■カールの図面(?)■

ここに掲載する4枚の図面は, カールの原図面かもしくは原図面からトレースしたものであると考えられる。 2003年秋eBayにてオランダのコレクターから入手した。

このコレクターは, 数年前にテクニカル・イラストレーターから旧ドイツ軍の野砲,対戦車砲,対空砲, 列車砲などの火砲の図面の膨大なコレクションを買い取ったそうである。 カールの図面はその中の一部だったという。

テクニカル・イラストレーターはもともとクルップ社の元社員からこれらの図面を入手した ということであるが, ラインメタル社の設計であるカールのような, クルップ社以外の火砲の図面がなぜコレクションに入っていたのか, 入手の経緯については定かではない。

コレクションの中には,カール以外にもラインメタル社の図面があり, それらにはラインメタル社のスタンプが押印されているそうであるが, この4枚のカールの図面にはそのようなものはなく, その意味で本当にラインメタル社で作成されたものであるのか100%の確証はないと言わざるを得ない。 しかしこのうち2枚については,資料 [32] にラインメタル社提供と明記されて掲載されている図面と同一であるので, 内容的には間違いはないと考えてよいと思う。

4枚の図面はいずれも横1m強,縦70cm以上,と大きなものだが, それぞれ微妙に寸法が違っており中途半端な印象を受ける。 場合によってはさらに大きな図面の一部を切り取ったものである可能性があると思う。 もしそうなら, ラインメタル社のスタンプがなかったり, 工業図面であれば当然あるはずの表題などが見当たらないことの説明もつくだろう。

オリジナルと思われるカールの図面については, 輸送貨車に搭載された状態の有名な図面が, 資料 [23] [29] [31] [55] などに, また資料 [27] [32] [37] には走行系や内部の断面図など多数の図面が公表されている。 資料 [25] [26] にも興味深い側面図などが掲載されている。 資料[32]の図面については, ラインメタル社の提供であることが明記されている。 他の資料の図面はラインメタル社に残るものか, 米国アバディーン試験場にあるとされている資料(マニュアルを含む)が出展と思われる。

今回入手した4枚の図面には特に重大な新発見や新事実はないものの, カール臼砲の異様の一端を今日に伝える貴重な資料であることには代わりない。


図面1(左)
8転輪シャーシの足回りの側面図と断面図。 断面図の方は,資料 [32]50ページの図面と同一である。 輸送時と射撃時にサスペンションを解除するための内部機構を示すための図面と思われる。 車体内部のリンク機構によってトーション・バーの基部を回転させて転輪を引き上げる仕組みがわかる。 また引き上げた状態で外側のスイング・アームの先端を車体前後に走るレール部に固定するための金具があることが示されている。

車体前部(操縦席側)にはエンジンが描かれているが型式は不明である。 カールに搭載されたとされているMB503もMB507もV型12気筒なのだが, この図面のエンジンはあまりV型エンジンのようには見えない。

図面2(右)
操縦席付近の断面図。 資料 [32]52ページの図面と同一である。 また類似の図面は[37]19ページにもある。 この図面の左下にもエンジンが描かれているが, 1枚目の図面と同様に型式不明である。

図面3(左)
車体上前部(操縦席側)の断面図。 操縦席とその隣の円筒形をしたラジエーター排気口(?)の断面が示されている。 ラジエーター排気口は車体側部に張り出していること, 車体側面の作業デッキの位置関係などがわかる。
図面4(右)
貨車輸送時の足回りを示す図面と考えられる。 サスペンションを解除し, 履帯が垂れ下がらないように車体側面の小型ウインチで吊っている様子がわかる。 また側面のダンパのように見える部品は, ダンパではなく, この状態にした時のスイング・アームのストッパーであるらしいことがわかる。


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