■ハセガワ1/72キット■

Part 3

■新バリエーション・キット MT57■


MT57 60cm自走臼砲カール量産型 w/ 運搬貨車

「MT56 54cm自走臼砲カール w/ IV号特殊弾薬運搬車」 に引き続き, ハセガワの従来のキット ( 『1/72ミニボックスシリーズNo.32 ドイツ600mm自走臼砲「カール」貨車付 』) をベースにして開発されたバリエーション・キットである。 従来のキットと比較して, シャーシが11転輪のタイプになっているところが新しい。 しかし,旧キットのパーツもそのまますべて(不要パーツとして)含まれており, さらに MT56のキット で新規開発された54cm砲身のパーツも入っているため, 本キットは(組立説明書には記述はないものの), 実質上砲身は60cmと54cmの選択式,足回りは8転輪シャーシと11転輪シャーシの選択式, になっていると言ってよく, その上おまけとして(貨車輸送状態では不要であるはずの) 60cm砲弾用の装填トレイのパーツも付属している, という極めて「お得な」内容になっている。 また従来のキットで考証不足だった部分についてMT56で改良された部分は, 本キットでも同様である。


◆製品内容◆

砲身・砲架

旧作のキットでは実車と異なって砲架が車体に埋め込まれるようにして固定されていたが, このキットではMT56と同様に,正しく車体に砲架が収まる「風呂桶」がある構造に改修され, 砲架のパーツもそれらしくなっている。 (しかし,旧パーツをある程度活かそうとしたためか,完全に正確とは言えない。)

砲架は旧作と同様に後座位置に固定で,走行状態や貨車に搭載した状態になっている。 本キットは貨車輸送状態のカールだからこれで正しいが, さらに厳密に貨車輸送状態を再現するなら, 砲身上側の駐退復座装置を取り外した状態にしなければならない。 この部分を正しく表現しているのは トランペッターの1/35キットのみであるので, そちらを参考にして改造しても良いだろう。

前述のように, 本キットには不要パーツとして54cm砲身も含まれているので, 54cm砲搭載のGeraet 041を作成することも可能である。 ただしその場合には, 54cm砲の砲尾ブロックの上にあるカウンター・バランス(?)のようなもの (「カール各車両の相違点」参照) が省略されているので気になるなら追加工作をする。 ただし細部がどういう形状なのかはよくわからないので適当にでっち上げるしかない。 トランペッターの1/35 キットにはこのパーツが含まれているので, 参考にしてもよいだろう。

本キットにはおまけとして60cm砲弾用の装填トレイが付いてくる。 このトレイは貨車輸送状態の際には取り外されているので, 純粋に不要パーツなのであるが, 旧作キットの 『ミニボックスシリーズNo.33 ドイツ「カール」&4号特殊弾薬運搬車』や, そのバリエーションである新キット 「MT56 54cm自走臼砲カール w/ IV号特殊弾薬運搬車」 で60cm砲身のカールを製作する際に使える。 ただし,MT56の54cm砲弾用の装填トレイのパーツを一部差し替えただけなので, 完全に正確とは言えない (それでも旧作キットNo.33に付属の装填トレイよりははるかにマシではある)。 60cm砲弾用と54cm砲弾用の装填トレイの形状の違いについては 「カール各車両の相違点」を参照のこと。

車体

上述のように車体中央部の「風呂桶」が(ある程度正確に)再現されたり, 車体後部上面(カールは砲口が向いている方が「後ろ」)にモールドが追加されるなど, 改修されて随分と良くなった。 また排気管を車体後部まで伸ばすパーツも追加されている。

しかし車体左右の作業デッキが車体本体と同じ高さにあり, エンジン・ルームの丸いルーバーが車体横にはみ出していない, という以前からの欠点はそのままであるのは残念。

足回り

旧作のキットとは異なり,III〜VI号車の11転輪タイプの足回りとなっている。 転輪配置が車体左右で非対称になっている様子も正しく再現されている。 転輪表面には細かくディテールがモールドされている。 放射状にある溶接跡は実車でも目立たない程度のものなので, スケールを考えれば耐水ペーパーで少し削っておとなしくしてやってもいいだろう。 サスペンションの位置は貨車搭載状態で固定である。

履帯はポリ製で旧作の物がそのまま入っている。 本来 カールの履帯 は8転輪タイプと11転輪タイプの足回りでピッチが異なる全く別物なので, これはある意味では誤りなのだが, もともとこのパーツは8転輪タイプ用というよりは11転輪タイプ用に近い寸法だったので, かえって好都合である。

旧キットの8転輪シャーシでは起動輪と履帯がうまく噛み合わない上に, 車体側の半分が車体側面に一体成型されていたために, 原理的にも履帯には嵌らないという問題があった。 今回はそのようなことはない。

輸送貨車

基本的に旧作のままで変更はない。 輸送貨車のパーツに関しては細部にいろいろ実車と違っている部分があり, 今回の新キットではある程度修正してくれるかと淡い望みを抱いていたのだが, 期待はずれだった。 幸いエデュアルドのエッチング・パーツ (22058 Karl railway gun)を使うとかなりの部分は直せそうである。

デカール

1944年夏頃のZiuとLoki用のロゴと車両番号のデカールが含まれている。 運搬貨車用としては特にデカールは用意されていない。 この特殊運搬貨車には,通常の鉄道車両と同様に各部にマーキングあるので, できればこの機会に新調して欲しかった。

その他

エデュアルドが出している エッチング(22059 Karl gun on track)は, 本来走行状態用のカール用ではあるが,本キットにも大部分は利用可能であると思われる。

旧作パーツについては,古いだけに金型もくたびれてきているのか, バリ,ヒケ,表面の傷が目立つ。

組立説明書も当然新しくなっている。 旧キットの説明書をベースに,一部より詳しい組み立て上の注意が追加されている。 以前の説明書も親切なものだったのだが, さらに良いものを目指そうとする, 当たり前とはいえ地道で真面目な姿勢は褒められてしかるべきだと思う。

新規追加パーツとデカールは下の写真のとおり。 旧キットと同じパーツについては示していない。


新規追加パーツ:シャーシ,砲身 (MT56と共通)

新規追加パーツ:転輪 (MT56と共通)

新規追加パーツ:その他
(赤で囲んだ部分がMT57固有のパーツ,他はMT56と共通)

デカール

54cm砲身パーツは本来MT57には不要部品


輸送貨車部分が旧来のままなのが少し残念であるが, 新パーツを加えてリニューアルされたことは喜ばしい。 ハセガワのカールは, ここ数年来カタログには記載されていないまま時折再生産され流通していただけで, いつか入手不可能になるのではないかと一抹の不安があったが, これでめでたく正規(?)商品として末永く(?)安定して供給されることになると思いたい。


■メーカー・サイト■

Hasegawa


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Created: Wednesday 21 June, 2006
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