■ハセガワ1/72キット■

Part 1

■8転輪シャーシ製作記■

1/72ミニボックスシリーズNo.32
ドイツ600mm自走臼砲「カール」貨車付
1/72ミニボックスシリーズNo.33
ドイツ「カール」&4号特殊弾薬運搬車

巷ではドラゴン,トライスター, トランペッターから発売が予告された1/35のキットが話題になっていますが, これまでカールの唯一のインジェクション・キットであったハセガワの1/72キットを組んでみました。

発売は70年代後半で,もはや25年選手のキットですが, 当時はレオポルドに続く大物として多いに話題になったことを覚えています。 No.32の列車輸送状態とNo.33の自走状態の二つのキットが出たことにもびっくりしました。 AFVブームの最中だったからできたことだったのかもしれません。

クビンカ戦車博物館に実物が保存されているなど西側には全く知られていなかった当時のこと, 資料も少なく製品化には苦労が多かったろうと思います。

ハセガワのキットを組むのは発売当時に続いて2度目なのですが, 25年以上を経て資料や写真もいろいろと出そろってきていることから (まだまだなぞの部分は多いですが),今回再度挑戦してみました。


今回の製作上のポイントは以下のとおりです。

  • 基本形状の誤りを修正する。
    開発時に参考にできる資料が少なかったため,いたしかたなかったと思うのですが, ハセガワのキットには重大な基本形状の問題点がいくつかあります。

    1. 実車は車体左右の車輪の配置は,トーション・バーの関係で左右非対称になっているのだが, キットでは左右対称になってしまっている。
    2. 車体左右の作業用スペースとなっているデッキ部分が, 車体前方(カールは砲身が向いている方向は後ろ!)では車体上面から一段下がった位置にあるのだが, キットでは上面とツライチになっている。
    3. カールは射撃時に砲架自体が車体に対して後座する構造になっており, このため車体中央には巨大な風呂桶状にぼっかりスペースが空いているが, キットは車体上面は密閉された形状になっており,かつ砲架が車体に固定されるように表現されている。 また実車は鉄道輸送時および自走時には砲架を後座した状態で固定するため, 射撃時と輸送時・自走時では砲架の位置が異なる。 ハセガワのキットではNo.32も33も砲架が後座した位置で固定になっている。 このためどちらのキットも大幅な改造なしには射撃時の形態には組めない。 ところがNo.33の箱絵では砲架は射撃位置でサスペンションも上がった射撃状態に描かれており, この格好に組めると誤解しやすい。 おまけにNo.33の組立説明書には, サスペンションを上げた状態のパーツ(No.32の足回りパーツ)をメーカーに請求すれば 射撃状態に組み立てることができる,という記述まである。 カールについてよくわかっていなかった昔のキットとは言え,この点は誤りであるので要注意。

    他にも細かい問題点もありますが,一応上記の点が一番目に付く部分なのでこれを修正し, その他の部分は無理せず極力キットのパーツを活かしつつ修正とディテール・アップを図ることにします。

  • I号車の完成直後の状態を再現することとし,自走状態に組む。
    生産数が少ないので製作に当たっては,何号車のいつの状態, というような考証をすることができるので, 今回作製するのは1940年に引き渡されたI号車にしてみることにします。 この頃の撮影と思われる写真は鮮明なものが何度も発表されているので作り易い, I号車はキットと同じ8個転輪がある車体である,というのが理由です。 ベースとするのは,サスペンションが自走状態となっているNo.33のキットの方です。

今後はa)II号車(と思われる車体)の列車輸送状態, b)IV号車(Thor)のセバストポリ攻撃時の射撃状態, c)III号車(と思われる車体)のブレスト攻撃時の射撃状態, d)V号車(Loki)の540mm砲を装着した状態, e)VI号車(Ziu)のワルシャワ蜂起鎮圧時の射撃状態, なども作ってみたいと思います。 そのうちのいくつかは1/35で組むつもりです。


■足回りの修正

11個転輪がある車体にするとなると足回りはほぼスクラッチ・ビルドしなくてなりませんが, I号車は転輪が8個のタイプなので,キットが有効活用できます。 実車写真を検討すると,キットの車体右側面の転輪配置は正確にできているので, 左側面を修正することになります。 ただしディテール・アップを考えると右側面も結局一度モールドを切り離して製作し直すことにしました。

キットの状態
箱状の車体部品に足回りを貼り付ける構成になっているので,改造は難しくありません。 車体左右の転輪の配置がキットでは左右対称になってしまっていることがわかります。 転輪,駆動輪,誘導輪を切り離します。

手を入れたパーツ群
細かいことを言うと,駆動輪,誘導輪のモールドに少し不満がありますし, どうも誘導輪はちょっと大きい感じがするのですが,今回は目をつぶることにしました。 また駆動輪の歯の数は実車では17枚, キットは15枚になってしまっているのですが我慢することにしました。 ただどういうわけかキットの起動輪とキャタピラはちゃんと噛み合いません。

仮組みした状態
転輪の位置が左右でずれていることがわかると思います。


■車体上面の修正

中央部の「風呂桶」部分の修正と左右の作業用デッキの修正を一度にやってしまいます。 修正するとキットよりも大きな穴ができるので, 車体内部も何か作り込んでやらないとさびしくなります。

キットのパーツ
見えにくいですが,鉛筆で斜線を引いてある部分がカットする部分です。

車体の基本型の完成
かなりの部分のモールドを削ってしまったので, こうなるとキットのパーツを使わないでプラ版で自作してもおなじだったかも。 転輪類はあとでつけるので写真では側板だけ装着した状態です。

車内は前後に筒抜けにならないようにバルクヘッドをつけました。 あとでトーション・バーやらを入れてそれらしく仕上げます。


■砲架回りの修正

これは結構大仕事になってしまいました。

後座した状態で砲架と支持部一体成形されてしまっているキットのパーツ。 使える部分だけ切り出して,あとは作り直しになります。

修正したり自作したパーツ類
厳密に言うとこれでもまだ実車と違いますが, 完成時に見えなくなる部分については適当に割愛しました。 車体側はこれで基本型は完成です。

仮組みした砲架
砲身と駐退器回りはこれからです。 車体と砲架を組み合わせるとだんだんと全体の形ができてきていることがわかります。


■砲身と駐退装置

ハセガワのキットは尾栓がないため,砲身が筒抜け状態になってしまいます。 実車写真を参考にそれらしく作ってみました。 あと各部のディテールを自分の気力と時間と技量の範囲内で作ってみます。 砲身はカールの顔でもあり,私のイメージを反映させるべく削ったり盛ったりしてみました。 砲身は砲尾を再現するために後ろの部分を切り離します。 また砲身外筒のテーパーが少しきついように思うので一度切り離して加工することにします。

完成した砲尾
砲身はキットではスプリングを仕込んでパカパカ動かせるのですが, 走行状態を作っているので固定してしまうことにしました。 一部のモールドは削ってあとでディテールをつけてやることにします。

砲身内筒が細いような気がしてプラ版を巻いて一回り太くしてから削り込んでそれらしい形状にしました。このため砲身が砲口側と砲尾側で太さが違っています。 もちろん実車ではこんなことはありません。

表面の配線(?)などはこれからですが,そこそこディテールをつけた状態。 ボルトの頭の形状など実車と違う部分もありますが, まあこの程度で満足することにしました。 パテで荒れた鋳物肌を再現してみました。 砲身外筒部分も一部は鋳物のようです。


■これからディテール・アップ...

基本形状はできたのであとは細部を作り込んで行きます。 まだまだ作業途中です。

9 March 2003
接写しているのでちょっと歪んだ画像ですが,全体の雰囲気はこんな感じです。 キットをもとにして自作部分の寸法を決めましたが, どうも実車と位置関係が違う部分ができてしまいました。 ちゃんと全体の図面を起こしてからやるべきだったかとちょっと反省。 でもクビンカまで行って採寸したわけではないし, 厳密に寸法を合わせることは目標にしていなかったのでまあ勘弁して下さい。

ハセガワのキットそのままと比べると,砲身をいじったせいで少し雰囲気が違うでしょ。 先端部分のテーパーが少々きつすぎた気もしますが, 私のもっているイメージにはしっくりくるのでこれで満足です。

24 March 2003
遅々として進まず。 年度末なもんで。

うーむ,毎度のことながら思ったようには工作できないのがもどかしい...

13 April 2003
なんとかここまで来ました。 OVMがまだ一部残っているのと, 配線,リベット打ち(目立つところだけ)などを済ませておしまいにするつもりです。

操縦席もそれらしく手を入れています(正確ではないですけど)。 車体中央内側に関しては完全なフィクションです。

ラジエータ(?)の円形排気グリルは格子の形状が特殊なため, 困ったあげく結局形が違うことは承知の上でメッシュに置き換えてしまいました。 それでも一応少しでも実車の形状に近くなるように, 正方形ではなく長方形のメッシュにを選んでみました。 キットのパーツも頑張って再現しようとしていますが, いかんせんこのスケールでは厳しかったようです。

メッシュについて 20 Apr 2003追記
ファイン・モールドから, 車・バイクのキット用にラジエータ・グリルのエッチングが売られていて, これを使ったほうがそれらしくなったようです。 今日某ショップの店頭で気が付きました。後の祭り...およよ。

エンジン上の吸気(?)グリルもキットの形状は少し実車と違うのですが, モールドがきれいなのでそのまま使うことにしました。 実物は一回り小さく全体に丸みがあります。

車体左右の折畳式のデッキは, 自走状態では折りたたんでいる場合も展開していている場合もあるはずですが, 今回は折りたたんだ状態にすることにしました。 No.32の列車輸送状態のキットの方にはこの折りたたんだ状態のパーツが含まれていますが, No.33のキットでは展開した状態のパーツになっています。 このパーツだけのためにNo.32のキットをつぶすのは惜しいので, 展開状態のパーツを利用して工作しました。 見せ所は折りたたんだ手すりです。 それっぽくできたつもりですが,いかがでしょう。


■一通り工作を終えて

もうちょっとこうした方が…という部分も多いのですが, 本当に徹底的に手を入れようとするとほとんどスクラッチに近い状態になってしまうので, 極力キットのパーツを活かす,という当初の方針どおり, 少々変でもキットのパーツを使ってここまで来ました。 自分としては随分印象もよくなったと満足しています。あとは塗装です。


■塗装をどうしようかな

I号車の完成当初の状態のつもりなので, 塗装はダーク・グレー(RAL46)の単色で一切マーキング類なし, と味もそっけもないものになります。 が,どうもI号車と思われている写真を良く見ると, なにやら迷彩塗装が行われているのではと思えてきました。 光線の具合とかグレーの塗装のムラ(?)という可能性もありますがね。

1940年の春から夏頃という時期を考えれば,まあ可能性がある, ということでダーク・グレーとダーク・ブラウン(RAL45) の2色にするというのはありかもしれません。

現状(20 April 2003)
結局ダーク・グレーの単色塗装です。 写真はダーク・グレー+つや消し黒で下塗りしてから少し明るめにしたダーク・グレーを吹いた状態です。 厄介なポリ製キャタピラは(気休めに) FRPやPP用としてホーム・センターで売っていたプライマを塗ったあとにハル・レッド+つや消し黒を塗装。 パステルを少しまぶしてあります。

さてこれからどう仕上げてゆくかですね。 1/72ということもあり,ウォッシングすると真っ黒けになってしまいそうだし... ちょっと思案中。

以下続く...


■レビュー,製作記事■

古いキットであるため,レビュー記事もどれも古いものであるのはいたしかたない。

  1. PANZER, No.16, 12月号, サンデーアート, 1976.
    貨車輸送状態(No.32)の紹介記事。

  2. モデルアート, No.119, 1月号, 1977.
    貨車輸送状態(No.32)のレビュー記事。

  3. ホビージャパン, No.89, 1月号, 1977.
    貨車輸送状態(No.32)のレビュー記事。

  4. PANZER, No.31, 3月号, サンデーアート, 1978.
    IV号弾薬運搬車つき自走状態(No.33)のレビュー記事。

  5. 戦車マガジン, Vol.11, No.3, 1988.
    貨車輸送状態(No.32)のレビュー記事。


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Created: February 27, 2003
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