■シュミット・モデル1/35キット■


1165: 60 cm Moerser "Karl"

このキットは私にとっては長らく「幻」のキットだった。 大日本印刷の「Panzer File」 などから存在だけは知っていたものの実際に目にしたことはなかったのである。 つい最近運良く入手することができたのでようやく紹介できる。

シュミット・モデルのキットは,1/35スケールのカールとしては最初のものである。 現在シュミット・モデルは活動しておらず, ドラゴンを初めとしたインジェクション・キットがある以上, 残念ながらこのキットは歴史的な意味しかないコレクターズ・アイテムである。 現在のように質の高いガレージ・キットやディテールアップ・パーツが出てくる以前の時代の製品だけに, あまり厳しいこと目で見ては酷ではあるし, ガレージ・キットというジャンル自体, 始めはある程度以上の技量と根性がある人間を対象としていたわけだから, このキットの素朴なパーツを鑑賞しながら「今はいい時代だなあ」としみじみ感じるのが 「正しい」態度だろうか。

バキュフォーム,レジン,プラ棒,金属線,真鍮メッシュ,ポリ・キャタピラ, といった複合素材のキット,と書くとすごそうであるが, 実際にパーツを目の前にすると呆然としてしまう。 発売当時にこのキットを手にした人の中で実際何人が完成させただろうか。 「キット」というよりはスクラッチ・ビルドのための「素材」と考えたほうがよい。 相当な覚悟がないと取り組めないだろうし, また実車に関する資料なしに, キットに付属の説明書のみに頼っていては完成はおぼつかないと思う。

車体,駐退器まわり,砲尾ブロックはバキュフォーム・パーツからの箱組みで, はっきり言ってキットのパーツを型紙にしてもっと厚いプラ板を切り出してスクラッチした方が… と思わせる。 砲耳,転輪や吊り下げフック部分はさすがにレジン・パーツになっていて, これだけはフル・スクラッチをするよりはこのキットを使うありがたみがある。 ただし片面取りによる成型で,表面のリベットなどのディテールもない素朴なレジンの塊である。 キャタピラはなんとイタレリのエレファントのものが1.5台分そのまま入っている (もちろんカールのキャタピラはエレファントのものとは全く異なる)。 ものすごいのは砲身で, 水道管に使うような塩ビ・パイプを芯にして,その周りにレジンを成型してある。 塩ビ・パイプの余分な部分は切り落とせ,という指示があるのだが, かなり豪快かつ小汚い(!?)外見の部品であり, 私は始めゴミが間違って同封されているのかと思ってしまった。

シュミット・モデルは,カールの相棒であるIV号弾薬運搬車のキットも発売していた。 イタレリのIV号戦車用のコンバージョン・キットであった。 これについては 「IV号弾薬運搬車」の項を参照して欲しい。

最近は昔のキットを当時を懐かしみながら紹介したり製作する雑誌記事などがよく見られるが, このキットに関してそのような記事が発表されることがあるだろうか。 私は入手することはできたが残念ながらまず間違いなく作ることはないと思う…


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