパコパコ遊べるようになっています。 ハセガワの1/72キット以来,ドラゴンなどもこうしたギミックを付けていますが, 個人的にはあまり楽しいとは思いません。 塗装のときに邪魔ですし。 このためスプリングは組み込まないで作ってしまうことにします。

大型のボルト,ナットやギヤ部のスポークや段差など, よく再現されています。 全体に部品分割は良く考えられていますが, ちょっと以外だったのはこのギヤ部分です。 左右貼り合わせになっているので,合わせ目がギヤの歯の中央に来てしまいます。 これを全部綺麗に消すのはえらく大変そうです。 またこの部分の近辺は実車では大型の構造部品の継ぎ目がかなり目立つのですが, キットでは筋彫りも何もなくあっさりしているので, 部分的にパーツを切り離して再現するか,筋彫りを入れてみたいところです。 砲身に大仰角をつけた時にはもろに見える部分ですからなんとかしたいですね。 どうするのが一番いいかちょっと思案中です (このせいで今日の作業はストップしてしまいました)。

砲尾ブロックの下部です。 これまで発売されたカールのキットはどれもこのような形になっているのですが, 実はこれで正しいのか常々疑問に思ってきた部分です。 ここは普通は砲架内側に隠れており写真には写りにくいなのですが, 唯一Taube本に掲載されているセバストポリの前線での組み立て途中の写真では少し違った形状のように見え, またWaffen Revue に載っている図面も注意してみると写真と辻褄があっているように思えるのです (そのうち当方が「もしかすると」と思っている形状については本サイトのどこかに掲載します)。 トランペッターがクビンカの実車のとおりに設計したらこうなった, というのであればよいのですが…


実によくできた砲架です。 大型の砲耳を持ち,全面リベットだらけの砲架の雰囲気が良く出ています。 箱組みで作りますが, 厚みのためにヒケがでそうな砲耳やリブを別部品にしているために (だからといってヒケが全くないわけではないのですが), 部品点数はかなりの数になります。 また完成したらよく見えなくなる内側にも執拗に(!?)リベットのモールドをつけています。 写真2枚目にあるように砲架の「縁」も別部品にして裏側にもリベットをつける徹底ぶりです。 ただし部品点数が多いため,仮組み,擦り合わせは慎重に行い, 隙間埋め,合わせ目消しには時間をかけた方が良いでしょう。 写真の状態もまだ調整が済んでいない部分があるため, 仮に挿したりテープで止めてあるだけの仮組みです。

ドラゴンのキットとの比較:砲身・砲架編
Trumpeter 00209




Dragon 6179





ドラゴンとの比較写真はとりあえずここまでにします。 トランペッターのキットが細かい部品がついていない仮組み状態であるにもかかわらず, 曲がりなりにも組み立て完了した状態のドラゴンのキットと比べてこれだけの差があります。 タミヤの旧III号突撃砲(MM14)と新作III号突撃砲G型(MM197)を比べているような感じなのです。 ドラゴンのキットは, パッと組みあがる大型キットとして昨年我々AFVファンに衝撃とワクワクする楽しさを与えてくれたことは確かですが, 正確さ,精密さの面では(発売から1年しか経っていないのではありますが) 役割を終えたように思います。

■9月23〜24日

あまり進んでいません…

・砲身,砲架,砲弾,砲弾装填トレイ
砲弾は60cm重ベトン弾と60cm軽ベトン弾各1個が入っています。 54cm砲弾がないのが寂しいところ。 どのような形状なのか資料がないので仕方がないとも言えますが, 現物が残っているらしいので,それを取材することは不可能ではないと思うのですが。 (砲弾については 「カールの砲弾」の項を参照のこと)

キットの砲弾は左右張り合わせで形状としては結構いい線を行っていると思います。 特に重ベトン弾は底の部分を別パーツにして,特徴的な模様を再現していることと, 底部内側の薬嚢を入れる窪みがあるところが気が利いています。 ただし内側の合わせ目消しはちょっと面倒です。 また金型の仕上げが不十分なのか一部成型が悪い部分があり,パテ盛りが必要でした。 重ベトン弾底部周囲の丸穴もモールドされていますが, 型抜きの関係上,真円になっていない箇所があるので,ピンバイスで穴を開けました (内側まで貫通しているのが正解)。

砲弾装填トレイは,きちんと60cm砲弾用と54cm砲弾用の違いがパーツ化されています。 右の写真上奥が54cm砲用,手前が60cm砲用のパーツです。 トレイ後部の桁組み部分はスライド金型を使った成型が見事です。 その他の部分も部品分割がよく考えられ,うまく一体成型と別部品を使い分けているように思います。 この点前作のレオポルド列車砲が,とにかく細かいパーツ割りをしていたのとは違います (カールでも輸送貨車については列車砲同様の細かい分割になっているようではありますが)。 バリ取り,パーティング・ライン消し,押し出しピン跡修正は必要でした。 特にトレイ部品(S3, S9)はローラーの入る開口部の整形,裏の押し出しピン跡,バリ, 他パーツとの合い,に注意です。 またトレイ側面のローラーの軸部分にはゲートがついているために真円になっていないので, 削り落としてプラ板で再生しました(写真下)。

合わせ目をパテ埋めした砲尾ブロック。 この部分は実車では複雑に面取りやアールがついており, キットはよく再現しているのでパテ埋め, ヤスリがけには注意して面やエッジをだめにしないように注意しました。

同じくパテやアルテコ瞬着パテで合わせ目の処理をした駐退器部。 実車はここは鋳造表面が荒れたままになっている部分と研削されて面が出ている部分がありますが, 荒れた鋳造表面の部分はあとで溶きパテを塗りたくる予定です。 上部駐退器側面の五つ並んだ丸いモールドは埋めてしまいました。 キットではこのモールドが等間隔で並んでいますが, 実車では砲尾側の最後の二つの間隔は他の部分より少し長いようなのでこうして一度埋めて, あとで新たに筋彫りするつもりです。

また表面の配線(配管?)は削り落としてしまいました。 鋳造表面再現後に再生します。 キットの配線のモールドは立体感があって悪くはありませんが, 砲前側の配線がどうやら少し実車と違ってしまっているようなのと, 配線基部のディテールを作ってやるとかっこ良さそうなので。

上下動用の大型のギヤの根本部分です。 実車では中央のギヤ部を左右からはさんでいるような形になっています。 キットではこの部分が面一であるかのように成型されていますが(9月20日の写真参照), 実車写真を見る限りかなり工作がラフで(車体によって少しずつ違いますが) このようにずれていたりします。

■9月25〜26日

・車体上部
車体側面のバルジは別部品(K29)になっています。 車体との合いが良くないので,車体側を少し削りこんでから着けました。

車体中央部には側面パーツ(N3, N6)を貼り付けますが, エッジ部分の継ぎ目は目立つので綺麗に消したいところです。 車体内側にも継ぎ目と押し出しピン跡がありますが, ここは完成後は見えなくなるので無視してもいいかもしれません。

完成後はほとんど見えなくなるのですが, 自己満足で車体内側上辺の補強用の桟(?)を貼り付けてみました (あれっ,素組みにするはずじゃなかったっけ?!)。 両側面の大きな桁構造(K3, K25)周りには写真の赤線で示すように溶接ラインがあるようです。 カールのように大型の車両の場合,かなり近寄って撮った写真がないと, 溶接ラインがわからないので,どこにラインがあるのかよくわからない部分が多いです。 キットには車体前面 (操縦席側,カールは砲口の向いている方が後ろ)に一部溶接跡がモールドされていますが, それ以外にはあまり溶接跡は着けられていません。

側面桁構造(K3, K25)にモールドされている蝶ネジ状の物は, 作業デッキを折りたたんだ時に倒れないように止めておくためのパーツです。 なぜ別パーツにしなかったのか不思議ですね。 それらしくディテール・アップするために削り落としておきます (あれっ,素組みにするはずじゃなかったっけ?!)。 作業デッキ側には当然これを受けるための金具がありますが, キットでは省略されてしまっています。

エンジン・ルーム上面です。 実車は風呂桶状に溶接組みした車体の上部に梁を差し渡し, その上に鋼板を天井(?)としてリベット(もしくはボルト)止めした構造になっているようです。 クビンカの実車はエンジン・ルーム上面は完全に取り払われて 中のエンジン,トランスミッションも失われてしまっており, このあたりはよくわからなくなっているので, 0.3mmのプラ板で適当に天板を作りました。

組立説明書では, 車体上部に手すりを含めた作業デッキや, 様々な小物を取り付けた後で車体下部と合体するように手順が指示されていますが, ごちゃごちゃ部品満載の状態でそのような作業をするのは, どう考えてもトラブルのもとになると思うので, さっさと車体上下を合わせてしまうことにします。 上下を合体すると写真矢印部分に継ぎ目ができます。 どうやら実車でも車体側面のこのあたりの位置で鋼板が接がれているように見えるので, 継ぎ目は消さずに控えめに溶接線を着けることにします。 前後のバルクヘッド部分には継ぎ目はなさそうなので消します(青矢印)。 なお車体上下の貼りあわせる際,ボスやガイドなど位置決めの頼りにできるものはありません。 補強を兼ねて見えないところで数箇所で裏打ちをします。 またフェンダー裏側には押し出しピン跡が多数あります。 完成後に見えにくい部分とは言え,何かの拍子に目に入ると気分が悪いので, 前後端に近い部分を中心に処理しました。

■9月27〜10月1日

更新が作業に追いついていません…

・車体上部
9月18, 19日にシャーシを組んでいたときには見落としていたのですが, サスペンションを上下するために車体両側に設置されているリンク(P1, P2, P5, P6, H4)のうち, 車体後方の一部のリンクが省略されてしまっています。 クビンカの実車で欠落していたためかと思われます。 適当に写真のように追加します。 車体最後部のバルクヘッドには, 本来リンクが貫通する穴が開いているのですが (矢印のあたり)面倒くさいので無視してしまいました。

なおこれらのリンク機構は, カールが自走状態でサスペンションが下がっている時と, 射撃状態や貨車輸送状態でサスペンションが上がっている場合でリンクが止まっている位置・ 姿勢が異なります。 キットのパーツは「自走状態でサスペンションが下がっている時」に相当するようです。

操縦席横の丸型ルーバーのパーツ(K23)には段がついてモールドされています。 (ドラゴンのキットでも同じような表現がなされているのですが) 本来この部分には段は存在せず,単純な円筒形状をしているのが正解だと思います。 一部の実車写真で段があるように見えるものがありますが, これはルーバー上面を塞ぐカバーを装着した場合であるようです。 突出した側を削って円筒面にしようとすると, 綺麗に加工できないとみっともないことになるので, 逆に凹んだ側に薄いプラ板(0.25mm)を巻きました。 もう少し厚いとルーバー基部(K5)のボルトのモールドと干渉してしまいそうです。

キットのノテック・ライトのパーツ(J20)はヘンな形なので使えません。 今回はMIG Productions のレジン・パーツ(MP35130 NOTEK LIGHT GERMAN LAMP)を使ってみました。 またライト・ガード(PE-B14)がエッチング・パーツで含まれているのはよいのですが, フェンダーに取り付ける基部の部分はフェンダー上のモールドになっているのはどうしたことでしょう。 削り落としてしまい,ライトガードは ロイヤル・モデルのエッチング・パーツを使いました。 実車ではノテック・ライトの配線はフェンダー下側にあり, コードは薄い板でカバーされています。 見えにくい部分なので今回は省略してしまいましたが作ってみても面白いでしょう。

車体左側(操縦席側)フェンダーのノテック・ライトの後ろにはホーンがあります。 キットでは省略されているので, 定番のタミヤのIV号戦車車外装備品セット(MM185)のパーツを使いました。 ホーンの配線はどうなっているのかはよくわからなかったのであっさり無視しました。

排気管はよくできており,口の部分には実車どおりにフランジが再現されています。 このフランジは車体側部に沿って後方まで伸びる長い排気管のパイプを連結するためのものです。 型抜きの関係上からか綺麗に真円に整形できていないのが残念です。 ただし排気管の延長部分を組みつけてしまえばあまり気にならないかもしれません。 (なおI号車の完成時と思われる写真では, まだ長い排気管がなかったせいかこのフランジもないように見えます。) 排気管をフェンダーに止める帯状の止め具も,よく考察してモールドされています。 (ドラゴンのキットではかなりおざなりな表現だった上に取り付け位置もヘンでした。) ただしインジェクション・パーツである以上, モールドには限界があるので,プラ・ペーパーやエッチング・パーツが使いたくなるところです。 ロイヤル・モデルのパーツを使ってみました。 他社から出ているドラゴンのキット用のエッチング・パーツに入っているこの部分のパーツは, ドラゴンの不正確なモールドをそのままエッチング・パーツに置き換えただけなので, 使ったとしてもちっとも正確にも精密にもなりません。

よく出来た排気管周りですが,唯一最大の欠点は「エンジン・ルームとつながっていない」ことです。 (まあ他社のキットでも,つながっていなかったり, 明らかに実車とは違うパイプの取り回しをしていたりするので, 他に比べて劣っていると言うわけではありません。) 良く見えない部分でもありますし, クビンカの実車の公表されている写真にもこのあたりがはっきりわかる物はないようなので, 適当にそれらしい位置で車内に引き込みました。 クビンカで実車取材をした方が写真を発表されることを期待したい部分の一つです。

■10月3〜10月10日

・車体上部
3分割してボルトもきちっとモールドされたアーム連結部分。 板状のパーツK34, K35の側面に段がついて成型されていますが, 金型のずれだと思って慌てて削らないようにします。 実車ではこの部分は鋼板2枚をボルトで合わせてあるからです。 なおこの連結部を車体に接着するとき, 嵌め合わせがきついため擦り合わせと位置の調整が必要になってしまうのですが, 最終的に貨車に搭載した状態に組むのであれば, アーム側の連結部との位置合わせをする必要があるので, 車体への接着は最後にまわしたほうが良いと思います。

操縦席部分です。 よく研究されており,ドラゴンのキットよりも良く出来ていると思います。 しかし操縦席内部の詳細についてはよくわからない部分もありますし, 現存する図面と実車写真の間に食い違いがあったりするため, 割り切ってこれで満足するか, 「心眼」で正確な操縦席を推測して追加工作するかの決断をしなければなりません。 まあぼちぼち適当に追加工作をしてみるつもりです。

特に問題なく組み立てられましたが,一部車体側のボス穴にバリが出ていたり, きつかったりする部分がありました。 また計器板のパーツ(K6)上の二つのメクラ蓋(?)のモールドが, 抜けの関係でだるかったので削り落として0.25mm厚のプラ板を貼りました。

なお,操縦席内部は何色に塗装されていたのか,という問題があります。 可能性としては

  1. 戦車内部と同じく白く塗られていた。
  2. ソフトスキン車両と同様に車体色と同じ色に塗られていた。

2の場合,カールの製造は1940〜41年なので当初はダーク・グレーということになりますが, 1943年以降はダーク・イエローに塗り替えられたのかどうか,も問題になります。

車体前部(操縦席のある方)には,ハッチや配線(?)のモールドがあります。 すごい,と言うほどではありませんが十分合格点をあげられる出来だと思います。 だた2つのハッチのハンドルなどはエッチング・パーツやプラ材を使ってディテール・アップすると, 一層見栄えがよくなるでしょう。 なおクビンカに残る車両では,前面向かって右側の小ハッチはロシア軍が捕獲後に再生したものなので, 形状やディテールは参考になりません。 戦時中の実車写真を観察する必要があります。 また赤矢印部の突起は 「謎の構造物」で書いたように, Nr.IIが米軍に捕獲されたときと, Nr.VI Ziuのワルシャワ蜂起時とロシア軍による捕獲後クビンカに保存されている現在の状態, でしか確認できないので, その他の車両や戦線を前提として組むなら削り落としてしまっていいのではないかと思います (他の車両では絶対に存在しないとも断言しきれない面もありますが)。

以下続く。


■メーカー・サイト■

Trumpeter Model
更新の頻度はあまり高くない

Interallied
日本国内代理店


■レビュー,製作記事■
  1. http://www.perthmilitarymodelling.com/reviews/vehicles/trumpeter/tr00209.htm
    オーストラリアの Perth Military Modelling Site に掲載のレビュー記事。 ドラゴンのキットとの比較も行っている。

  2. http://www.perthmilitarymodelling.com/reviews/vehicles/trumpeter/tr00208.htm
    同じく Perth Military Modelling Site 掲載の8転輪シャーシ・キットのレビュー記事。

  3. http://www.cybermodeler.com/hobby/reviews/kit/kit_tru_morser.shtml
    Cybermodeler Online に掲載のレビュー記事。

  4. Master Modelers, Vol.19, 芸文社, 2004.
    11転輪シャーシ版キットの製作記事。 貨車搭載状態に組んであり,このキットの迫力を良く伝えている。 細部の追加工作もされており参考になるが, なぜか本体のサスペンションを「自走状態」に組んでしまっているという重大な間違いがある。 この点は組立説明書ではきちんと説明されているのにどうしたことだろうか。 また組立説明書の不備のせいで, 貨車のジャッキの選択パーツも間違ってしまっている (「組立説明書の補足」の項を参照のこと)。

  5. モデルアート, No.674, 2月号, 2005.
    11転輪シャーシ版キットの製作記事。 貨車搭載状態に組んであるが, Master Modelersの記事と同様, 組立説明書の不備のせいで貨車のジャッキの選択パーツを間違ってしまっている (「組立説明書の補足」の項を参照のこと)。

  6. http://www.panzer-modell.de/berichte/karl-2/karl.htm
    ドイツのサイト Panzer modellbauに発表されたレビュー記事。 前面グレー塗装のEva。

  7. Xtreme Modelling, Issue 23, Xtreme Modelling Publications, 2007
    スペインの模型誌。 11転輪版キットを, 1945年春の54cm砲搭載のLokiの貨車輸送状態で組んだ作品。 砲身のライフリングの再現,履帯を固定するターン・バックルの自作などを行っている。 履帯はトランペッターのキットのベルト式のものを下半分に, ドラゴンのパーツに手を加えたものを上半分に使っており興味深い。 貨車のジャッキには正しいパーツが使われている。

  8. Steel Art, No.48, Auriga Publishing International, December, 2007.
    イタリアの模型誌。 11転輪版キットの作例。 セバストポリ戦のために貨車輸送中の状態を想定した情景作品となっている。 残念ながら写真の枚数が少ないので見ごたえに乏しい。 貨車のジャッキは正しいパーツが選択されている。


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