■アトリエ・インフィニティー 1/144キット■
アトリエ・インフィニティーからは, カールの1/144レジン・キットが実に9種類も発売されている。 このうちG-005〜G-007が最初にリリースされ, 他の6種類はあとから追加になった製品である。
G-005, G-016, G-019は「試作型」と言っているが,8転輪車台のI号砲,II号砲に相当する。 その他は11転輪車台となっている。 またカールの相棒である弾薬運搬車のキットも2種類発売している。
同社は塗装済み完成品も多種類販売している。 詳細については メーカー・サイトを参照のこと。 以下ではこれらのキットを 射撃状態, 自走状態, 鉄道輸送状態, 弾薬運搬車 のグループに分類して紹介する。 キット間の相違については 付録:バリエーション早見表 にも要約を掲載してある。 ■射撃状態モデル:G-005, G-006, G-007■※射撃状態モデルに関する記述は2003年春に購入したキットに基づいている。 2003年10月にG-016〜G-021が発売になった時点でG-005〜G-007に関しても内容の改訂・変更があった可能性があるので注意。 G-005, G-006, G-007の違いは足回りと砲身の部品のみである。 総部品点数30点あまり。 排気管やL字型のハンドルなど非常に細い部品も多い。 車体前後の梯子などの各部のディテールは, うまく大型部品に一体成型されているなど, 部品分割としては適当ではないだろうか。 なおカールの特徴である手すりは省かれているので, 真鍮線などで自作する必要がある。 形状的には, サスペンションが上がっていて射撃状態に相当するのに, 砲架が輸送時,自走時のように後座した状態になっており, 全体としては厳密には射撃状態としては正しくない中途半端 な事になってしまっていて残念である。 実車がこのような状態になっているのは, 自走して発射位置まで移動後, 発射姿勢をとるためにサスペンションを解除して, これから砲架を発射可能状態にしようとする瞬間のみであろう。 また車体左右の作業用デッキ部分が車体上面と同じ高さにある, 円筒形のグリルの車体側面への張り出しがない, という ハセガワのキット や CMK, ドラゴン のキットなどと同様の欠点もあるが, この部分はうまく別部品になって成型されているので修正は可能であろう。 その一方, 11転輪シャーシのキット(G-006, G-007)では, 車体左右で配置が対称になっていない転輪配置が正しく表現されていることは特筆に値する。 ただし8転輪シャーシのキット(G-005)では転輪を左右対称に配置するという誤りを犯している。 下の写真はG-007の物である。 写真ではバリや気泡が結構あるように思えるが, ミニスケールのキットであるため目立っているだけで, 実際には大したことはない。 ただし足回りの転輪とキャタピラ部分の気泡の処理は面倒そうである。
◆射撃状態キットG-007製作記◆さかさかっと組んでみました。 できてみると足回りのモールドも細かくて好感が持てます (ただし気泡と欠けなどが悩ましいのですが)。 マーキングはまだしていませんが, 1944年夏のIV号砲Thorにするつもりです (手書きでうまく書き込めるかなあ)。 塗装は,レッド・ブラウンで下塗りをしたあと,「かなり」明るめに三色で迷彩, 普段よりもさらに薄くした黒+茶でウォッシングして, バフでドライブラシしました。 キャタピラはハル・レッド+フラット・ブラックを塗った後, 鉛筆の粉をこすり着けてあります。
砲架位置の修正や, デッキの取り付け位置の修正はしていません(根性なし!)。 そのかわり次のようなディテール・アップを試みました。
こうして完成したものを眺めてみると, もうちょっと気を使えばよかったと反省すべき点もあります。
組んでみて気が付いたのは以下の2点。
■走行状態モデル:G-019, G-020, G-021■![]() G-019 ゲレート040 600ミリ試作型(自走時) 射撃状態のモデル G-005, G-006, G-007を元に足回りと作業デッキ部分を改定したキット, かと思ったら,どうやら車体部分の原型も一部改良されているようで, 写真のように射撃状態のキットとはパーツ構成に違いがある。 変更点は以下のとおり。
※走行状態のキットの発売に伴い射撃状態のモデルについても上記と同様の変更が行われた可能性がある。 入手したキットには気泡はほとんどなかったがバリはかなりあった。 残念ながら組み立て説明書にはかなりの混乱があり, 複数の異なる部品に同じ部品番号が割り振られていたりするので注意が必要である。 サスペンションは下げられ,作業デッキは折りたたまれており, 走行状態として正しい形態になっている。 11転輪車台(G-020, G-021)でも8転輪車台(G-019) でも転輪配置は左右非対称に正しく再現されている。 射撃状態のキットではカールの特徴と言って良い車体左右の手すりが省略されていたが, 走行状態のキットでは作業デッキと一緒に折りたたまれた状態でモールドされている。 手すりの支柱や止め具部分もそれらしく出来ており, 十分以上の精密感があって全体の雰囲気を良くしている。 1/72や1/87のキットでもこのあたりをうまく表現しているものはなく, 1/144でここまで再現できていることは驚異的と言えるだろう。 その他の部分の原型の精度や, 成型品の出来は射撃状態のキットと同等と考えてよい。 (したがって, 車体左右の作業用デッキ部分が車体上面と同じ高さにある, 円筒形のグリルの車体側面への張り出しがない, という欠点は射撃状態のキットと同じである。) 下の写真はG-019のものである。 (バリ,湯口の処理をある程度してあるので, 購入時の状態とは少し異なる。)
◆走行状態キットG-019製作記◆修正だのなんだの,うるさいことを言わずに素組みで作ってみました。 ただし大きな丸ハンドルだけは目立つので作り直してあります。 今回は真鍮線ではなく,エバー・グリーンのプラ・パイプを輪切りにし, エッジをおとしてスポークを追加してそれらしい形にしました。 なお装弾トレイの部品は, キットには含まれていますが, この作例では装備してありません。 これを自走時に装着していたかどうかは定かではありません。 有名なI号砲の完成時(と思われる)写真では, 自走状態では装弾トレイが付いていないのですが, 実戦時の写真で自走状態のところに装弾トレイを取り付ける作業を行っているものもあります。 またカールは左右の射角がそれぞれ4度と小さいため, 射撃方向を変える場合には車体ごと向きを変える必要があり, 実戦では方位を変えるために,装弾トレイをつけ, 作業デッキを展開した状態でサスペンションを下ろして駆動系を動かして向きを変える, ということが行われたと推測されます。 したがって,「走行状態」ではないが 「射撃中に方向転換」をするために装弾トレイをつけた形になることはある, と考えてよいでしょう。
■鉄道輸送状態モデル:G-016, G-017, G-018■![]() G-018 ゲレート041 540ミリの輸送貨車部品 輸送用の専用貨車とカール本体, それからカール付属の部品を運搬する無蓋貨車までついた豪華セットである。 約34cmのNゲージのレールも付属している。 (Nゲージのスケールは1/160であるから厳密にはスケール違いになるが…) 走行状態モデル G-019, G-020, G-021と同時に発表されたため, カール本体部分の構成は走行状態モデルに準じており, 走行状態モデルの足回りをサスペンションを上げた状態のパーツに置き換えたようになっている。 特筆すべきは,砲身上部の駐退器を取り外した状態が正しく再現されていることである。 カールは鉄道輸送時には駐退器部分を外しておかないとトンネルを通過できなかったらしいのだが, これまでのカールの鉄道輸送時のキット (ハセガワ1/72,アーティテック1/87) では, この部分の形状については無視されていて, 射撃時や自走時と同じ状態でモールドされていたものばかりであったので, このキットは賞賛されてしかるべきであろう。 専用輸送貨車部分は貨車1両あたり部品点数14点で構成されている。 形状的には細かいことでいくつか誤りがあるが 全体の雰囲気は良い。 1/144でここまで再現できていれば十分だろう。 車輪は貨車本体と一体成形されているため, Nゲージの機関車に牽引させて走らせることはできない。 あくまでディスプレイ・モデルである。 駐退器と装弾トレイを運搬するための治具や無蓋貨車も含まれている。 これらのキットはこれまで存在しなかったのでポイントは高い。 ただし駐退器と装弾トレイがこのようにして無蓋貨車に搭載されていたことを示す資料を見つけることができなかったので, 正確であるかどうかについての判断は保留する。 治具部分に関しては, 駐退器と装弾トレイを クレマイヤー・トレーラ に積載する際の治具を再現したようになっている。 下の写真はG-018の輸送貨車部分のパーツであるが, これらのパーツはG-016, G-017でも共通である。
カールを吊り下げるアーム部分は,内側にもリブなどが再現されており, 好感が持てる。 下の写真は駐退器と装弾トレイを載せる治具とそれを運搬する貨車である。 少ない部品点数でそれらしくできている。
◆鉄道輸送状態キットG-018製作記◆カールと輸送貨車と合わせた総パーツ数は約70点という1/144としては「大型」キットと言ってよいでしょう。 とは言え, ちょこっと手を加えるところ(と写真撮影)も含めて数日で組み立てることができました。 輸送貨車に関して気になって修正したところは以下のとおりです。
塗装前の状態。 レジンの色が白なのでわかりにくい部分もありますが, プラ材,真鍮線などの追加工作部分がわかるでしょうか。 カール本体には一切手を加えていません。
以下続く… ■弾薬運搬車:G-036, G-037■
弾薬運搬車のレジン・キットは2種類ある。 「給弾時」のキットは弾薬庫の天井と側部パネルを開放した状態に成型されており, グリッパに一体成型された1個と弾薬庫内に3個の計4個の砲弾が付属する。 「自走時」のキット(「自走時」よりは「移動時」のほうがより的確な表現だと思うが)では, 弾薬庫は全てパネルが閉じられクレーンは折りたたまれた状態をキット化している。 砲弾は付属しない。 なお「自走時」のキットのクレーンは, (キットの説明書に特に解説はないものの)支柱を立てた通常の状態にも組める。 G-036は部品点数13点, G-037の方は部品点数10点となっている。 いずれも写真に写っているレジン・パーツ以外にワイヤ用の糸が付属している。 シャーシの形態から見てF型ベースの車両のつもりのようである。 フェンダー上のOVM類は,ライト類以外は省略されている。 グリッパの造形,砲弾の底部分の模様など,全体によく出来ていると思うが, 車体後面の乗員用シートと足場の巾が狭すぎたり (ハセガワの弾薬運搬車のキットを参考にしたのか?), 排気管の取り回しがおかしい,など若干の難点もある。 いずれも修正可能な程度の誤りなのであまりとやかく言うべきではないかもしれない。 成型状態,バリ,気泡等については,ガレージ・キットとしては平均より上と思うが, メタル・トループスのキット などの「切れの良さ」と比べるとちょっと物足りなさを感じる (相手の出来が良すぎ,とも言えるが)。
◆弾薬運搬車キットG-036, 037製作記◆下記の2点に手を加えた以外はそのままキットを組んでみました。
ワイヤーは家にあった裁縫用のポリエステル糸で張りました。 張った後に瞬間接着剤を滲み込ませて固めてあるます。 キットに付属の糸でのよかったのですが, 長さに余裕があるほうが作業が楽なので。 でも結局あまりうまく張れず,少し弛み気味です。 実車でもクレーンを折り畳んだ状態ではワイヤーもピンと張っているわけではないようなので, まあこの程度はご愛嬌ということで…
以下続く… □付録:バリエーション早見表□9種類ものバリエーションがあるため, どのキットを購入しようか迷ってしまう向きもあるかと思うので簡単に整理してみた。 アトリエ・インフィニティーのキットは, 本質的に以下の相違点でバリエーションが成立している。
表を見ると,8転輪車台で540mm砲身を備えたタイプは存在しない。 実車では8転輪車台のNr.Iが1944年に540mm砲身をつけたことがあることになっているので, もしこれが作りたければキットを2つ購入して合体するか,砲身を自作する (まあ8転輪車台のG-005, G-016, G-019を購入して砲身の自作するのが現実的な方法だろう)。 ※この表をじっとながめているうちに 「9つ全部は買えないが, 6つの相違点のパーツをすべて網羅するようにキットを買い集めておけば, とにかくどれでも作れるようになるだろう…」 などという悪魔の囁きが聞こえてきたのなら, 一応下記の4通りが最少数のキットですべてのパーツを揃えられる組み合わせである。
これだけあれば, まず1台目は9つのバリエーションのうちのどれとしてでも製作できる。 2台目,3, 4台目についてはどのパーツが残っているかによって… 基本的に8転輪か11転輪の射撃状態の車両を1つと, 8転輪の走行状態,11転輪の走行状態を各1台, 残ったパーツで鉄道輸送状態を1組作れ,4つのうち一つを540mm砲身装備にできる。 Home
Last Update: |