■メタル・トループス1/144キット■

German 60cm Morser Karl (resin kit)
MT-8008 Morser Karl 60cm Self-Peopelled
MT-8007 Munitionspanzer IV

ワンダーフェスティバル2003[夏]にお目見えし, モデル・グラフィックス,アーマー・モデリング誌等にも取り上げられていた。 モールドが素晴らしいと評判となった1/144レジン・キットである。 まず2003年秋に 「貨車輸送状態(!?)」のキット(写真上段)が, 続いて2004年秋に 「走行状態」のキット (写真中段)と 弾薬運搬車(写真下段)が発売になった。

なお後二者のキットに関しては, 説明書にSoar Art Workshop なるメーカーが販売元として記載されている。 「Metal Troops 金属部隊」の名称も箱と説明書に従来どおり入っており, この2社の関係がどうなっているのか不可解である。

詳しいことは知らないのだが, メタル・トループス(金属部隊)は本来メタル製キットおよび完成品のメーカーらしい。 カールについても貨車輸送状態の「ダイキャスト・キット」版が存在する (塗装済み完成品も存在するらしいが詳細はわからない)。

German 60cm Morser Karl (die-cast kit)

またフジミ模型が2004年暮れから「Soar Art Workshop社製」の金属部隊1/144戦車群の 塗装済み完成品の輸入販売を開始した。


■貨車輸送状態モデル■

部品点数は約30点。 評判どおり成型状態は素晴らしく,ディテールもかなり作りこまれており, 非常に印象が良い。 歪みもほとんどないようだ。 (ただし,バリ,成型不良,歪みが「全くない」わけではない。 あくまでレジン・キットであるので過度の期待は禁物。) 同スケールで先行したアトリエ・インフィニティーの製品との比較が避けられないところであるが, 細部,成型などの面においてはメタル・トループスに軍配があがると言って良いと思う。

砲架は後座位置で固定, サスペンションを上げ,左右の作業デッキが折りたたまれた状態になっているため, 貨車輸送状態をモデル化していることになる。 貨車に載せられている時以外ではこのような形態にはならないので, カール「単体」のモデルとしてはこれでは中途半端である。 サスペンションを下げた自走状態をモデル化するか, サスペンションはこのままで砲架の位置と作業デッキの状態を発砲状態とするか, どちらかにすべきだったろう。 あるいは輸送用貨車を別に発売する予定があるのだろうか。 サスペンションの改造はほぼ不可能, 部品分割の関係で砲架位置の変更もかなり面倒な作業となると思われる。

パッケージもレジン・キットとしては異例とも言えるほど豪華で, 組立説明書も光沢紙にカラー写真を載せた,金をかけたつくりである。 ただしちょっと不思議なのは, 完成見本写真(上の写真では右端のページ)で作業デッキが展開された形に組まれており, あたかも射撃状態のキットであるかのように見えること。 説明書部分では折りたたんだ状態の組み方が載っているし, 部品自体も折りたたんだ状態のモールドであるので, 完成見本写真は誤りと言わざるを得ない。 キットのデッキ表面のモールドは,折りたたんだ時に露出する, デッキの「裏側」になっているのであり, 完成見本のようにデッキを展開した状態にするには「表側」のモールドに修正しなければならない。 ただし射撃状態にしたければ,デッキの修正に加えて砲架位置も直さなければならないので注意。

なおキットのパーツのうち, 車体前後端4箇所に取り付けるように指示されている三角形の部品(写真右) は取り付けてはならない。 これはカール専用の輸送貨車の吊り下げアームの一部なのであって, カール側ではなく輸送貨車に付くべきものである。 輸送貨車のキットは発売していない上に, カール本体につけろ,という指示があるのは何故なのか, については下記参照。

ところでパーツをよーく観察していただけると気づくと思うのだが, このキット, なんとハセガワの1/72キット の正確な縮小コピーのようなのだ。 スケールの違いによるディテールの省略や, インジェクション・キットとレジン・キットという違いから来る 部品分割の違いはあるが (しかし同時に驚くほど同じような形状や表現の部品もある), これは「同じ物をキットにしているのだからある程度似るのは当然」とか, 「ハセガワのキットを一部参考にしたように見える」といったレベルを超えており, 「1/72のキットを1/144に縮小した」と言わざるを得ない設計である。

このキットには前述したとおり4つの不要パーツがあり, それは輸送貨車のアームの一部であるはずのものである。 実はハセガワのキットでは,輸送貨車のこの部分を全く同じ分割でパーツ化しており, かつその組立説明書では,手順の関係で このパーツをカール側につけておいてから最後に輸送貨車と合体させる ように指示されている。 つまりメタル・トループスはこれを見て「このパーツはカール本体の一部」と勘違いした, と思われるのだ! ハセガワのキットを丸ごとコピーしないかぎりこのような間違いは犯さないだろう。

そんなわけでハセガワのキットの間違いや難点はすべて継承してしまっている。 ハセガワのキットは先駆的なキットであったし, 後発のメーカーが参考にするのもいたしかたないと思うが, なにぶん古いキットで考証的にも誤りがあることははっきりしているので デッド・コピーはいただけない。 なにより根本的にこのようコピーは道義的にも問題であろう。 成型技術が高いだけに全く残念である。

下の写真は素組みのハセガワのキットとメタル・トループスのキットを並べてみたものである。 どちらも部品の擦り合わせとヒケ,隙間のパテ埋めをした程度で, ディテール・アップなどは特に施していない。 相似形であることがよくわかる。

1/144の他社のキットとの比較については, 「ドラゴン1/144キット」 の項で触れているので参考にされたい。


■走行状態モデル■

砲架は後座位置で固定, サスペンションが下がった走行状態,左右の作業デッキは展開された状態でモデル化されている。 このキットもハセガワ の(弾薬運搬車付き)走行状態キットの縮小コピーのように見える。

部品点数は約30点。 このスケールのレジン・キットとしては,バリ,成型不良,歪みは圧倒的に少ないが, 当方が入手したものには,型の痛みによるのだろうか一部のパーツのダボ穴が詰まってしまっていたり, 反りがあったりした。 特に手すりの歪みは厄介である。 本来こうした細くて長い部品はレジン成型には向かないのだから, とやかく言わずに キットのパーツを素直に使うか, 金属線,プラ棒などで作り直すか決断を迫られる。 貨車輸送状態のキットとは, 足回りと作業デッキを含めた車体上部, および新規に追加された装弾トレイ以外のパーツは共通となっている。 今回の組立説明書はモノクロ写真で構成されている。 写真が小さいのと, 見本の出来がよくない (ピッタリ組まれておらずあちこち隙間があったり,傾いてつけられているパーツがある) ために少々わかりにくいものになってしまっているのは残念。

このキットでも貨車輸送状態のキット と同様に,本来輸送貨車のアームのパーツであるべき物が入っているので, 組立説明書の指示は無視して,取り付けないようにする。

上の写真は手を加えずにキットを素組みしたものである。 隙間埋め程度はしたが追加工作などはしていない。 車体前後のハシゴ下端が折りたたまれた状態にモールドされているのが少し気になる。 手すりはキットのパーツにドライヤーで温風を当てて歪みをなるべく修正するよう試みたが, 完全に修正できたとはとても言えない。

左の写真は ドラゴンの1/144キットとの比較写真である。 手前がメタル・トループス,奥がドラゴン。 メタル・トループスの方がドラゴンのものよりも全長が少し長く, 背が高くなっており,一回り大きな印象を受ける。


■弾薬運搬車■

部品点数はレジン・パーツ約16点とクレーンのワイヤー用のピアノ線2本。 カール本体と同じく成型状態は良好である。 クレーン機関部の複雑な形状を一発で成型していたり, 弾丸グリッパーの細かいディテールなど,感心させられる。 しかし, 形態的にはこのキットもまたハセガワの製品の縮小コピーになってしまっているのはいただけない。 このため以下のようにハセガワのキット同様の間違いがある。

  • キットでは弾薬庫に3発しか搭載できないようにモールドされているが, 実車では4発搭載していたことになっている。 また弾薬庫の屋根となるハッチが後半部分しかないので,前半部分を自作する必要がある。
  • 弾薬庫後面の乗員席と足置き(?)の幅が狭すぎる。
  • 車体後面下端の形など全体にIV号H, J型のような表現になっている一方で排気管はD型のような長いタイプになっている。 このためIV号D, E, Fのどの型から改造した車両のつもりなのか曖昧である。
  • クレーン支柱の形状が今ひとつ正確でない。

また組み立て説明書にはクレーンのワイヤーの張り方の指示がなく, かつ完成見本写真のワイヤーの張り方は間違いであるので, 各自で資料をあたる必要がある。 (当サイトの解釈については 「IV号弾薬運搬車」の項を参照)

形態上のミスを除けば, キットとしての完成度は同スケールの アトリエ・インフィニティーのキットよりも高く, 組み立てやすい。 モールドもカッチリしている。 これだけの成型技術を持っているなら,独自設計で製品開発を行っていたら 間違いなくこのスケールでの決定版を作ることができただろうと予想できるだけに, 残念で仕方がない。

上の写真ではキットの下記の部分に手を加えている。

  • 弾薬庫上面前半部のハッチを自作。
  • 弾薬庫後面の座席と足置き(?)を作り変え,大きくした。
  • 弾薬庫内部には砲弾を「つめて」配置し, 4発目を搭載するスペースがあるように見せた。
  • 車体後面のモールドを一部削ったうえ追加工作をしてIV号F型らしくし, 排気口の取り回しも修正した。
  • クレーン支柱頭部両側面にモールドされているアーム(?)のうち, 片方は実車にはないので削り落とし, 代わりにプラ材で滑車端部を追加した。
  • キットに含まれていたピアノ線ではなく, 裁縫用の糸(たまたま家にあったポリエステル製黒糸)でワイヤーを工作。 張った後に瞬間接着剤を滲み込ませて固めてある。


■ダイキャスト製モデル■

原型もパーツ構成も 「貨車輸送状態」のレジン・キットと全く同じであり, 組立説明書も共通であった(したがって説明書の写真にはレジン・パーツが用いられている!)。 当方が入手したものは内部の梱包に配慮が足りなかったためだろうか, 大型のパーツ同士がぶつかり合ってかなり表面に傷がついたり変形したりしていた。 変形は簡単に修正できそうだし,表面も磨けばよいのではあるが少し残念である。


■塗装済み完成品■


MT-6018 Morser Karl 60cm Self-Propelled, WWII German

MT-6019 Munitions Panzer IV, WWII German

MT-6020 Munitions Panzer IV, WWII German

メタル・トループスの1/144戦車群の塗装済み完成品のシリーズが2004年暮れに発売になった。 この中にカール1種と弾薬運搬車2種が含まれている。 レジン・キットをそのまま組んで塗装したものと思われる。

カールは3色迷彩が施された自走状態のモデル。 写真には写っていないが,砲弾2発も付属する。 砲身上部には「Ziu」のステンシルが描かれている。 しかし実車のZiuは11転輪シャーシであり, この製品のような8転輪シャーシではないので, 正確さを追求するなら塗りつぶすしかないだろう。

弾薬運搬車は迷彩パターンの異なる2種類のモデルとなっている。 通常の3色迷彩(MT-6019)と,ダーク・グリーンをベースとした塗装(MT-6020)である。 残されている実車写真を見る限り後者のような塗装は見当たらないようなので, どういうつもりでこのような製品ラインナップを考えたのか不思議である。 ダーク・グレーのカールを出してくれた方がよほど良かったように思う。

なお,このシリーズの日本国内販売はフジミ模型の扱いとなっているが, メーカー・サイトには これらの製品についての記載は一切ない。


■メーカー・サイト■

MetalTroops

Soar Art Workshop


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