■ドラゴン 1/35キット■

6179 60cm Moerser "Karl" Geraet 040
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6181 54cm Moerser "Loki" Geraet 041
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6179X 60cm Moerser "Karl" Geraet 040
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9129 54cm Moerser "Loki" Geraet 041
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2003年1月の製品発表で日本(と世界)のAFV模型界を騒然とさせた(?)
キットとそのバリエーションである。
ネット上では出来についていろいろ言われたが,
これだけのものをインジェクション・キットとして製品化したことは評価されるべきである。
何もうるさいことを言わなければパカパカと組み上げることができる。
全体の部品構成が
CMK/エアモデルのレジン・キット
に似た部分が多く,
コピーしたとは言わないまでも参考にした部分は多いのだろう。
そのせいでCMK/エアモデルのキットで間違っていた部分まで継承して
しまっているところがあるのが残念。
細部のディテールが省略されている部分が多いため,
資料などを参考に作り込むことで良いものに仕上がると思いたい。
2011年5月現在,4種のキットが出ている。
各キットの特徴は以下の通り。
- 6179 60cm Moerser "Karl" Geraet 040
最初に発売されたキット。
60cm砲身のGeraet 040の射撃状態を再現している。
初回限定でアルミ製砲弾が付属していた。
- 6181 54cm Moerser "Loki" Geraet 041
6179発売のわずか数ヵ月後に発売された54cm砲身バージョン。
6179との違いは基本的には砲身と,
サスペンションが走行状態にモールドされたシャーシであるが,
その他に6179で不足していたディテールを補うように一部の部品が改修されたり,
追加されたりしている。
アルミ砲弾は付いていないが,新たにエッチング・パーツが入った。
なおこのキットの箱絵には「射撃状態」のカールが描かれているが,
キットに含まれているのはあくまで「走行状態」のパーツであり,紛らわしい。
- 6179X 60cm Moerser "Karl" Geraet 040
2004年夏に「限定版」と称して発売された。
シャーシが射撃状態と走行状態の2個入っているという,今まで聞いた事のない部品構成を持つキット。
その他のインジェクション・パーツは,
砲身が60cmであることなどを除けば6181と同じである。
エッチング・パーツは6181と同じ物に加え,もう一枚入っている。
また限定版の特典として,
砲兵フィギュアと初版の6179と同じアルミ製砲弾が付いている。
6181発売時点で部品改修(金型改修)が行われているので,
今後「限定版」でない普通の60cm砲身バージョンが再販されるにしても,
内容は初版の6179と同じになることはなく,
限定版の6179Xに近いものになると考えられる。
すなわちこのキットは実質的に6179の改訂版であり,
ドラゴンは発売わずか一年で新製品を手直ししたことになる。
(これを良心的と考えるか,詰めが甘いと評するかは意見が分かれるところだろう。)
- 9129 54cm Moerser "Loki" Geraet 041
2011年春に発売された最新キット。
サイバーホビー/ドラゴンのオレンジ・ボックス・シリーズは,
既存製品にフィギュアや新規パーツを追加し,
かつ価格は抑えた「お得な」パッケージ,
というコンセプトで企画されている。
このキットでも6181に砲兵フィギュアを加え,
さらにシャーシは走行状態のものだけでなく,
射撃状態のものも同梱した内容となっている。
つまり6179の豪華版が6179Xであったように,
6181の豪華版として9129を発売したようである。
キット間の相違点の詳細については,以下のページにまとめたのでそちらを参照のこと。
●60cm砲身バージョン(6179)と54cm砲身バージョン(6181)の違い
●限定版60cm砲身バージョン(6179X),オレンジ・ボックス版54cm砲身バージョン(9129)
■ディテール・アップのポイント
現状のキットに大手術にならない範囲で手を入れるとすれば,
たとえば下記のようなポイントがあるだろう。
なお3種類のキットのうち特定の物のみに当てはまる事項については
「(6179)」のようにキット番号で示した。
- 車体前面
- ノーテック・ライト(2個)をフェンダー上に追加。
6181, 6179X, 9129のキットにはまがりなりにもパーツがあるが,
とても使い物にならない。
- ホーンをフェンダー上に追加。
- ハシゴのディテール。
特に折りたたむ支点部分。
- シャックル受け部のディテール。
- パイプ,配線類。
- 車体後面
- 間隔表示灯,尾灯追加。
- OVM類のディテールと止め具。
6181, 6179X, 9129では止め具のエッチング・パーツがある。
6179では各社のエッチング・パーツ・セット
を利用しても良いだろう。
- ハシゴのディテール。
特に折りたたむ支点部分。
ロイヤル・モデルのディテール・アップ・セット
にはこの部分のパーツがある。
ハシゴ上部の湾曲部は6181, 6179X, 9129では正しい形状になっているが,
6179の形状は今ひとつ。
- 下部のRが足りないのを修正。
- 下面にある半円筒状の大きな突起の追加。
- シャックル受け部のディテール。
- パイプ類,ボルト,溶接跡。
- 車体側面
- 排気管止め具のディテール。
各社のエッチング・パーツ・セット
にはこのパーツを含んでいるが,
正確に再現しているのはロイヤル・モデルの製品のみである。
- フェンダーの上下をつなぐ支柱(?)のディテール。
- 各部OVM類のディテールと止め具。
- 折りたたみ式の作業デッキのディテール。ヒンジ部。
各社のエッチング・セット
の中にはこの部分のパーツを含んでいるものもある。
- 折りたたみ式の手すり。
- 貨車輸送時のための大型のフック部分の形状修正とディテール。
(車体各部で大きさと形状が異なる。)
- 車体上面
- ラジエータ・グリル(?)の修正。
6181, 6179X, 9129にはエッチング・パーツがついているが,
これは正確ではないと思われる。
- 砲架
- リベット追加。
6181, 6179X, 9129では標準のエッチング・パーツでかなりのリベットやボルトをまかなえる。
- 砲耳部分の形状修正。
- 変に一体整形されているロッド類の修正。
- 小物の機器類のディテール。
- 照準器(6179)。
6179のパーツはお粗末である。
6181, 6179X, 9129のパーツも悪くはないが,
欲を言うなら他のもっと出来の良いキットから流用しても良いかもしれない。
- 砲身・駐退器
- 表面の配線(?)など。
- 駐退器のロッドとナット類などのディテール。
6181, 6179X, 9129では改良されている部分もあるが…
- 砲身を上下するためのギヤの形状。
- 鋳造部分の表現。
- 表面の段差,筋彫りなど。
- ライフリングの再現(6179)。
キットのモールドは砲身に対して平行になってしまっている。
6179Xにはライフリングのエッチング・パーツが含まれている。
また各社のエッチング・セット
にもライフリングのパーツが含まれているものが多い。
アーモの砲身
に換える,という手もある。
- 小物の機器類の追加。
- 540mm砲身の砲尾ブロックの形状修正(6181, 9129)。
上部にカウンター・ウェイトか何かと思われるような追加部分があるがキットでは無視されている。
- 砲尾ブロックの面取り。実車写真を参考に面取りをすると引き立つ。
- 砲弾装填トレイ
- ローラー部分のディテール。
- 砲架に止める金具部分。
- 足回り
- アイドラー・ホイールの印象が今ひとつ。
- キャタピラの肉抜き穴。
■大改造?
覚悟を決めて大幅に手を入れるなら...
- 車体側面の作業デッキ
操縦席横など車体前方の折りたたみ式でない部分は,
キットのように車体上面と同じ高さではなく一段低い位置についている。
- 車体側面の張り出し
操縦席横のラジエータ・グリル(?)の基部は車体横に張り出している。
キットは張り出しがなく,グリルは車体内側にぴったり収まるように表現されてしまっている。
- 砲架
車体内部に隠れている部分の形状や寸法がおかしい。
正確に直したければ部分的に修正するより全面的に自作したほうがはやそう。
ただしそれにともなって車体内側を削るなどしないと
うまく砲架を車体に収められなくなるかもしれない。
- 足回り
左右対称となってしまっている転輪配置の修正。
ついでにダンパーの形状が今ひとつなのを修正。
- 砲弾装填トレイ
形状がおかしいので正確に再現するならほとんど全部作り直す。
6179, 6179X,6181, 9129すべてのキットで同じ形状になっているが,
実車では600mm砲用と540mm砲用では細部が異なる。
キットはそのどちらともつかない形状になってしまっている。
ロイヤル・モデルのディテールアップ・セット
には600mm砲用の装弾トレイのかなり詳細なパーツがあり,
これを利用するのが手軽な解決方法。
- 車体内部
キットでは車体内部は一切表現されていない。
実車がどのようになっているのか資料も少なく不明な点も多いが,
少なくともクビンカの実車の取材写真などが発表されればある程度は再現可能と思われる。
資料[32]
[37]
などに載っている図版によれば,
車体中央の「風呂桶」部分内部には,
トーション・バーや駐退器などがあって上から見えるように思えるが,
一説には「床」が張ってあるとの話もあって実際のところは不明である。
トランペッターのキットや
ミニ・アートのキット
はそれらしく車体内部を表現しているので,
それを真似る手もある。
■メーカー・サイト■
Dragon Models
■レビュー,製作記事■
- モデルアート, No.488, 4月号, 1997.
モデルアート, No.490, 5月号, 1997.
モデルアート, No.492, 6月号, 1997.
モデルアート, No.496, 8月号, 1997.
モデルアート, No.498, 9月号, 1997.
モデルアート, No.504, 12月号, 1997.
CMK 1/35キットを徹底的にディテール・アップした製作記であるが,
ドラゴンのキットはCMK/エアモデルのキットと類似点が多いので参考になる。
-
http://www.perthmilitarymodelling.com/reviews/vehicles/dragon/dr6179.htm
オーストラリアの
Perth Military Modelling Site
掲載のレビュー記事。内容はちょっと辛口。
-
http://www.perthmilitarymodelling.com/reviews/vehicles/dragon/dr6181.htm
同じく
Perth Military Modelling Site
に掲載の54cm砲身キット(6181)のレビュー記事。
-
Karl Morser Review by Cookie Sewell (Dragon/DML 1/35)
http://misc.prohosting.com/armourreviews/karlreviewcs_1.htm
Karl Morser Review by Steve Palffy (Dragon/DML 1/35)
http://misc.prohosting.com/armourreviews/karlreviewsp_1.htm
米国のオンライン・マガジン
HyperScaleに掲載のキット評と製作記事。
- ホビージャパン, No.408, 6月号, 2003.
青木周太郎氏による,各部のディテール・アップを施した作例。
- モデルアート, No.634, 6月号, 2003.
安田征策氏による作例。
クビンカの実車写真(4ページに渡って紹介されている)
に基づいて細部にいろいろ手を入れており非常に参考になる。
(ただし,
クビンカの実車の現在の状態が戦時中の姿と同じであるかどうかについては検討が必要。
ソ連軍が移送後に不正確に再現したり,補修した部分があるようなのである。)
- Master Modelers, Vol.9, 2003.
ホビージャパン,モデルアートの作例に比べると少しあっさりしているが,
こちらも結構手が入った作例。
手を入れるポイントの違いが興味深い。
-
http://www.panzer-modell.de/berichte/karl-6/karl.htm
ドイツのサイト
Panzer modellbauに発表されたレビュー記事。
1944年ワルシャワ蜂起の際のZiu。
3色迷彩が美しい。
-
http://www.panzer-modell.de/berichte/karl-4/karl.htm
同じく
Panzer modellbauに発表された54cm砲身キット(6181)のレビュー記事。
1944年のThor。
-
http://users.ejnet.ne.jp/~enoki/sub1-5.html
「和」氏によるドラゴン1/35キットの製作記。
2003年9月現在まだ製作途中のようであるが,
丁寧に各部に手を入れているようで完成が楽しみ。
- AFV Modeller,
No.12, September/October, 2003.
ドラゴンの1/35キットの作例。
かなり手が加えられている。
また8ページにわたるクビンカに残る車両の写真と解説記事は大変参考になる。
-
Military Miniatures in Review,
No.33, Ampersand Publishing, 2003.
ドラゴン1/35キットの作例。
- Master Modelers, Vol.12, 2003.
ドラゴン1/35 540mm Geraet 041の作例と
メタル・トループス1/144レジン・キットのレビュー記事。
さらにカールの塗装例の図版5葉。
- Military Modelling,
Vol.33, No.13, November, 2003.
ドラゴンの1/35キットの作例。
これもまたこまごまと手が加えられている。
クビンカに残る車両の写真が2ページ分掲載されていて資料価値もある。
- Model Graphix,
No.232, 3月号, 大日本絵画, 2004.
ドラゴン1/35キット(60cm砲バージョン)の作例。
このキットはサスペンションが解除された射撃状態になっているのだが,
それをあえて改造し,自走状態として作成しているのが珍しい。
- ミリタリー・モデリング・マニュアル,
No.16, ホビージャパン, 2004.
ホビージャパン誌2003年6月号,8月号に掲載されたカールとIV号弾薬運搬車を使ったディオラマ。
- Steel Art,
No.5, Auriga Publishing International, 2003.
イタリアの模型誌。
ドラゴン1/35キット(60cm砲バージョン)の作例とクビンカの実車写真6ページ。
実車写真はThomas Anderson氏の提供によるもので
AFV Modeller誌[11]に掲載されたものと同じものも多いが,
こちらでしか見られない写真も数枚ある。
- Steel Masters Specials,
No.22, Histoire & Collections, 2004.
エッチング・パーツとアーモのアルミ砲身でディテール・アップし,
ワルシャワ蜂起時のZiuを再現した作例。
フランス語の雑誌のため詳細ははっきりしないが,
使ったキットは6181 54cm Moerser "Loki" Geraet 041か
6179X 60cm Moerser "Karl" Geraet 040(特別版)のようである。
実車写真数枚を載せた実車解説も4ページほどある。
- Tamia Model Magazine International,
No.116, June, ADH Publishing, 2005.
6181 54cm Moerser "Loki" Geraet 041の作例。
エデュアルドのエッチングなどを使い,かなり手を加えているが,
本文には「直すところが多くてだんだんやる気が失せた」と書かれていたりもする。
- Scale Models International,
Vol.35, Issue 413, August, SAM Publications, 2005.
ドラゴンの1/35キットのレビュー記事。
シャーシが2個入った「特別版(6179X)」を取り上げているのが珍しい。
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