■トランペッター 1/144キット■00101: Moerser Karl-Geraet 040 インジェクション・キットとしては2社目, レジン・キットを含めると4社目の1/144カールのキットである。 11転輪タイプのシャーシの60cm砲身装備車両の自走状態をモデル化している。 サスペンションと砲架は走行状態で固定した形でモールドされているので, 射撃状態に組むことはできない。 操縦席は「蓋」がされた状態でモールドされており, 操縦席や計器板は再現されていないのは, 走行状態のキットとしては不自然である。 部品点数32点。 材質はすべてスチロールで,PVCなどの軟質素材やエッチング・パーツなどはない。 一部省略されたり簡略化されている部分はあるものの, 全体にディテールは豊富である。 シャーシ,足回り他数点の部品の成型にはスライド金型を用い, 表面のディテールをあまり犠牲にせずに部品点数を抑えようとしている。 シャープでカッチリしたモールドと少々だるい部分が混在しているが, 全体的に見れば十分鑑賞に堪える出来であると思う。 ただし一部バリが出ているところがあるのは残念。 手すりや梯子などは細くて非常に繊細なため, 切り出しと整形には注意が必要である。 この点ドラゴンの1/144キット には組み立てやすさに配慮した工夫が見られたが, トランペッターはまだそこまで神経が行き届かないようだ。 考証とか正確さの面では, 残念ながら少し期待を裏切られたと言わざるをえない。 トランペッターは1/35キット では気合の入った設計を見せてくれただけに評価が辛くなってしまうのだが, どうも1/35キットの設計時の資産があまり生かされていないように思える。 なぜ1/35で正しく再現されていた部分が1/144では誤った形状になってしまうのだろうか。 その上,先行した(他スケールを含む)他社キットと同じところで間違っているのは全く解せない。 全体としてみれば,このキットは特定の他社キットのコピーなどではないのだが, 同じ誤りをしているということは,他社キットを参照したり参考にしたと考えざるを得ないだろう。 特に, 車体前方(操縦手席側)左右の作業デッキがこのキットでは (これまでの他社の多くのキットと同様に) 車体上面と同じ高さについてしまっているのはいただけない。 ところでキットの箱絵は砲身を大仰角にした射撃状態のイラストになっている。 箱側面のイラストや組立説明書はキットの内容を正しく反映して走行状態で描かれているし, これまでの他社のカールにも箱絵の誤りはあったとは言え, 消費者の誤解を招きやすいパッケージングは好ましいとは言えない。
デカールはNr.III,Nr.IV Thor, Nr.V Loki,Nr.VI Ziuの4種類。
当初トランペッターはこのキットを「Moerser Karl-Geraet 040/041 (Initial Version)」 という名称でアナウンスしていたため, 足回りは8転輪タイプで砲身は60cm砲と54cm砲の選択式になるのかと思われたのだが, 結局発売されたのものは,始めのアナウンスとは異なる,上記のような内容であった。 あるいは今後いくつかバリエーションが発売になるのだろうか。
■製作記−素組み編■とりあえず,素組みで作ってみました。 ひどく組みにくいところはありませんでしたが, バリ取りなどの整形,部品の擦り合わせが必要でした。 特に車体上下の合わせ,砲本体,尾栓ブロックは, よく調整しないとうまく嵌合しなかったり隙間ができたりします。 また結構小さい部品もあるので面倒です。 レジン・キットを組むよりは楽ですが, ドラゴンのパンツァー・コープ・シリーズを作るよりも手間がかかると思います。 注意したつもりでしたが,手すりや排気管を折ってしまい修復しました。 切り出しや湯口,パーティング・ラインの処理には十分注意しましょう:-)
全体的に見て, トランペッターはストレートに「1/144の精密なスケール・モデル」を設計しようとしたな, という印象を受けます。 かなり小さい部品もある上, なんと一箇所「0.3mmの丸棒で自作せよ」という, ちょっとマスマーケット向けとは思えないような指示があったりして驚きます。 しかしその一方であっさり省略されているディテールもあって, 別部品で表現するのか,一体成型にするのか,部品点数削減のために省略するのか, 技術的な制約で省略するのか,そのあたりの設計方針が一貫していないようにも感じました。 ドラゴンのパンツァー・コープ・シリーズが, マイクロ・アーマーという完成品販売を背景にした組み立てキットであるために, かなり組み立ての手間の削減に配慮していて 「精密なスケール・モデル」とは異なるフィロソフィーで設計されているように思えるのとは 対照的でした。 しかし,細かいモールドには好感が持てるので, じっくり手を入れようとするには,やりがいのある素材だと思います。
■4社キット比較■アトリエ・インフィニティ, メタル・トループス, ドラゴンの1/144キットと並べて比べてみました。 メタル・トループスのキットは自走状態のもの(MT-8008)で, 部品の擦り合わせとヒケ,隙間のパテ埋めをした程度で, ディテール・アップなどは全く施しておらず未塗装状態。 アトリエ・インフィニティのキットは, 走行状態の8転輪タイプのGeraet 040(キット番号G-019)で, 大型の丸い昇降ハンドルを自作した以外は素組み。 グレーの単色塗装をし,墨入れ,ドライ・ブラシ,ハイライトなどを入れてあります。 ドラゴンのキットは自走状態の11転輪タイプ(14508)で,素組み,未塗装。 トランペッターのものも未塗装です。
4つのキットで寸法やプロポーションが結構違います。 メタル・トループスのキットは全体にハセガワの1/72キット を縮小したようなイメージがあり, 他に比べて全長が長く砲周りのボリュームが強調されていて背が高い, (レジンでは成型が難しいと思われる)手すり,梯子モールドを除けば, モールドがシャープ,という特徴があります。 ドラゴン製品は, 表面に一体成型されたディテールが型抜きの関係で不正確で物足りない部分がありますが, 雰囲気は良いです。 ドラゴンのプラスチックは透明成分が多いのか, 塗装前の状態ではモールドが甘く見えるという特性があるので, この写真の状態では少し見た目で損しています。 トランペッターの製品は,こうして並べてみると (不満な点もあり完璧とは言えないのですが,この中では)ベストでしょう。 1/35のキットに比べて間違いが目立ってしまいますが, 素組みでも一番印象が良いですし, ディテールに手を入れることを考えるならドラゴンよりトランペッターをベースにした方が よい結果が得られそうです。
■塗装済み完成品:Easy Modelグランド・アーマー・シリーズ■
各社が完成品模型の販売を手がける中, トランペッターもEasy Modelというブランド名で航空機とAFVの完成品販売を行っている。 AFVは1/72と1/144の二つのスケールの製品を出しているが, 2006年夏1/144のカールが2種類ラインナップに加わった。
ツィウが3色迷彩,オーデンはグレー単色塗装で, いずれもキット版そのままの内容であるので,どちらも走行状態のモデルである。 砲弾などの付属品は特にない。 砲身はこの仰角で固定されている。
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Created: Tuesday, February 8, 2005. Last Update: |