■クレマイヤー・トレーラ■
カールを分解して路上運搬するときに用いられたトレーラである。
1930年代にドイツ国鉄は,
鉄道車両を路上運搬するためにこのタイプのトレーラを開発した。
このときのドイツ国鉄の技術者であった
Johann Culemeyerにちなんで
Culemeyer StrassenrollerとかCulemeyer Strassenfahrzeugなどと呼ばれている。
製造はGothaer Waggonfabrikで行われたため,
一部の資料ではこのトレーラのことを「ゴータ社製トレーラ」と呼んでいる場合もある。
開発の経緯からしてもともと軍用として設計されたものではないはずであるが,
重車両の運搬用としてドイツ軍では重用していたらしい。
気をつけて探すと,タイガーやE-100などを載せている写真を見つけることができる。
ただし,車輪の径や車高からみて,あくまで路上を走行することが想定されており,
路外などの不整地を走ることは無理だったであろう。
実験場や工場内ならまだしも,
前線での使用にはかなり制限があったと思われる。
また鉄道車両の運搬用として考えられていたためだろうが,
車幅は鉄道の軌道幅に合わせて設計されており,
タイガーやカール等の車両を載せた場合,かなり左右にはみ出してしまうから,
気をつけないと輸送中にバランスを崩してしまうのではなかろうか。
クレマイヤー・トレーラには数種類形態の異なる物が存在したらしい。
運搬する物によって前後二つの車台をバーで連結したり,
二つを直結したりして用いられたようだ。
カールの場合,砲身,砲架,駐退器上部,砲弾装填トレイ,
砲弾の運搬には4軸16車輪のものが,
カール本体には6軸24車輪のトレーラが用いられた。
クレマイヤー・トレーラの牽引にはケールブル社のトラクタが用いられることが多かったらしい。
このトラクタも特に軍事用というわけではないがドイツ軍で用いられていた。
前線でのカールの運搬には12トン・ハーフトラックや18トン・ハーフトラックが用いられ,
ケールブル・トラクタが使われることはなかったようだ。
このトレーラーは軍事車両ではないので,
戦後も1960年代頃まで製造は続けられ,
その後も1990年代初頭頃まではドイツ国内の鉄道関係で用いられていたらしい。
戦中,戦後を通してサイズの異なる物が数種類製造されたようだが,
その詳細については今後の研究課題としたい。
米国アバディーン試験場には,
12.8 cm Flakzwilling 40を積載した6軸24車輪のクレマイヤー・トレーラが展示されているらしい。
またドイツ国内では戦後も使われていたことでもあるので,
彼の地の鉄道関係の博物館に現存していてもおかしくないと思うのだが,
今のところ調べがついていない。
■参考サイト
DIE EISENBAHN INS HAUS
http://www.hs-merseburg.de/~nosske/EpocheII/zg/e2z_wcsr.html
Der Culemeyer-Roller
http://mitglied.lycos.de/railcard/riedelfoto37.htm
Culemeyer in Aschersleben
http://members.aol.com/mario2asl/culemayer.htm
Culemeyer-Strassenroller
http://www.hs-merseburg.de/~nosske/EpocheII/vk/e2v_csr1.html
■クレマイヤー・トレーラのキット■
残念ながらインジェクション・キットは存在しないが,
レジン・キットは主要なスケールで揃っている(2006年夏現在)。
ミニアーチャー・モデルズのキットは4軸16車輪のタイプ,
エリテ・モデル,
スケール・モデル・アクセサリからは6軸24車輪のタイプが発売されている。
Haulerとヴェスペ・モデルは両方のタイプのモデルを製造している。
またここには取り上げていないが,
鉄道模型やミニカーのメーカーからも各種スケールのモデルがでている。
かなりの数にのぼるようなので,鉄道マニアの間ではよく知られた車両なのかもしれない。
-
ミニアーチャー・モデルズ1/35
MIM 35008 Culemeyer 4 Axles Heavy Trailer
MIM 35007 Kaelble Z6V2A Prime Mover
|
ミニアーチャー・モデルズのレジン・キットはさほど部品点数も多くない。
入手したキットには目立った歪みもなく,成型状態は悪くなかったが,
一部の部品(ホイール内側のステアリング用のロッド取り付けのステーなど)
に破損があったり,細いロッド類はちょっと使えないかな,という状態だった。
またよくある話だがインストラクションはA5の片面印刷1枚のみで
よくわからない部分がある。
16個もある車輪をきちんと接地させるのがポイントか。
ミニアーチャー・モデルズからはケールブル・トラクタのキットも出ている。
私はアメリカのショップ
Great Models
から個人輸入した(2003年2月)。
国内での取り扱いについては不明。
なお,ミニアーチャー・モデルズは2001年にヴェスペ・モデルズから分離した
ルーマニアのメーカーだそうである。
この運搬車には細部の異なる複数のモデルがあったのか,
カールの部品を運搬している写真を見る限りでも細部に違いがある物が存在する。
|
■レビュー記事■
-
http://www.panzer-modell.de/berichte/culemeyer_4achsig/culemeyer.htm
ドイツのサイトPanzer-Modellに掲載の記事(ドイツ語)。
-
エリテ・モデル1/35
3537 Kaelble Z6 V2A Zugmaschine
3538 Schwerlastfahrzeug 80t Modell 1935, Gothaer Waggonfabrik
3539 Sonderanhaenger 75t Modell 1941, Panzertransporter Deutsche Wehrmacht
|
エリテ・モデルからは二つのキットが販売されており,
3538の方は(本来の使用法である)鉄道車両の運搬モデル,
3539は戦車などの重量物の搬送モデルとなっている。
3539は3538に貨物搭載用のプラットホームを追加しただけであり,
トレーラ本体に関しては全く同一である。
ケールブル・トラクタのキットも出ている。
ミニアーチャー・モデルズと同じ型式のものをキット化しているのだが,
キャブや後部の形状が異なっている。
エリテ・モデルの製品は日本国内にも入ってきているが,
これらのキットについては見かけたことがなかったため,
メーカーに直接注文して入手した(2003年2月)。
キット3つと送料,通関手数料と関税の総額で3万円を超える買い物になってしまった(泣)。
当方が入手したキットは,残念ながらどれもあまり成型状態がよくなく,
表面や内部にかなり気泡が入っている。
車輪が円形になっていない,など部品の変形も結構あり,
かなりの部品を自作しないとならないかもしれない。
エリテ・モデルの他のキットは入手したことがないので,
これがこの会社の製品全般の品質であるのか,
たまたま当方の運が悪かったのかはわからない。
|
■レビュー記事■
-
http://www.panzer-modell.de/berichte/culemeyer80t/culemeyer.htm
ドイツのサイトPanzer-Modellに掲載の記事(ドイツ語)。
3539のパーツ(3538には左下のプラットホームと関連部品がない)
|
-
スケール・モデル・アクセサリー1/76
SSP010 German Kaelble Z6WA2 heavy six wheeled tractor
with 80 tonne Gotha trailer and ramps set
|
スケール・モデル・アクセサリーからは,
24車輪タイプのクレメマイヤー・トレーラとケールブル・トラクタのセットが販売されている。
車体やタイヤなどの主要部品はレジン,ハンドルなどの一部の部品がホワイト・メタル製となっている。
トレーラの車輪のステアリング機構などは一切省かれており,
かなりあっさりした内容である。
上部の大きなプラットホームの形状がエリテ・モデルなどとは少し異なっている。
エリテ・モデルの方の形状が,
カールを運搬している写真に登場するトレーラに合致しているのだが,
スケール・モデル・アクセサリーのキットの形状が誤りであるのか,
この形式のものも存在したのかはわからない。
(5-Jul-2003)
当方が入手したものはホイールがレジン製であったが,
メタル製の場合もある(もしくは「あった」)ようである。
|
■製作記■
とりあえずトレーラだけ組んでみました。
実車についての資料があまり手元にないため手の加えようもないのですが,
一応エリテ・モデルやミニアーチャ・モデルのキットを参考にして,
ちょこちょこ追加工作をしたり,
牽引用のロッドをプラ棒で作り直したりしました。
大きなプラットホームは,上面に何のモールドもない,のっぺりとしたパーツになっています。
もしかすると実際にこういうタイプのトレーラもあったのかもしれませんが,
あまりにも寂しいので,
エリテ・モデルのキットを見本に木板材を並べてみることにしました。
ちょっとスケール違いですが,ハセガワ1/72のカールを載せてみました。
砲身と砲架を外して,このような状態でランプを這い上がって乗ります。
実車はこの状態でサスペンションを解除して,
射撃状態のときと同じように「座り込み」ます。
トレーラの前後に大きくはみ出していますね。
これはスケールの違いによるためもありますが,
もともと実物でも転輪がギリギリでプラットホームに乗るぐらいなのです。
編成表によれば,18トン・ハーフトラック2台でこれを引っ張っていたようです。
-
Hauler1/72
HLP72008 Culemeyer 80ton
HLP72009 Culemeyer 4-axis
|
72008 80トン車台のキットはレジン・パーツ56点,
エッチング・パーツ1枚18点で,
72009 4軸車台のキットはレジン・パーツ39点,
エッチング・パーツ1枚18点で構成されている。
組立にあたっては,これ以外に直径1mmと0.5mmの金属線かプラ棒を用意するよう指示がある
(キットには含まれていない)。
あまり複雑な車両ではないので,
もともと表面に細かいディテールがたくさんあるわけではないし,
タイヤのトレッド・パターンも単なる溝でしかないので,
パーツを見てもあっさりして印象しか受けないが,
別に重大な省略や単純化がされているわけではない。
入手したキットの成型状態は良好で,
極薄いフィルム上のバリと若干の気泡はあったが,
いずれもたいしたことはなかった。
変形や成型不良もなかった。
モールドもカチッとして好感が持てる。
このトレーラは車輪のステアリング機構に特徴があり,
全輪がステアリングするようにリンクが張られている。
キットではこの部分をエッチング・パーツを使ってうまく表現している。
スケールの関係から完全に再現されているわけではないが,
これで十分楽しめる。
同じくミニスケールの
スケール・モデル・アクセサリの製品
と比べると全体にHaulerの物が(より新しいということもあって)
出来は良いように思う。
| |
■製作記■
フレームを組んで車輪をつければほぼお終い、という単純な車両ですが、
フレームが歪まないようにすることと、車輪を全部きちんと接地させるように注意する必要があります。
車輪の接着部が小さくて心もとないので,
左上の写真のように真鍮線を軸にして埋め込みました
(実車にはこのような軸はありません)。
左上写真のようにまず全部の車輪とサスペンションをユニットにして組んでしまい,
その後でフレームに組み込んで全輪が接地するように調整します。
組立説明書に示されている手順とは違いますが,
この方が強度を得ると同時に組み立ても楽になって一石二鳥です。
下の写真は,組みあがってサーフェーサーを吹いた状態です。
塗装はこれからです。
|
|
|
HLP72008 Culemeyer 80ton
|
|
|
|
|
HLP72009 Culemeyer 4-axis
|
組みあがってみると結構精密感があります。
ただ何か物を載せてしまうと肝心のステアリング機構が隠れてしまうのが残念です。
-
Wespe Model 1/87
87020 Heavy Trailer 80 ton
87025 Kuhlemeyer Tieflader
87019 Kaelble ZV6
|
各スケールでユニークな製品を発表しているヴェスペ・モデルからも,
クレマイヤー・トレーラとケールブル・トラクターのキットが1/87(HOスケール)で販売されている。
6軸車台の87020の部品点数は約70,
4軸車台の87025の方は約60となっている。
どちらのキットも,
1/72のHaulerの同一車種のキットよりも大幅に多いのだが,
これはヴェスペ・モデルのキットではホイールとタイヤを別パーツにしているためのようだ。
車輪の多い車両だけに,このスケールならもう少し一体成形を考えてくれてもよかったように思う。
入手したものには気泡,バリなどはそれなりにあった。
またタイヤはほとんど全部歪んでおり,ホイールとの合いが悪いのは残念。
|
■製作記■
87025 Kuhlemeyer Tieflader
|
16輪台車。
クレマイヤー・トレイラー独特のステアリング機構は省略されているものの,
全体としての雰囲気は良いです。
ホイールとタイヤが歪んでいて組みにくいのが残念です。
左の写真では前後の台車を完全に分離した状態ですが,
クレマイヤー・トレイラーを運用する際には,運搬物の長さに合わせて,
前後の台車を連結する間隔を調整します。
このページ先頭の写真のように,間を大きく開ける場合もありますし,
カールの砲身などを運ぶ場合には間を開けずに前後を直結します。
|
87020 Heavy Trailer 80 ton
|
前後を連結した状態の24輪運搬台車。
上述の16輪台車のキットに比べて全体に出来がラフで,
ディテールも少ないような気がします。
4個ある丸いハンドルは,
キットのパーツの成型状態が悪かったのでプラ材で自作しました。
本来クレマイヤー・トレイラーは鉄道車両を運搬するために開発されたので,
貨車や機関車はトレイラーの上に直接搭載できます。
カールのような車両やその他の重量物の運搬を行う場合には,
治具や架台が必要です。
キットには架台のパーツが1種類含まれていますが(左写真中段),
カールの運搬の際にはさらにこの上に板(左写真上段)が載せられていたので,
Haulerのキットなどを参考に自作してみました。
なおこうした板(床?)は,
このWespeのキットのような架台の上に設置されていた場合と,
Haulerのキットのようにトレイラーの上に直接載せられていた場合の両方が当時の写真で確認できます。
|
|
|
■メーカー・サイト■
Miniatur Models
Elite Militaermodellbau
Scale Model Accessories
Hauler
Home
|
Karl-Geraetに関するページ
Copyright 2003, 2004, 2005, 2006, 2008 (c) Geraet040, All Rights Reserved.
|
Created: May 29, 2003
Last Update:
|