■トライデント・ミニアチュア 1/87(HO)キット■


87030 Karl Moeser Geraet 040

87031 Karl Moeser Geraet 041

87032 Munitionstraeger Pz.IV

オーストリアのトライデント・ミニアチュアからは1/87のGeraet 040, Geraet 041, IV号弾薬運搬車のレジン・キットが販売されている。 掲載した写真の物はすべて化粧印刷されたパッケージに入っているが, 他に(レジン・キットにふさわしい) 無地のダンボールの小箱に収められて流通している場合もある。

トライデントはもともとインジェクションやメタル製の1/87キットを販売してきたメーカーで, 近年はMilitary Depotなる東欧(チェコか?)のメーカーからレジン・キットのOEM供給を受けているらしい。 このためカールのキットも開発はトライデント自身ではなく, Military Depotによるものである可能性が高い。 なおトライデントのウェブ・サイトのカタログには, 2003年7月現在これらのキットは記載されていない。

カール本体は8転輪のシャーシをモデル化している。 転輪は下がっており,自走状態になっている。 Geraet 040と041のキットの相違点は砲身部分のみであり,他はすべて共通である。 部品点数は約70点。 成型状態は良好で,気泡もほとんどなく, モールドもエッジがはっきりしたおり印象は良い。 車体本体や足回りの大型部品の歪みもほとんどない。

その一方でOVMや各部のディテールは思い切って省略されている部分が多く, 全体に昔のロコの1/87キットを見ているような印象がある。 小物や細い部分の一部についてはエデュアルドのエッチング・パーツが入っている。 砲身昇降用の大きな丸ハンドルがエッチング・パーツになっているのはありがたい。 梯子,手すりもエッチングで供給されているが, 実車ではこれらの断面は丸いから,気になるなら真鍮線かプラ棒で作り変えるのがよいだろう。 転輪とキャタピラは一体成型である。 キャタピラ表面には一応モールドがあるが,彫りも浅く,側面にはディテールもないので, 帯状のゴム・キャタピラを履いているように見えてしまうのが残念。

省略されているディテールが多々あるため, キットをそのままの素組みで楽しむ,というのは難しい。 キットは「素性の良い素材」と考えて, 細かい部分の自作を楽しんでやろう,というぐらいの気持ちが必要である。

また(他の多くのカールのキットでもそうであるが) 車体左右で配置が対称になっていない転輪配置が正しく表現されていない, 車体左右の作業デッキが車体上面と同じ高さになっている, 円筒形のグリルの車体側面への張り出しがない, などの難点もある。

IV号弾薬運搬車もかっちりしたモールドで好感が持てる。 OVM類はほとんど含まれていない。 一応シャベルとワイヤー・カッターがエッチング・パーツで含まれているのだが, あまりできもよくないので, もし適当なキットがあればそちらから流用するのが良いかもしれない。 部品は約40点。 クレーンの表現に一部不満もある (支柱が細すぎ,クレーン基部のモーターやギヤボックス部分の高さが高すぎる)が, 全体によくまとまっており, 1/72のハセガワのキットよりも出来は良いと思う。

どのキットもバリや気泡,成型不良は少ない。 下の写真は87031 Karl Moeser Geraet 041である。


■製作記■

パーツの印象が良いので手をつけ始めましたが… 小物やディテールに省略されている部分が多いため, 結構手間がかかりそうで長期戦の予感です。 転輪配置や作業デッキなどの基本形状の修正はスッパリ諦めますが, ちまちまと小物部品を自作して追加します。

設定としては1944年に54cm砲身を搭載したNr.I Rexにすることにします。 Nr.IはAdamと呼ばれていた時期があったことは確実ですが, 資料[38] によれば1944年撮影の写真ではRexと指摘されています。 残念ながら書籍に掲載の写真ではこの車両は遠景に小さく写っているだけなので 「Rex」の文字を確認することはできないのですが, オリジナルの写真では(きっと)判読できるのでしょう。

芋羊羹をスッパリと切ったような車体後面。 下部のアールがないので削りこんでやり,シャックル受けをつけます。 この部分は実はエッチング・パーツが含まれていたのですが, どう考えても薄すぎです。 ここは厚みとボリュームのある目立つ部分なのでプラ板で自作しました。 (でも少し大きくなりすぎてしまったようです…) ハシゴはまだ基部しかつけていません。 下面には半円筒形の大きな突起をつけます。 これは実車写真では見えにくい部分で, これまできちんと再現していたキットはないのですが, クビンカに残る車両でははっきり確認できます。

何もない車体前面。 ここに大きな湯口があったためディテールのモールドは一切ありません。 ハッチ類をつけてやり,車体後面同様シャックル受けを自作します。

砲身および駐退器まわり。 ロッド類,ボルト類や配線などなど自作したディテール以外にも, 砲尾のブロックの面取りなどの工作をしました。 540mm砲身の砲尾ブロックは600mm砲身とは形状が異なるのですが, その部分の工作はまだしていません (正確な形状が今ひとつはっきりしないのが頭が痛いところなのですが…)。

下部に砲身昇降用の大型ギヤがあるわけですが, キットでは大胆にも省略されています。 これでは砲身を上に向けられません! どのみち足回りは走行状態なので,砲身は水平で固定することでギヤは無視, ということにしてしまいました。

砲架部分。 鮮明な写真があるにもかかわらず, ハセガワのキット以来ここの部分を正確に再現しているキットは数少ないのが不思議です。 トライデントのキットもあっさりとしたものです。 二つしかパーツがありません(表面のリベットのモールドはがんばっていますが…)。 大部分は見えなくなるので割り切るしかありません。 見える部分のみそれらしく仕上げることにしました。 白い部分がプラ板,金色部分は真鍮線です。

ご覧のように自作して追加した部分がかなりあることがわかると思います。 特に車体や砲まわりの表面の補器類などはほとんど自作です。 寸法などは細かいことを詮索せずにえいやっと現物合わせででっち上げています。

ほぼ工作を終えた状態です。 まあはっきり言って飽きてしまったので, 適当に力を抜いてこんなもんで作業打ち切りにしました。 とにかくディテールが何もないに等しいキットなので, いくらでも作りこんで楽しめる反面, 「いつまでたっても終わらない」キットです。

折りたたみ式作業デッキ部分。 キットは滑り止め板が片側4分割された形でパーツ化されており, ちょっと不思議な部品構成になっていました。 キットのパーツを生かしつつ自作しました。 キットにはエッチング製の手すりが入っていましたが, 本来は丸棒でできているものですので全面的に作り変えるべきでしょうが, もう気力がなかったので, 部分的にエッチング・パーツに真鍮線を半田付けしてそれらしくごまかしました。

車体前後の梯子は真鍮線,プラ棒で自作しました。

転輪,キャタピラなど全部一体成型の足回り。 キャタピラがいま一つな印象です。 最近は1/144でももっともらしいモールドのキットや完成品が出回っているので, もう少しなんとかという気もします…


主要な部品を仮組みした弾薬運搬車。 カール本体同様,湯口が大きく,部品の切り出しにはゴリゴリ切った削ったを繰り返しました。 なかなかいい雰囲気です。 ただ, クレーンの支柱が細すぎるのと, クレーン基部のウィンチのモータ(?)回りの構造物の高さが高すぎる感じがします。 支柱はプラ棒で作り直すことにしますが,基部の高さの修正は諦めます。 なお車体上面に操縦手用ハッチがありませんが,キットにはちゃんとモールドがありました。 湯口処理の関係で削り落としてしまったので,あとで再生するつもりです。

キットには車体下部前面部分に増加装甲をボルト止めしたようなモールドがありました。 あるいはE型の車台のつもりなのかと思いましたが, 車体の他の部分の特徴がF型車体になっているのでボルトのモールドは削り落としてあります。 また車体上部右側のクレーンの直下にクラッペ (というかこの車両の場合は単なる「窓」なのですが) のモールドがありました。 実車にはこの位置にはないものなのでこれも削り取りました。

ほぼ組み立て完了。 一部をプラ材(白い部分),真鍮線で作り変えたり,ディテールアップしてありますが, 基本的なパーツについてはキットのままです。 クレーンのワイヤは0.3mmのソフトワイヤを使いました。 ソフトワイヤは取り回しは楽なのですが,ピンと張るのは難しく, ちょっと撚れたようになってしまいました。 できてみるとクレーンが実車のイメージとやはりちょっと違うように思います。

変更点,ディテールアップ・ポイントは以下のとおりです。

  • 操縦手用ハッチとその後ろのハッチをプラ材で。
  • クレーン・アームをプラ丸棒で作り変え(キットのレジン・パーツが変形していたため)。
  • クレーンの支柱が細すぎたのでプラ丸棒で作り変え。
  • 弾薬庫後面の座席と足置き(?)の寸法を調整。
  • クレーン用(戦車型では砲塔旋廻用)補助エンジン・マフラーが省略されていたので再現。
  • 車体工面にラジエータ・ファン・ベルトのアクセス用の丸ハッチを再現。
  • 車体右側の折りたたみ式作業デッキの支柱は, キットのエッチング・パーツは使わずに真鍮丸棒で作り変え。

※このトライデント製の1/87弾薬運搬車と ドラゴンの1/144弾薬運搬車のキットを比べると, 全体のデッサン, 細部の解釈(形状や省略部分)などが驚くほどよく似ていることに気が付くと思います。 コピーではないのか,という疑問も沸きますが, 発売はトライデントのキットが2002年, ドラゴンの方はその3年後の2005年です。


■メーカー・サイト■

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Created: July 13, 2003
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