■アーティテック1/87(HO)キット■


80111 Karl Moerser Railgun Mortar

80112 Munitionspanzer

アーティテックはオランダのメーカーで, HO, N, Zゲージの鉄道模型のアクセサリーのレジン・キットを製造している。 建物,船舶,フィギィア,車両などラインナップは多岐に渡るが, 第2次大戦の軍事車両,走行列車,トーチカなども多数あって興味深い。 カール関係としては以下の4点があるようだ。

  • 80109 Moeser Karl Geraet 040
  • 80110 Moeser Karl Geraet 041
  • 80111 Karl Moerser Railgun Mortar
  • 80112 Munitions Panzer

このうち入手できたのは写真の80111と80112の2点。 いずれもレジン・パーツとエッチングから構成されている。 80112はIV号弾薬運搬車単体のキット, 80111はカール本体(54cm砲のGeraet 041)と輸送用貨車のセットとなっている。 カール本体とIV号弾薬運搬車はともに トライデントのキット (87031, 87032)と全く同じであり, アーティテックによって独自開発されたものではなく, トライデントと同様にMilitary DepotからOEM供給を受けているのではないかと思われる。 輸送用貨車部分の方の開発元は定かではないが, カール本体と全体の雰囲気やレジンの質が同じであり, これもMilitary Depotの手によるものかもしれない。 しかし細部のディテールはカール本体よりは数段良い出来なので, 別の設計者の手によるものである可能性もある。 あるいは, 全体にCMKの輸送貨車セット(RA005) と部品構成や形状の表現に似た部分があることから, CMKとなんらかの関連があるのだろうか。

80109, 80110については未入手であるが, 完成見本写真などからみてやはりMilitary DepotからのOEMで, トライデントのキット 87030, 87031と同等品と見て間違いないと思われる。

カール本体とIV号弾薬運搬車についての評価は トライデントの項 に譲り,ここでは80111の中の輸送貨車部分についてのみ取り上げる。

組立指示書はカール本体と貨車部分では別々になっており (カール本体部分はトライデントのキットと同等の内容), 輸送貨車の指示書ではカール本体を別途用意するように指示があり, もともと輸送貨車は単独のキットとして企画されたのではないかと推測される。

部品点数は全部で約70点(すなわち貨車1両分で約35点)。 全体のプロポーションは良好で, 大型の工具箱(?) が前後の貨車で大きさが異なる点など前後で形状が非対称な部分や, クレーン基部の形状も正確に表現されている。 各部のディテールもよく考証されているようで, ハセガワの1/72キット(No.32) よりも出来は良いように思う。 エッジもシャープ,成型状態も良好で,かなり印象は良い。 車輪は金属製でHOスケール鉄道模型の部品を流用していると思われる。 クレーン部分に多数あるリベットは完全に省略されているが, このスケールでは仕方ないかもしれない。 エッチング・パーツ,デカールなどはない。 またレールなどもキットには含まれていない。

鉄道模型を指向しているメーカーだけあって, 貨車は実際にHOスケールのレールに載せられるように考慮されている。 このため貨車の連結器の部分はHOスケールの他の列車と連結できるようになっているため, 実車とは形状は異なっている。 蛇足であるが,カールの貨車輸送状態の ハセガワのキット(No.32) の組立説明書にはHOゲージの上を走行させるための改造方法が述べられている。 ハセガワのキットはHOゲージとはスケール違いなのであり, こちらのアーティテックの方が正確である。 がしかし…

このキットの最大の難点は, 貨車輸送状態のセットにも拘わらずカール本体はサスペンションを下げた自走状態になっていることである。 したがって, せっかくHOゲージに載せられるとは言っても機関車で引いて走らせることは形態上はおかしい。 (もちろん「気にしない」と割り切るならよいが, だいたいサスペンションを降ろした状態ではキャタピラがレールに触ってしまうので, ちゃんと走れるかどうか不安である。) ちなみに組立指示書のイラストではカールはサスペンションを上げた状態で描かれている。

キットの状態そのままで楽しむなら, カールを貨車に載せたり降ろしたりする情景にしなければならない。 思い切ってカール本体のサスペンションを上げた状態に改造しようにも, 転輪とキャタピラを一体成型してあるため容易ではない。 結局足回りを完全に作り直すしかなく, 相当な覚悟が必要だろう。

なお2003年9月現在 アーティテックのサイト のオンライン・カタログにはこれらのキットは記載されていないため, 既に絶版になったか在庫切れと思われる。 入手するにはまだ店頭在庫があるショップを探すしかないようである。 当方は Reynauld's Euro-Imports より入手した。

■製作記■

カールはトライデントのキット と同じなので,輸送貨車の製作写真を載せます。

全体にディテール,モールドは良好で, 変形もほとんどなく,パーツの「合い」も良くて, レジン・キットとしては相当にレベルが高いキットだと思いました。 (カール本体はどうかと言えば少し話が違うので, トライデントのキット製作記 を参照してください。)

組み立てる上で注意が必要だったのは,カールを吊り下げるアーム部分でした。 大きなパーツ4個から構成されていますが, レジン・キットによくある話で, 位置決めのための配慮が特にないので, 歪まないように慎重に仮組み,擦り合わせをする必要がありました。 私はプラ棒で小さなダボを作り,位置決めと強度の確保をしました。 (この他にもアームの支柱部分などには真鍮線を仕込んで強度確保をしてあります。)

部品の精度が良いので, パカパカ組んでも車輪はきちんと接地し気持ちよくクルクル回転します。 しかしHOの機関車に引かせて走らせて遊ぶのでなければ固定してしまった方がよいように思います。 細部工作をするために作業机の上に置いていると, 何かの拍子にスルスルっと走り始めてしまい, あっと思ったときには机から落下なんて悲劇が…

その他には組み立て上の難点はありませんでしたが, 細部について3箇所ほど気になった部分がありました。

パイプ2本を束ねたような写真の部品は,カールを降ろした後, 貨車2両を連結する際に使われるもので,貨車2両に対して一組あればよいものです。 キットでは前後の貨車それぞれに装備するようになっていますが, 片方は不要です (ハセガワのキット(No.32)でも同様の誤りがあります)。

実車では貨車側面にいくつか箱状の部品が付いているようです。 適当に自作して追加します。 また連結器が省略されてしまっているので, これまた自作しました。 これらの部品の寸法は適当に現物合わせででっち上げてあります。

貨車の両側面には折りたたみ式の作業デッキのような物があります。 このデッキには裏面にリブがあったり,一部切り欠きがあったりするのですが, キットの部品は単なる長方形の板になっているのでそれらしく追加工作と整形をしました。

塗装前の状態。 明るいベージュ色の部分がキットのレジン部品です。 白いプラ材,金色の真鍮線などの追加工作部分がわかると思います。 上の説明写真以外にも小さな補器類やアーム,レバー類をいくつか追加してありますが, 基本的にはあまり手を加えなくても十分なディテールを持ったキットだと思います。

なおカールを吊り下げるアームの上下につくX字型のビームと貨車の端の手すりはちゃんとパーツがあり, 形状も問題なかったのですが, パーツの切り出しと湯口の処理が面倒そうだったのでプラ材で自作してしまいました。 またアーム表面のリブを製作途中に何箇所か破損してしまったため, プラ板で補修してあります。 入手したキットのアーム・パーツには何の成型不良などもなく, あくまで私の不注意によるものです。

以下続く…


■制作上のヒント■

当サイトの掲示板に, ARTITECのキットを完成させたプロイセンさんから, 制作上のヒントなどが寄せられましたので, ご本人の了解を得てここに転載いたします。(7 April 2007)

ARTITEC:Karlの注意点  投稿者:プロイセン  投稿日: 4月 4日(水)22時08分50秒

 Geraet040さんの掲示板に「恐れながら」書き込みます。 これはHOゲージャーで鉄道輸送状態のKarlを製作される方への拙いアドバイスです。

1.すでにGeraetさんのご指摘どおり、Karlのサスペンションが自走状態です。 一体成型の車輪とキャタをどう改造するか、 ごまかすかフルスクラッチするかは気合と腕次第?
2.ついでに起動輪と転輪の間を5mm程つめると実車に近づきます。
3.贅沢ですがハサガワの1/72を部品取り用に確保すると便利です。 私は本体とクレーンの鉄骨を接続する部分(かなり重力がかかります)と、 折りたたみ状態の歩行用側板と臼砲仰角調整ハンドルを流用。 (クレーン鉄骨内側の長い梯子はHOゲージ用を流用)
4.キットに付属のHOゲージ連結器接続部品は大きすぎて使えません!! 真鍮線等を加工して自作しましょう。
5.貨車は、支柱が高すぎるのでバネ部を一部切断して調整、 Geraetさん指摘の車軸上の長方形の2つの箱状の物は、 トラペのキットを見本に薄いプラ板で自作、 片方は運行表を差し込むための正方形の金網(欧州型HOの貨車に付属)を貼り付け、 もう一方にはDeutsche Reichsbahn及び車輌製造番号を自作デカールかインレタで表示。

こんな感じで結構それらしい鉄道輸送中Karlが再現できます。

プロイセンさんのサイトである「 Preussen:Panzerの部屋」では, HOスケールの軍用列車や輸送貨車を多数紹介なさっています。 ぜひご覧ください。


■メーカー・サイト■

Artitec


■作品例■

  1. Preussen:Panzerの部屋
    上記のプロイセンさんのサイトです。 第2次大戦時のドイツ軍についてのサイトは数多くありますが, こちらは軍楽隊や行進曲,鉄道関係をも網羅したユニークなサイトです。

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Created: April 13, 2003.
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