■ビッグブルーボーイ1/700キット■
ビッグブルーボーイは, 2011年ごろから活動している, 割と新しい中国のメーカーである。 日本では同社の製品についてはあまり聞かないような気がする。 2013年の春現在で,まだ製品数はあまり多くないが, 主に1/700の艦船模型用のエッチング・パーツや金属製砲身を製造しているようである。 そんな中になぜか陸上兵器であるカール自走臼砲とK5(E)列車砲の 1/700エッチング・キットが混じっている。 いずれも既存の他社キットのディテールアップ製品ではなく, エッチングと金属砲身から構成されるフル・キットである。 レジンやプラスチックのパーツは一切ない, 純粋な金属キットとなっている。
カール専門の当サイトとしては, 早速70013と70014を入手してみた。 70013は射撃状態の54cm砲搭載のカール本体1台とIV号弾薬運搬車2台, 70014は専用輸送貨車に搭載された60cm砲搭載のカール本体と線路のセットとなっている。 エッチングは薄いフィルムで保護されているため, パッケージ内では青っぽく見えるが, フィルムをはがせば普通の真鍮製である。 かなり薄手の真鍮板なのでフィルムを剥がす時は慎重に。
車体,砲架はエッチング・パーツを曲げた箱組み, 砲身は真鍮挽物である。 車体両側の作業デッキの手すり, 車体前後の梯子などもエッチングならではの繊細さで再現されている。 板厚が薄く,折り曲げ部分はさらに薄くエッチング加工されていたり, 曲げやすいようにミシン目が入っているので, 曲げ伸ばしを繰り返すと簡単に切れてしまうので注意。 またパーツ同士の接合のための「シロ」はほとんど用意されていないので, 瞬間接着剤やエポキシ接着剤を用いる場合には, 見えないところにプラ材やエッチングの端材で補強を入れてやるとよい。 物が小さいので,ハンダ付けで組むのはかなり困難に思われる。 少なくとも私にはできそうにない。 70013の砲身は54cm砲,70014は60cm砲であるが, 両方を購入すれば交換して取りつけることも可能である。 履帯を含む足回りは複数枚のパーツを重ね合わせて厚みをだすようになっている。 両方のキットともに, 足回りパーツは, カールNr.IとNr.IIの8転輪タイプとNr.III~VIの11転輪タイプの2種類が用意され, 選択式になっている。 70013のカールは射撃状態, 70014は貨車輸送状態を再現しているので, いずれのキットでもサスペンションは解除された状態を再現している。 このため,これらのキットを使って走行状態のカールを作ることはできない。 とは言っても,1/700ぐらいになってしまうと, 射撃状態なのか,走行状態なのかパッと見た目には区別がつきにくいので, このままで走行状態「のつもり」で飾ってもいいかもしれない。 砲弾はどちらのキットにも含まれていない。
70013にはIV号弾薬運搬車が2両付属する。 部品分割はよく出来ていて, それらしい弾薬運搬車が出来上がる。 組立説明書では, 弾薬庫は上部のハッチが閉じた状態を図示しているが, 下の写真のように開けた状態に組むことも可能である。 ただしキットに砲弾は含まれていないので, 空っぽの弾薬庫が寂しければ, プラスチックもしくは金属材料の丸棒などで自作するしかない。
70014には, 直線路2本,分岐路2本とターンテーブル, さらにおまけとして(?)信号機が数本がついてくる。 土台は特に用意されていないので, 自分で適当に土台をつくって線路を好きなように配置してね, ということなのだろう。 同スケールのカールのキットと言う点では, ピットロードの1/700キット との比較は避けられないところである。 ピットロードの製品はホワイトメタル製であるため, 表面のディテールでは, エッチング・パーツからなるビッグブルーボーイのキットの方に軍配があがる。 1/700というスケールを考えれば, 正確に再現できるディテールにもいろいろと制限があるのはいたしかたないところであるが, ビッグブルーボーイのキットは頑張ってそれらしく出来ている。 組んでみると,「折り紙」ならぬ「折り金」の趣きで結構楽しめるキットである。 なぜ1/700のスケールなのか, なぜ他に陸物のキットを出さずにカールとレオポルドだけ発売するのか, 全部のパーツをエッチングにせずに, 車体などはレジンやホワイトメタル製としたほうが組み易いキットになったのではないか, など,疑問な部分もあるものの, 異色のキットということでカールのファンとしては素直に喜んでおきたい。 Home
Created: April 21, 2013. Last Update: |