■ドラゴン 1/144キット■
カルトグラフ製デカール,エッチング・パーツ,安価, などをセールス・ポイントにしたドラゴンの「パンツァーコープ」シリーズに, カール関連製品が4点加わった。 このシリーズは2車種が1パックになった販売形態のため, それぞれ砲兵や観測戦車との組み合わせになっている。 (ただしカールの配備された砲兵中隊には観測戦車は配備されていなかったはず…) なぜIV号弾薬運搬車がないのかという不満はあるにしても, アトリエ・インフィニティや メタル・トループスのレジン製キットに比べてはるかに安価であるので 「カール本体のみ」をこの価格で買えたと思って諦めるか。 ただしIII号砲兵観測車, パンター砲兵観測車のみが欲しい人にとっては腹の虫は治まらないかもしれない。
◆製品内容◆4つのパッケージのカールは,砲身とサスペンション,それにプラスチックの成型色に違いがある。
専用輸送貨車に搭載した状態やクレマイヤー・トレーラーに積載した状態は, キットのパーツのままでは作ることはできない。 各パッケージにそれぞれ"Loki", "Odin"などの特定のニックネームを付け, パッケージ間の区別をつけやすいようになっているが, デカールはすべてのニックネームが一つのシートに印刷された同じものが入っている。 したがって購入する際にはパッケージに印刷されたニックネームに関係なく (惑わされることなく),製作したい形態になっているキットを買えばよい。 4種類もキットがあるので,売れ行きに差が出来て入手が難しいものができる可能性もある。 一応14501と14502の二つか,又は14507と14508の二つのキットが手元にあれば, 砲身とサスペンションのバリエーションのパーツは一通り揃うので, 成型色さえ気にしなければ 二つのキットのパーツを使って4種類の形態のうちどれでも好きなものを1両製作することは可能である。 ただしその場合あと1両分のパーツが余ることになる。 下の写真は14502: 60cm Moeser "Odin" + Artillery Crewのパーツである。
カールの部品点数はどのパッケージでも26点。 このうち足回りの部品2点と, 砲尾ブロック,およびエンジン・コンパートメント上面部がPVC製で, 残りのパーツはABS樹脂となっている (PVC部品の接着は瞬間接着剤が必要となるが, ABS部品についてはスチレン成分が多いのか,通常のスチロール樹脂用の接着剤でOKのようだ)。 部品点数はこのシリーズの製品としては多いほうだろうが, この数でカールをそれなりに表現するためにかなり部品分割に工夫し, またスライド金型などを用いてうまく製品化されていると思う。 車体左右の手すりもパーツ化されており,十分細くて素晴らしい。 車体前後の梯子は車体と一体成型である。 細部のモールドには「シャープ」とは言いかねる部分もあるが,まあ許容範囲だろう。 インジェクションのため型抜きの関係で形状がおかしかったり, もの足りなかったりする部分もある。 どこまで手を入れるか悩ましい。 容易に想像できるように, ドラゴンは1/35の同社のキット を設計したときの資産を活用しているようで, 全体の形状,各部の表現などは1/35キットに準じていると思われる部分が多い。 このため同社の1/35キットの欠点も継承してしまっている。
エッチング・パーツは9点が含まれている。 砲身のライフリング,グリルなどである。 しかし砲身パーツ内側にはきちんとライフルがモールドされているので「なんで」と感じてしまう。 このシリーズはエッチングが入っているのが「売り」のひとつになっているのだが, 果たして本当に必要なのか,単に「エッチング・パーツ付き」と表示したいだけなのではないのか, とちょっと疑問でもある。
注2:部隊マークについては, キットのデカールは一応それらしく出来ているが, 正確な意匠や色は不明である。
14501と14502には,このシリーズとしては初めてフィギュアが12体含まれている。 ただしポーズとしては6種類で,各ポーズが2体ずつになっている。 結構よい出来である。 ポーズが1/35の"6201 German Artillery Crew"のキットと同じにしてあるのが面白い。 カール1門の運用には19名必要だった(1945年2月頃からは16名)ので, もっと付けてくれてもよかったと思う。 小銃などの武器は含まれていないので歩兵に転用するには武器のスクラッチなどが必要になるが, 1/144の他の製品と組み合わせるなどの応用も一応可能だろう。 成型色は塗装してしまえば関係ないと言えば関係ないが, "Loki", "Thor"が54cm砲身を装備して形式上Geraet 041となったのは1944年なので, 14507の成型色をダーク・グリーンにした意図が理解できない。 なおドラゴンの2004年版カタログでは,パンツァーコープの新製品として,
◆間違い探し◆ドラゴンのキットの組立説明書には大抵何か間違いがある, という「悪しき伝統」がある。 今回の4つのキットの場合,致命的な間違いは砲架の取り付け位置である。 カールは,自走状態のときには, 重心が車体中央付近になるように砲架全体が後退した位置に固定されている。 下の写真は手前のグレーの車体がキット14502で射撃状態, 奥のダーク・イエローの車体が14508で走行状態に組んである。 砲架の位置が違うことがわかると思う。 4つのキットの組立説明書と箱絵は全て砲架が射撃状態の位置になっているので, 14501, 14508のキットを作る場合には注意。
その他「マーキソグ」なんて表記もあるが…これは「お約束」か。
◆3社キット比較◆1/144のキットとしては後発だけに, 先行した他社キットとの比較は避けられない。 アトリエ・インフィニティや メタル・トループスのキットと並べて比べてみた。 メタル・トループスのキットは, 部品の擦り合わせとヒケ,隙間のパテ埋めをした程度で, ディテール・アップなどは全く施しておらず未塗装状態である。 アトリエ・インフィニティのキットは, 走行状態の8転輪タイプのGeraet 040(キット番号G-019)で, 大型の丸い昇降ハンドルを自作した以外は素組み。 グレーの単色をし,墨入れ,ドライ・ブラシ,ハイライトなどを入れてある。 ドラゴンのキットは14508で,素組み,未塗装の状態である。 (未塗装のものと塗装したものを並べるのは,厳密な比較とは言えないかもしれないが…)
いずれも左からメタル・トループス,アトリエ・インフィニティ,ドラゴン。 3つのキットで微妙に寸法やプロポーションが異なることがわかる。 メタル・トループスのキットは全体にハセガワ の1/72キットを縮小したようなイメージがあり, 他の2つに比べて全長が長く, 砲周りのボリュームが強調されていて背が高いシルエットになっている。 (アトリエ・インフィニティとドラゴンのキットは走行状態であるのに対して, メタル・トループスのキットのみがサスペンションを解除し地面に腹をつけた状態であるにもかかわらず, 全高が一番高い。) ドラゴン製品は, 表面に一体成型されたディテールが型抜きの関係で不正確で物足りない部分があることがよくわかる。 こうした部分をインジェクションで正確に再現しようとするなら別部品にするしかないわけで, 部品点数を抑えるために妥協したのだろう。 モールドのシャープさではメタル・トループスに軍配があがると思う。 しかしその一方でドラゴンのキットの組み立てやすさはこの3つの中で一番である。 車体前面部品(操縦手席側の面)や装弾トレイの取り付け部分で, 若干の擦り合わせが必要であったりするが, 全体に部品同士の合いは抜群でピシッと位置決めできる。 また手すりがきちんと部品化され,歪みもなくちゃんと組み付けられるなど, 総合的に見て万人向けのキットと言えるだろう。 細部に不満のある部分はコツコツ手を入れてやることにしよう。
◆製作記◆60cm砲身のGeraet 040で射撃状態の14502を組んでみました。 塗装は3色迷彩にして1944年夏の"Ziu"にするつもりです。 しゃかりきになってディテール・アップすることもないと思いましたが, 一部自己満足のために手を加えてみました。
何台か作って塗装とマーキングのバリエーションを楽しんでみました: 塗装・マーキングのバリエーション
■CAN.DOジャイアント・アーマー・シリーズ■![]() 20027: The Super-Heavy Self-Propelled Mortar Geraet 040/041 「マイクロアーマー」のシリーズ名称でドラゴン社製1/144塗装済み完成品を販売している 童友社から, 「ジャイアントアーマー」との名称で大型アイテムのシリーズが発表となり, その第2弾としてカール4種が発売された。 上記のパンツァー・コープのカール4車種をそのまま組んだものである。 箱の中身がわからない形で販売されるマイクロアーマーとは違って, 中が見えるパッケージなので購入時に欲しいものを選ぶことが可能である。 (余談だが小生は,マイクロアーマーを始めとしたミニチュア完成品が, ブラインド・ボックスやシークレット・アイテムなどでコレクション熱を煽り, 欲しい物を手に入れたりバリエーションを揃えるために散財を強いる商法には感心しない。) 透明アクリル製ディスプレイ・ケースに草原風のベースと背景の書き割り(!?)がついている。 車体とベースは固定されていないから,本体のみを取り出して並べることも可能である。 ベースには履帯による走行跡が(塗装で)表現されており,芸が細かいと思わせる。 砲身は上下動する。 パンツァー・コープのキットと同様に"Loki"と"Ziu"は自走状態, "Odin"と"Thor"は射撃状態になっている。 しかし砲架はどれも前進した射撃状態の位置で固定されてしまっており, 自走状態の"Loki"と"Ziu"では間違った形態なのは残念である。
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