■ハセガワ1/72 IV号弾薬運搬車■
ミニボックスシリーズNo.33
ドイツ「カール」&4号特殊弾薬運搬車(1976年発売)
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MT56 54cm自走臼砲カール
w/ IV号特殊弾薬運搬車(2005年発売)
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ハセガワはIV号弾薬運搬車のキットはカールとのセットでしか販売しておらず,
単体での入手はできないためカールの「オマケ」的な印象を受けがちだが,
大きさは(当然のことながら)通常のIV号戦車であるし,
部品点数もそれなりにあってボリューム感のあるキットである。
IV号弾薬運搬車のインジェクション・キットとしては最初のものであり,
決して資料が豊富とは言えなかった時代にかなり頑張って開発されたキットではあるが,
いかんせん設計が古く,
現在のキットの水準からすると考証上も1/72キットとしての再現度の面からも苦しい点が多い。
ハセガワは発売から30年の時を経てカールのキットをリニューアルするに際して,
付属のIV号弾薬運搬車にも少し神経を使ってくれ,
転輪部分だけは,
割と最近の製品であるIV号駆逐戦車のキット(MT49 Sd.kfz.162 IV号駆逐戦車L/48初期型)
のパーツに差し替えられた。
下の写真は旧キットをストレートに組んだものである(塗装はしていない)。
本キットの主な問題点としては以下のような点が挙げられる。
- クレーン
全体的にあまり実機に似ていない。
モールドも昨今のキットに比べると精密感に欠ける。
旧キットの組立説明書どおりだとアームの付く向きが実車と反対向きになってしまう。
ワイヤーの張り方もキットの組立説明書(新旧キットとも)は誤り。
右の写真では,クレーン・アームの向きは正しく修正しているが,
ワイヤーはキットの説明書どおりの誤った張り方になっている。
なおキットのクレーンはオーバースケールだと批判する向きもあるようだが,
実車写真と比べて寸法的にひどくおかしいようには見えない。
もともと実車の寸法は不明であり,
車体と比較した相対的なサイズに大きな矛盾や違和感がないのであればそれで良いように思う。
- 弾薬庫
キットでは3発しか搭載できないようにモールドされているが実車では4発搭載していた。
また弾薬庫の屋根となるハッチが後半部分しかないので,前半部分を自作する必要がある。
ただし1944年ごろの実車写真では,
前半部分の上方のハッチと側面ハッチを取り外してしまっているようなので,
大戦後期の状態のつもりでそのようにしてもよい。
また弾薬庫後面の乗員席と足置き(もしくは作業デッキ?)の幅が狭すぎる。
- シャーシ
起動輪やダンパの形状,車体後面下端の形など全体にIV号H, J型のような表現になっている。
その一方で排気管はD型のような長いタイプになっている。
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新キットMT56では,
転輪パーツの差し替えで足回りの見栄えは少し改善されたが,
キャタピラは以前のままであるし,
シャーシ,車体上部,クレーン等の物足りなさや問題点はそのままである。
そこで出来の良い他社キットやエッチング・パーツを活用してもう少し見た目を良くしてみたので,
以下で紹介する。
ただし実車の構造や寸法について不明点が多々あるため,
「徹底工作」「徹底改修」というよりは,
雰囲気重視で「実車写真と比較するとキットそのままよりはそれらしく見える」
を目指して軽い気持ちで取り組んでみた。
なお実車については,本サイトの
「IV号弾薬運搬車」のページを参照のこと。
使用するのは下記のキットとエッチングである。
これらを使ってIV号戦車F型シャーシをベースに製作された弾薬運搬車を作ってみることにする。
ドラゴンIV号突撃砲(初期型)のシャーシはIV号戦車H型初期〜中期の形態をしているため,
IV号弾薬運搬車のベースとなったD〜F型のシャーシとするためにはいくらか手を入れる必要がある。
また同キットのホイール類はH型中期以降の形式なので使うことはできない。
ハセガワのキット(MT56)には前述のようにIV号駆逐戦車のキットから流用したホイール類があるので,
それらをそのまま使ってもいいのだが,
ドラゴンのシャーシとの接合には一工夫必要になることから,
ロード・ホイールとリターン・ローラーはドラゴンのホルニッセのパーツを流用する。
ただしスプロケット・ホイールとアイドラー・ホイールについては
ハセガワのパーツを用いることにする。
ドラゴンは今後IV号戦車G型を発売予定にしているので,
そちらが入手可能になれば,シャーシ,ホイール類全てをG型のキット1個で賄えるだろう。
なおドラゴンのIV号戦車系列のキットの代わりに,
レベルのIV号戦車H型のキットを使うことも考えられるが,
その場合キャタピラやホイール類は形式が違うので流用できないし,
シャーシの側面にモールドされたダンパがH後期〜J型の物なので改修が必要となり,
結構手間がかかると思われる。
■シャーシ
ドラゴンIV号突撃砲のパーツをベースにして製作したシャーシ部分の写真である。
後面はIV号F型になるように一部を切り落とした後プラ板で再生し,
補助エンジン・マフラーを自作した。
またIV号弾薬運搬車では,
マフラーからの排気口が戦車型のように上方に出ているのではなく,
下方に取り回されているのでそのようにしてある。
ファイナル・ドライブ・ハウジングの形状も,
キットのH, J型の形式からG型以前の形にする。
ただし大部分は隠れて見えないので,
前方から見える部分だけプラ材とリベットを使ってそれらしくした。
また厳密に言えば,誘導輪基部もキットはH型以降の形式であるので,
それ以前の形に改造する必要であるが,
あまり見えない部分である(本当か?)と割り切ってリブを少し加えただけでごまかした。
なおドラゴンIV号突撃砲のキットには,
車体前部上面のトランスミッション用のハッチの位置がおかしい
(実車は車体中心より右側にオフセットされているが,
キットではちょうど中心に来ている),
という問題があるが,今回は修正していない。
ロード・ホイールとリターン・ローラーはホルニッセのパーツを流用する。
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■車体上部
車体上部は基本的にハセガワのパーツをベースとする。
実はハセガワのIV号弾薬運搬車は車体長がドラゴンのIV号戦車系列に比べて2〜3mm程度長いため,
車体上部のパーツもどこかで少し切り詰める必要がある。
まず一体成形されたフェンダー,トランスミッション上面部を切り飛ばし,
弾薬庫の直前,クレーンの後ろの部分で2mm切り詰めた。
また上面の操縦手ハッチは作り直すことにして削り落とし,
側面のエンジン・ルーバーなどの取り付けガイドなども全て削って綺麗にした。
またこのパーツにはかなり大きな「抜きテーパ」がついているので,
パーツ側面を削って垂直な面を出した。
これをしないとシャーシと車体上部で幅が全く違ってしまう。
(ここまで切ったり削ったりするとハセガワのパーツを使うより,
いっそ全部プラ板で自作したほうが早かったかもしれない…)
車体前部上面には操縦手用のハッチと,その後ろに(おそらく)同型のハッチがもう一つある。
寸法は適当である。
結構大型であるようなので大きめに作ってみたが,
大きすぎたかもしれない。
これらハッチのヒンジはハッチ後方側にあること,
ハッチ開閉用のハンドル(?)が各ハッチ前方中央にあることに注意。
操縦手用のクラッペ(というか単なる覗き窓)はエデュアルドのエッチング・セットに含まれている。
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実車の弾薬庫内部がどのようになっていたかについてはほとんど解明されていないので,
床板もハセガワのパーツをそのまま使っても良かったのだが,
「弾薬庫の床には(通常のIV号戦車に似た)エンジン・ルーム用のハッチがあったはずだ」
「IV弾薬運搬車の開発時期を考えれば,そのハッチにはルーバーはなかったに違いない」
という推理を主張してみたくて(笑),
プラ板にハッチを罫書いて自作してみた
(写真ではこの状態ではあまりはっきり見えないかもしれない)。
これで正解であるということは毛頭言えないが,
あながち的外れな推理ではないだろうと思っている。
ハッチのヒンジなどはドラゴンのIV号突撃砲のキットから剥ぎ取ってきた。
弾薬庫床には,他に砲弾の受け具と固定(?)バンドが装備されている。
これらの形状も位置も部分的にしかわかっていないので適当にでっち上げた。
なおハセガワのキットでは弾薬庫に砲弾は3個しか載らないようになっているが,
実車は4発運搬できるので,受け具なども4発分用意してある。
弾薬庫側面の壁は前半部が開閉できるようになっているが,
1944年頃の実車写真をみると,
この扉部分(と弾薬庫上面の蓋)を取り払ってしまっている車両も多いようなので,
今回はそのようにしてみることにする
(なおエデュアルドのエッチング・セットには,
側面の開閉部も上面の蓋も全て含まれているので,
1944年以前の形態もちゃんと再現できる)。
弾薬庫後面には,エデュアルドのエッチングとプラ材で作業員の椅子と足置き
(もしくは作業用デッキ?),
クレーンのトラベリング・ロックを再現。
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フェンダーは前端部分はドラゴンのIV号突撃砲のキットを利用し,
中間部分はプラ板で自作,表面にはエデュアルドのセットに含まれている滑り止めを貼った。
OVM類はハセガワのキット,ドラゴンのIV突のパーツ,Eduardのエッチング以外に,
手持ちのジャンク・パーツを利用したり,適当に自作している。
ジャンク・パーツについては元々のキットがなんであったか判然としないものが
ほとんどだが,予備キャタピラはレベルのIV号H型のパーツだったはず。
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Created: Sunday August 20, 2006
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