■カール各車の相違点■
×××××工事中×××××
NOTE: Figures in this page are not scale plans; they are drawn for
illustration purpose only.
- 駆動系
- エンジン,トランスミッション
各車両に搭載されたエンジンとトランスミッションについては諸説ある。
Table 1.1 資料[37]による説
| Nr.I
| Nr.II
| Nr.III
| Nr.IV
| Nr.V
| Nr.VI
| Nr.VII
|
エンジン
| MB503A
| MB503A
| MB507C
| MB507C
| MB507C
| MB503A
| MB503A
|
| ガソリン
| ガソリン
| ディーゼル
| ディーゼル
| ディーゼル
| ガソリン
| ガソリン
|
トランスミッション
| Ardelt
| Voith Turbo
| Ardelt
| Ardelt
| Voith Turbo
| Voith Turbo
| Ardelt
|
Table 1.2 資料[32]による説
| Nr.I
| Nr.II
| Nr.III
| Nr.IV
| Nr.V
| Nr.VI
|
エンジン
| MB507F
| MB507CV
| MB507c
| MB507c
| MB507c
| MB507CV
|
Table 1.3 資料[27]による説
| Nr.I
| Nr.II
| Nr.III
| Nr.IV
| Nr.V
| Nr.VI
|
エンジン
| MB507F
| MB507CV
| ?
| MB507c
| MB507c
| MB507CV
|
トランスミッション
| Ardelt
| Voith
| Ardelt
| Ardelt
| Voith
| Voith
|
Table 1.4 カール用として製造されたエンジン
(資料[29])
MB503A(ガソリン)
| 5台
|
MB507C(ディーゼル)
| 5台
|
※各車両がどのエンジンを搭載していたかについては記述がない。
- 転輪,キャタピラ
Table 1.4 転輪・キャタピラ
| Nr.I
| Nr.II
| Nr.III
| Nr.IV
| Nr.V
| Nr.VI
| Nr.VII
|
ロード・ホイール数
| 8
| 8
| 11
| 11
| 11
| 11
| 11?
|
ロード・ホイール 直径
| 600mm (推定値)
| 600mm (推定値)
| 600mm (推定値)
| 600mm (推定値)
| 600mm (推定値)
| 600mm (推定値)
| 600mm? (推定値)
|
上部ホイール数
| 8
| 8
| 6
| 6
| 6
| 6
| 6?
|
上部ホイール 直径
| 280mm (推定値)
| 280mm (推定値)
| 350mm (推定値)
| 350mm (推定値)
| 350mm (推定値)
| 350mm (推定値)
| 350mm? (推定値)
|
アイドラー・ホイール
| type 1
| type 2
| type 2
| type 2
| type 2
| type 2
| type 2?
|
アイドラー・ホイール 直径
| 880mm (推定値)
| 880mm (推定値)
| 880mm (推定値)
| 880mm (推定値)
| 880mm (推定値)
| 880mm (推定値)
| 880mm? (推定値)
|
ドライブ・スプロケット 歯数
| 17
| 17
| 12
| 12
| 12
| 12
| 12?
|
ドライブ・スプロケット 直径
|
キャタピラ幅
| 500mm
| 500mm
| 500mm
| 500mm
| 500mm
| 500mm
| 500mm
|
キャタピラ・ピッチ
| 170mm
| 170mm
| 240mm
| 240mm
| 240mm
| 240mm
| 240mm?
|
キャタピラ枚数 (片側)
| 133
| 133
| 94
| 94
| 94
| 94
| 94?
|
※資料[37]は,
Nr.IIIのみキャタピラ・ピッチを250mmとしているがこれは誤記ではなかろうか…
- 外見上の相違
- 排気管
排気管の長さは砲身と走行系の違いについで目立つ相違点である。
資料[37]によれば,
車体側面に沿って伸びる長い排気管は取り外し式であり貨車輸送時には外されていた,とあるが,
残された写真を見ると貨車に搭載された状態でも長い排気管をつけている場合もある。
現在のところ排気管が短い(もしくは延長部分を取り外されていた)状態の写真があるのは,
I, II, III, VI号車,
長い排気管をつけている状態を確認できるのはII, IV, V号車である。
番号が飛び飛びなのが不思議であるので,
やはり取り外し式で運用上いつ装着したり取り外したりするかは割合適当に行われていた,
と考えるべきだろうか。
- 装備品他
発表されている写真を観察すると,
車両によってOVM等の装備品や車体表面の部品類の細かな違いがある。
全部の車両について製造時から終戦までの様子を追えるだけの写真資料がないため,
特定の写真が撮影された後に修理や改修が行われ,
同一の車両でも時期によって外見上変化がある可能性もある。
3に掲げる相違点のいくつかは,工具の止め具の位置の違いである。
OVMの装着位置については被弾防止などの理由で現地部隊が変更を加えることが
ドイツ軍では広く行われていたことはよく知られている。
しかし,カール各車における工具止め具の相違点は,
せいぜい数十センチ程度の位置の違いであるので,
(はたしてこの程度の「改修」作業が現地部隊で行われる必要があったのか,と考えれば)
部隊による変更というよりも製造時の誤差(と言うかいい加減さ)
である可能性が高いと考える。
ただし消火器の取り付け位置についてはもう少し違った事情がありそうである。
I, II号砲やV, VI号砲の製造直後と思われる写真では,
車体後部(砲口の向いている方)左側の砲架寄りに大型の消火器が2個装着されているのがはっきりわかるのだが,
以降のI〜VI各砲の写真の中にはこの位置に消火器が見当たらない場合がある。
特に540mm砲身を装着したIV, V号砲の一連の有名な写真では,
明らかにこの位置には消火器はおろかその取り付け具もない。
これらの写真では操縦席の脇に,消火器の取り付け具ではないかと思われる物が見えるのだが,
消火器自体が着けられていないので断定はできない。
真相が
- 製造時期や砲によって消火器の装備位置が異なっていた。
- 実戦配備後のある時期に消火器は製造当初の装備位置から移動された。
のどちらであるのかは,現時点では不明ということになる。

消火器の装備位置
- Geraet 040と041
Geraet 040と041の違いは,基本的に(砲尾部分を含めた)砲身にある。
口径と砲身長の違いは一目瞭然であるが,
砲尾のブロックの形状もよく見ると上部にわずかに相違があるようだ。
砲身長が伸びた分のカウンター・バランスを取るためだろうか。
540mm砲身の車両の写真は多くないので,この部分の正確な形状はよくわからない。
また砲弾装填用のトレイの形状も,Geraet 040と041で非常によく似ているが,
気をつけてみると側部の穴の形状やローラーの配置が異なるようである。
砲弾の直径が違うためトレイも再設計された,と考えれば当然かもしれない。
- 外見上の相違のまとめ
以下では外見上の相違について筆者なりにまとめた結果を示すが,
これは
あくまで仮説であって確証があるわけではない。
また図版は特徴をおおまかに示すために作成したものなので,
スケールや寸法,形状については適当なのでその点ご了解を。
- I号車
旧来この車両は試作車と考えられることが多かったが,
実戦配備されていることを考えると,
試作車,量産車といった区分は特に意味がないように思われる。
I号車と思われる写真は鮮明なものが数多く残されている
(資料[18], [27]Nr.22 p.3458-3467,
[32]p.46-47, p.69-72, [37]p.2-3, p.14-15, p.20, 裏表紙
など多数)。
撮影時期は1940年から1941年初頭であろうか。
一部地面に雪が積もっているように見える写真もある。
写真撮影以降に車体の改修,追加装備が行われた可能性もあるが,
写真撮影時の状態を詳しく見ると,II号車以降とは以下の点が異なる。
- 8転輪。
- 輸送貨車と連結する制動パイプ(?)がない(Fig.1.b)。
写真撮影以後に追加された可能性もある。
- 車体後面に一部ボルトがない(Fig.1.b)。
- 車体後面のOVMの止め具の位置,形状が少し異なる(Fig.1.a)。
- 車体前面のはしごの取り付け位置がII号車以降に比べて中央寄り(Fig.1.b)。
斜めから撮影された写真しかないので確定的なことは言いにくいが,
どうもII号車以降とは位置が少し異なり,中央付近に取り付けられているようである。
ただし車体のちょうど中央と言うわけではなさそうではある。
- 車体前面の大型ハッチの左に手すり状のものが2つある(Fig.1.b)。
用途は不明。
- II号車以降に見られる,車体各部のクランクの保持具がない(Fig.1.c, 1.d, 2.c, 2d)。
あとから追加された可能性も否定できない。
- カバーをとめるための小さな手すり類がない(Fig.1.c, 2.c)。
用途は不明であるがII号車以降には小さな手すり状のものがある。
あるいは砲部分にカバーをかけたときにベルトをとめるためのものかもしれない。
- 副操縦手用の座席がない?
副操縦士席は折りたたみもしくは取り外し式のようなので,
たまたま写真に写っていないだけかもしれない。
- 尾栓アセンブリの駐退器ロッドの取り付け部分の形状が違う?
- 誘導輪が異なる(スポークの本数,リムの幅)(Fig.1.c)。
このタイプの誘導輪をつけているのはI号車と後述のIII号車のみのようである。
写真撮影以後新型のものに交換されたかどうかはわからない。
- 車体左側面の配線(?)にカバー(?)がない(Fig.1.d)。
- 駐退器下側の大型のボルト・ナットは砲身に向かって左がボルト,右がナット(Fig.1.e)。
ナットは六角であるが,ボルトの頭は六角ではないことに注意。
この部分はもし分解整備を行ったりすれば再組み立て時に左右が入れ替わる可能性もある。
- 装弾トレイの支持架の形状が一部他の車両と異なる(Fig.1.f)。
この部分の細部が鮮明に写っている写真がないため,
詳細な形状などに不明な部分もあるが,
この支持架は4組のボルト・ナットで砲架に固定されているらしい。
またこの部分のリブが1本である。
なお,この支持架の付近にはI号車にのみ用途不明の器具が装着されている。
- 排気管は短い。
- 排気管のデフレクタ(?)が後から追加された。
写真によってついている写真と,ない写真がある。

(a) 車体後面

(b) 車体前面

(c) 車体右側面

(d) 車体左側面

(e) 砲アセンブリ

(f) 手すり


(g) 装弾トレイ支持部
Fig.1 I号車の特徴
- II号車
1941年頃輸送貨車と写っている写真
(資料[@], [27]Nr.21 p.3300-3303, [37]p.10-13),
セバストポリ戦時の写真
(資料[@], [27]Nr.23 p.3631下, [32]p.94-95, p.122),
米軍に捕獲された時の写真
(資料[37]p.54)
を見ると,以下の点が他の車両と異なる。
- 8転輪。
- 誘導輪が新型となる(Fig.2.c)。
この新型(?)誘導輪は,
IV, V, VI号車(およびVII号車も?)でも使われていることが写真で確認できる。
ブレスト・リトフスク戦時と言われる写真で見る限り,
III号車では旧型が用いられているようである。
- セバストポリ戦時の写真以後は排気管が長い。
- 車体後面のOVMの取り付け位置はI号車と同様(Fig.2.a)。
- 輸送貨車と連結する制動パイプがある(Fig.2.b)。
- 車体前面の梯子は車体中央より向かって右より(Fig.2.b)。
- 車体前面に用途不明の構造物がある。
II号車が米軍によって捕獲された時点では,
車体前面にFig.2.bに示した以外にも特徴的な構造物が取り付けられていた。
詳しくは「謎の構造物」を参照のこと。
- 装弾トレイの支持架の形状が変更になった(Fig.2.e)。
II号車以降の車両では,
この支持架の砲架への固定方法はボルトではなく,
砲架上の受け金具にはめ込まれているだけか溶接されているようである。
またこの部分のリブは2本である。

(a) 車体後面

(b) 車体前面

(c) 車体右側面

(d) 車体左側面

(e) 装弾トレイ支持部
Fig.2 II号車の特徴
- III号車
1941年のブレスト・リトウスク戦時と言われている写真
(資料[18]p.129上, [32]p.98-99, [37]p.36-37, [40]p.2-4
など多数)では以下の点に特徴がある。
- 11転輪。
- 誘導輪が旧型。
写真で見る限りI号車と同じ旧型のように思われる。
- 輸送貨車と連結する制動パイプがない(Fig.3.b)。
取り付け用のボルトなども見当たらない。
ただし後から追加された可能性もある。
- 排気管が短い。
- 車体後面のOVMの止め具の位置,形状がI, II号車とは少し異なる(Fig.3.a)。
- 駐退器下側の大型のボルト・ナットは砲身に向かって左がナット,右がボルト(Fig.3.b)。
ナットは六角であるが,ボルトの頭は六角ではない。

(a) 車体後面

(b) 砲アセンブリ

(c) 手すり
Fig.3 III号車の特徴
- IV号車
セバストポリ戦時の写真
(資料[@], [32]p.85, p.126, [37]p.38-39など),
1944年夏の540mm砲装備時の写真
(資料[18], [27]Nr.32, [37]表紙, p.26-29など多数),
不鮮明ではあるがソ連軍に捕獲されたときの写真
(資料[18]p.138下, [38]写真18-19)
では以下の点が確認できる。
注:
資料[37]p.@中段左の脚注では,
写真手前の車両の砲身カバーに「IV」と「Karl」と書かれていると述べたうえで,
手前をIV号車と断定し,奥をV号車と推定している。
しかしこの砲身カバーには,脚注に記載されているような「IV」と「Karl」ではなく,
「Thor」と「4」と描かれているように見える
(カバーが上下逆になっているので読みにくいが,
本自体を上下ひっくり返してみると容易に判読できる)。
また,
これらの写真だけからでは奥の車両がV号車であるとする根拠はないように思えるので,
ここではIII, V, VIのどれであるか不明ということにしたい。
- 11転輪。
- 輸送貨車と連結する制動パイプあり。
- 排気管が長い。
- 車体後面のOVMの止め具の位置,
形状はほぼIII号車と同様であるが微妙に違う点がある(Fig.4.a)。
- 駐退器下側の大型のボルト・ナットは砲身に向かって左がナット,右がボルト(Fig.4.b)。
ナットは六角であるが,ボルトの頭は六角ではない。

(a) 車体後面

(b) 砲アセンブリ
Fig.4 IV号車の特徴
- V号車
1943年撮影といわれている一連の写真
(資料[@], [18]p.127下, [37]p.44-45),
1944年夏の540mm砲装備時の写真
(資料[27]Nr.32, [37]p.29-32など)
では以下の点が確認できる。
- 11転輪。
- 輸送貨車と連結する制動パイプあり。
- 排気管が長い。
- 車体後面のOVMの止め具の位置,形状はほぼIII,
IV号車と同様であるが微妙に違う点がある(Fig.5.a)。
- 砲架の鋳造部側面に一箇所縦方向に帯状の凹みがある(Fig.5.b)。
光線の具合や迷彩塗装で確認しにくい場合も多いが帯状の凹みは他の車両にはない,
V号車固有の特徴である。
- 駐退器下側の大型のボルト・ナットは砲身に向かって左がナット,右がボルト(Fig.5.b)。
ナットは六角であるが,ボルトの頭は六角ではない。

(a) 車体後面

(b) 砲アセンブリ
Fig.5 V号車の特徴
- VI号車
ワルシャワ蜂起時の写真
(資料[18], [27], [32], [40]など多数),
ソ連軍に捕獲されクビンカに持ち帰られた時の写真
(資料[24], [38]写真20-25),
およびクビンカ戦車博物館での現在の写真
(資料[15], [19], [21],
URL[2], [6], [7])
から以下の点がわかる。
- 11転輪。
- 輸送貨車と連結する制動パイプあり。
- 排気管が短い。
- 車体後面のOVMの止め具の位置,
形状はほぼIII, IV, V号車と同様であるが微妙に違う点がある(Fig.6.a)。
- 砲架の鋳造部側面に一箇所大きな傷もしくは鋳造欠陥と思われる凹みがある(Fig.6.b)。
このような大きな凹みは他の車両に見られず
(ただしIV号車の同じ部分にもわずかに同様の凹みがあるようではあるが)
VI号車を判別する上で重要な識別点である。
- 駐退器下側の大型のボルト・ナットは砲身に向かって左がボルト,右がナット(Fig.6.b)。
ナットは六角であるが,ボルトの頭は六角ではない。
- 車体前面に用途不明の構造物がある。
クビンカ戦車博物館に残る車両および1944年のワルシャワ蜂起時の写真では,
車体前面に特徴的な構造物が取り付けられていたことが確認できる。
詳しくは「謎の構造物」を参照のこと。
なおクビンカ戦車博物館に残る車両は,梯子など一部にソ連軍による改修,
修理が行われたのではないかと思われる部分があるので注意。
また新品受領直後と思われる2両が写っている数枚の写真
(資料[27]Nr.22 p.3469-3472, [30]写真534, 533,
[37]p.22-23, [39]p.59など)
があって特に車体に車両番号などは書かれていないが,
上記の特徴を考えるとV, VI号車であると見られる。

(a) 車体後面

(b) 砲アセンブリ
Fig.6 VI号車の特徴
- VII号車
VII号車であることが確実である写真はないが,
資料[4][18][37]に見られる,
米軍に捕獲され米本土に移送されたと思われる車両がVII号車だとするなら,
以下の特徴が認められる。
- 11転輪
- 輸送貨車と連結する制動パイプあり。
- 排気管は短い。
- 車体後面のOVMの止め具の位置,形状は不明。
- Geraet 040とGeraet 041
- 砲身が異なる。
- 砲尾のブロック上部の形状が異なる。
カウンター・バランスを追加したかのような形状である。
- 砲弾装填トレイの形状が異なる。
ローラー,ロッド,側面の穴など。

(a) 砲身,駐退器

(b) 砲弾装填トレイ
Fig.7 Geraet 040とGeraet 041
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